制限が多過ぎる不可解な"ガス全面自由化"(その2) 〜 「マンション一括供給」で電気は安くできるが、ガスはできない・・・

全面自由化と言いつつも、不可解で不自由なルールが多数残存する可能性が極めて高い。
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石川和男

今月1日に"電力小売全面自由化"が始まった。では実際、どのくらいの人々が、電力の購入先を今の大手電力会社から"スイッチング(切り替え)"をするつもりだろうか?

経済産業省の認可法人である電力広域的運営推進機関が3月25日24時時点までのスイッチングの申込み状況を集計したところ、全国計で約37.8万件であった〔資料1〕。

<資料1:スイッチング支援システムの利用状況(3月25日24時時点)>

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全国の世帯数は5641万(2015年1月1日現在;総務省調査)ので、今のところ、切替え件数は全体の0.7%弱となる計算。

来年4月には"ガス小売全面自由化"が予定される。だが、全面自由化と言いつつも、不可解で不自由なルールが多数残存する可能性が極めて高い。その最たる例の一つを先の拙稿『制限が多過ぎる不可解な"ガス全面自由化"〜電力・石油会社の直接ガス小売は許されない』で提起したが、本稿はその第2弾。

電力については、マンションに住んでいる各世帯は、それぞれ電力会社と契約(低圧契約)を結んでいる。こうしたマンション需要に関して電気料金が安くなる場合がある。いわゆる「マンション一括受電サービス」と言われる形態で、今月1日から始まった電力小売全面自由化とは関係なく、かなり以前からこの形態でのマンション世帯向け電力供給に参入している新電力は少なくない。

これは、その新電力がマンション1棟分の電気を一括購入することで、オフィスビルやホテルと同じ契約(高圧契約)に変更し、電気料金単価を安くすることで、その差額により電気料金を削減するというビジネスモデル。

一方、ガスについては、マンションに住んでいる各世帯は、それぞれガス会社と契約(小口契約)を結んでいる。これを、新規ガス小売会社がマンション1棟分のガスを一括購入する契約(大口契約)にすることで、ガス料金単価を安くすることは十分に可能である。

しかし、ガス供給の約款は規制されており、マンション各1戸を1需要場所とする旨、規定されている。即ち、マンション世帯も各戸に個別供給でなければならないという規制が残存している。

<資料2:「マンション一括供給」のイメージ>

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この規制に関しては、来年4月のガス小売全面自由化に際しても、自由化される予定は今のところない。これも実に不可解な話だ。

電力小売全面自由化では、役所は、電力業界に対して異常に厳しく臨んできた。だが、ガス小売全面自由化では、役所は、ガス業界に対して妙に甘い態度で臨んでいる。そのあたりの事情がもし明かされたら、私にはよく理解できるが、一般には全く通用しないだろう。不公平極まりない・・・。