こんにちはー。
縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。
先日アクロバットに関する注意喚起の記事を書きました。
ここでは「1.危険性」「2.パフォーマンス性の低下」について触れました。硬い床でやる無茶なアクロバットは命を危険にさらし、また双方中途半端な演技を観客は見抜きます。
さらにもう一つ。タイムリーにこんな動画を見つけました。
この動画を見て、あなたはどのような印象を持ちますか?
自分は近い将来、縄跳び界は男子新体操と競合する日が来ると思うのです。
■ 男子新体操のロープ種目
男子新体操には個人種目に「ロープ」があります。
「個人競技」・・・スティック、リング、ロープ、クラブの4手具を用いり演技を行う。
手具の特性を生かした巧みな手具操作や転回形の組み合わせた構成。
演技時間は1分15秒~1分30秒
出典:男子新体操
ちなみにロープの演技はこんな感じです。
もはや縄跳び界のアクロバットと比べ物になりません。今後アクロバットへ傾斜していけば、ここと競合することになるんです。
■ 身体捌き、音感覚、ラインの美しさ...
男子新体操の強みはハイレベルなアクロバットだけじゃありません。
この他にも「身体裁き」や「ラインの美しさ」さらには「音への感覚」がケタ違い。日本選手は比較的音に敏感ですが、世界的に見て「音ハメ」で演技を創れる選手は数えるほど。
加えて体操ベースの美しいラインとしなやかな身体捌き。これらは高いエナジーを発揮し観客の注目を集めます。ここに集団演技のシンクロが加わったら、もはや「多少アクロバットが出来る程度の縄跳び」に勝ち目はありません。
■ 縄跳びxアクロバットは自縄自縛の伝統回帰
縄跳びはサーカスで古くから行われている伝統演目です。回っているロープの中でアクロバットをする。シルクドソレイユでいえばドラリオンのSkipping Ropesがこのスタイルです。
こう考えると、今のアクロバット偏重の流れは大きな括りで「伝統回帰」してると言えます。
では伝統的な縄跳びxアクロバットの演目を演じていたのは誰か。それはアクロバットがベースの人です。ここに縄跳びの専門家は必要ありません。
つまり縄跳びのxアクロバットへ歩みを進めていけば、ある程度のところで縄跳びの専門家(=自分達自身)は締め出されてしまうのです。
この点、男子新体操は揺るぎません。彼らのベースはあくまで体操です。アクロバットが求められる伝統的な縄跳び演目において、むしろ彼らは一層求められる人材になるのです。
■ もっと縄跳びの強みを考える必要がある
では縄跳びが「男子新体操」に立ち向かうには、どうすればいいでしょうか。
たとえば縄跳びの強みといえば「いつでも」「どこでも」「だれとでも」です。硬い床でも屋外でもできます。一方の男子新体操は「跳ねる床」が必要です。体操競技の床で使われてるやつですね。
ただ跳ねる床がなくても、身体捌き・ラインの美しさ・音への感覚は変わりません。しかも近年の技術の進歩により、持ち運びできる「跳ねる床」が誕生しました。すでにシルクドソレイユのMichael Jacksonのショーで使っています。こうなると「場所を選ばない」というだけでは、あまり差別化ができそうにありません。
やはり、そこは「ロープ技術」だと思うのです。縄跳びはロープが上手でナンボ、ではないでしょうか。男子新体操のようなアクロバットは簡単に真似できません。でも、我々のような縄裁きだって簡単には真似できません。
また縄跳び独特の盛り上がる「動きのフレーズ」があります。たとえば「トラベラー」なんかは圧倒的に観客ウケが良い。これらは縄跳びでなければ生み出せない盛り上がりなのです。
■ おわりに
今回は「男子新体操」「縄跳び」を二項対立的に取り上げました。しかし双方がお互いの強みを持ち寄れば、ここには新たな化学反応が生まれることでしょう。既に縄跳び会で鉄板ネタの「リリース」や「ロン宙跳び」も、元をたどると男子新体操の動きを参考にしています。
ちなみに、今回はあえてダブルダッチを問題提起から外しました。なぜならJapanese Styleのダブルダッチは「ストリートダンスxダブルダッチ」」という別の流れに進んでいるからです。こちらが男子新体操と競合することは無いでしょう。
問題なのはJapanese Style以外のダブルダッチ・縄跳びです。単縄です。
縄跳びの競技内だけで競うなら良いです。しかし広くパフォーマンスの世界に目を向けるなら、今後どちらへ舵を切るかが重要になると思います。
(2015年10月10日「なわとび1本で何でもできるのだ」より転載)