(2014/GRACE OF MONACO)
グレース・ケリー(1929~1982年:アメリカ・フィラデルフィア出身)は、ヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!』や『裏窓』などで有名だったハリウッドの人気女優だった。アカデミー主演女優賞も受賞。エルメスの「ケリーバッグ」は彼女にちなむ。52歳で交通事故によって死去。
映画ではその結婚後を描く。人気のピークでありながらハリウッドの大スターの座を捨て、モナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚した公妃グレース(ニコール・キッドマン)。モナコ公妃となって6年が経った1962年が映画の舞台、グレースはいまだにモナコのしきたりにいまだに馴染めない。フランス語にも苦労していた。女優を引退したが、ヒッチコック監督からの新作『マーニー』の主演への誘いに心が揺らぐ。
そんな時、モナコ公国は存亡の危機に立たされる。強面のフランス大統領シャルル・ド・ゴールから重税を強要され、応じないとモナコをフランス領に併合すると迫られた。モナコは武力衝突に発展する可能性もある危機に直面する(まさに地政学的リスク)。そこで、彼女は政治の一大舞台を踏んで、モナコを救う。
ニコール・キッドマンはグレース・ケリーに似た雰囲気を作り、美しい。地中海の風景もまた美しい。監督は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』などのオリヴィエ・ダアン。
モナコ公国は世界で2番目に小さいミニ都市国家で人口約3万人。国連加盟国の中では世界最小。主要な産業は観光。モンテカルロを持ち、特にカジノは一時、国家収入の大部分を占めていた。モナコは、経済協力開発機構(OECD)も国際通貨基金(IMF)も認定したタックス・ヘイヴン(Tax Haven/租税回避地/課税が著しく軽減、または免除される国や地域)の一つ。
この数年、金融市場では量的緩和も進み、投資マネーがあふれている。ちょっとしたことで、外国為替をはじめとした金融市場は大きく揺らぐ。特に、最近の動きの主因は「地政学的リスク(Geopolitical Risk)」である。これは、ある地域の政治的・軍事的な緊張の高まることによって、地理的な関係によって、その経済、または世界経済の先行きを不透明にするリスクのことである。
最近、尖閣諸島、竹島、ウクライナ、イスラム国、香港をはじめとして、地政学的リスクが高まっており、それによって一喜一憂する金融市場となっている。米国が国際的な覇権に興味があまりない民主党政権であり、さらに財政赤字のため予算を削減し軍事行動を削減している。国際的に リーダーシップをとる国がいない「G0(ゼロ)」の状態になり、抑えが利かなくなっている状況で、今まであった問題が一気に噴き出している。
この映画もまさに「地政学的リスク」であり、筆者はこのように機転によって、流血することなく、問題が解決することが望ましいと思っているが。
ちなみにイスラム国をはじめとした中東の問題を理解するには『アラビアのロレンス』(1962年)がお薦めである。サイクスピコ協定によって、英仏露が中東を分割したのである。そのときに民族とは関係なく、国境を決めたために、それが紛争の種になっている。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。第167回目のゼミは10月8日(水)に開催!
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