この夏は「スローガンTシャツ」が街に溢れるかもしれない。胸のあたりに"男女平等"を訴えるメッセージがプリントされたTシャツは、2017年のトレンドの1つとして注目されている。
最初に火をつけたのは高級ブランド「クリスチャン・ディオール」だ。2017年春夏のコレクションで「WE SHOULD ALL BE FEMINISTS」という文字が胸にプリントされたTシャツがランウェイに登場した。
「男も女もみんなフェミニストであるべきだ」という"政治的な言葉"を敢えて用いたディオールの姿勢に、ファッション業界内外で驚きと共感の声があがった。
女優のナタリー・ポートマンはトランプ大統領の就任翌日、女性の人権を訴える世界規模のデモに、このTシャツを着て参加。「すべての女性に男性と均等な機会と地位が与えられるのが当たり前になる日まで、闘い続けよう」と訴えた。
このTシャツを手がけたのはディオール史上初の女性ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリ。就任して最初のコレクションでこのTシャツを発表した。
VOGUE JAPANのインタビューに、マリアは「ファッションには多くの人々への発信力と、軽やかな方法で深遠なテーマに触れる力があります」と語っている。
日本のファストファッション大手GU(ジー・ユー)も、2017-18年の秋冬のアイテムとしてスローガンTシャツを発売するという。
胸にプリントされた文字は「YUP, I'M A FEMINIST(そう、私はフェミニスト)」。
これはもしかして、ディオールへのオマージュなのではないだろうか...ということで、ハフポスト日本版はGUのマーケティング部PRチーム 橋本佳苗さんに話を聞いた。
--ずばり、これはディオールのスローガンTシャツへのオマージュということなのでしょうか?
正直に申し上げると、ディオールさんへの「アンサーソング」的な意味合いをはっきりと持っているわけではないんです。
ただ、「ジェンダーレスや、平等に生きようといったメッセージを"ファッション"によって表現していく」という世界的なトレンドをGUでもお客さまに届けたいという思いで作りました。
--スローガンは全部で何種類ですか?
平等をうたう、ということで、スローガンは「YUP, I'M A FEMINIST(そう、私はフェミニスト)」「EQUAL TO YOU(君と私は平等)」の2つになりました。ディオールに端を発して、よりお値ごろな商品を提供する我々のところにまでトレンドが浸透してきたということです。
--このTシャツをどんな気持ちで着てほしいですか?
スローガンTシャツが表現する世界観の通り、言葉を身にまとって思いっきり、男性であること・女性であることを楽しんでほしいと思います。
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GUのTシャツの販売価格は790円(税別)の予定だという。
「フェミニスト」が大流行するファッション業界。そもそもディオールのTシャツのきっかけとなったのは、ナイジェリア出身の女性作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの「We should all be feminists」と題したスピーチだ。スピーチは『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』(河出書房新社)として本にもなった。
チママンダは男のためでなく「自分のために」ハイヒールを履く"フェミニスト"。「性別の差など窮屈な価値観にとらわれるのをやめて、自由になろう」と呼びかけた。「男の子にも女の子にも料理を教えたらどうだろう」と身近なテーマで、笑いも交えて語りかけたのも分かりやすく、世界中でスピーチの動画が拡散し、本も売れた。
"男女平等"や"自分らしい生き方"を訴えるメッセージ。政治家や偉い人に言われてもピンとこないが、自分で身につければ違うかもしれない。憧れのセレブが着ている姿を見て興味を持ったかと思えば、その"憧れ"が790円で手に入ってしまうファッション業界の"経済原理"に、今回ばかりは踊らされてもいいと思う人もいるだろう。
ディオールのディレクターのマリアが言うように、ファッションには「多くの人々への発信力と、軽やかな方法で深遠なテーマに触れる力」がきっとあるのだ。
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