過去数カ月、シリアやアフガンから大量の難民・移民がギリシャに上陸する光景は日常的なものとなった。ある日は200人、ある日は300人、またある日は2000人と、難民・移民がトルコからエーゲ海を越えてやって来る。
内戦のシリアから家族で越境しようとした時に溺死した3歳の幼い男の子アラン・クルディ君がトルコ沿岸の砂浜に遺体となって打ち上げられた写真は、ヨーロッパ全体を覚醒させた。しかしそれでも、この難民危機はいつしかニュースの見出しから次第に消えていった。
悲劇は終わらない。10月28日、大勢の難民・移民を乗せた船がレスボス島沿岸で転覆した。救助隊が272人を救出したが、29人が死亡し、その多くは子供だった。ギリシャ当局によると30日には、31人が溺死し、これも大半が子供だった。ロイターによると、ギリシャの沿岸警備隊は24時間で600人を救出したという。
エーゲ海を渡ってトルコからギリシャのレスボス島に向かっていた船が転覆し、救急医療隊員と医師が幼い少女の治療にあたる。2015年10月28日
悪天候の中、小型ボートでトルコからレスボス島に上陸した男性が、耐熱ブランケットに身をくるむ。レスボス島の住民によると、毎日のようにこうした光景が見られるという。2015年10月28日
レスボス島で大規模捜索と救助に当たっているギリシャ沿岸警備隊のキリアコス・パパドプーロス副隊長はハフポスト・ギリシャ版に「救助任務にあたっていた16年間で、これほどの船の転覆事故は見たことがありません」と語った。
「ただ目にするのは、海に浮かぶ人たちだけ。船はどこにもいません。多くの遺体がそこにあるだけでした」とパパドプーロス副隊長は語った。「海上から35人を救出しました。そのうちの7人は意識を失った子供でした。親は水中で子供たちを抱きしめていましたが、意識はもうろうとしていました。ボート上で私たちは蘇生措置を行い、彼らは意識を取り戻しました。港に近かったのは幸運でした」
パパドプーロス副隊長によると、状況はさらに悪化している。悪天候が続き、沿岸警備隊には矢継ぎ早に転覆事故が伝えられ、港近くには転覆した船やボートが漂っている。
転覆寸前の船から、難民たちが脱出を試みる。2015年10月30日
レスボス島で悪天候の中、脆弱なボートに乗っていたアフガン難民たちが上陸する。2015年10月28日
レスボス島のスカラ・シカマス村で働くアポストリス・パラスケボボウロスは28日、救助隊が水中から人々を引き上げているところを目撃した。そのうちの一人は小さな女の子で、身体は冷えきっており、ほとんど息もできない状態だった。
「こうした光景を毎日のように見ています。昨日だけじゃありません」とパラスケボボウロスさんは語った。「誰もがこの問題に気づく前の4月からずっと、こんな状況のなかで私たちは生活してきているんです」
「爆弾で足を切断した人たちもボートに乗ってやって来ています。最近手術を受けた子供もボートにいるんです」とパラスケボボウロスさんは語った。「天候が悪化してきている今は、問題はさらに大きくなっています。きっといずれ、この場所で難民たちの精神的な問題も起こるでしょう。毎日死と隣り合わせで生きていくのはつらいものです」
ギリシャのアレクス・チプラス首相は30日、ヨーロッパに大挙して押し寄せる難民たちの対処について、ヨーロッパ各国首脳を「無能だ」と非難した。
AP通信によると、チプラス首相は議会で「私たちの海で多くの命が失われ、繰り返される悲劇に尽きることのない哀悼の意を表明したい」と述べた。「エーゲ海の波は、亡くなった難民たち、亡くなった子供たちが打ち上げられるためにあるのではない。まさにヨーロッパの開化のためにあるのだ」
この記事はハフポスト・ギリシャ版に掲載された英訳を翻訳しました。
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