日本政策学校では2016年2月7日、細川甚孝氏による政策議論講義「ゼロから学ぶ行政評価」を開催いたしました。以下はそのサマリとなります。
『政策づくりための行政評価』
政策をつくる前提として、行政評価がなされるべきである。
行政評価とは、政策目標・施策・事業を通じて、政策そのものをよりよいものにすることである。政策評価の考え方には、インプット・アウトプット・アウトカムなどがあり、政策評価のポイントは経済性・有効性・効率性である。日本の地方自治体の行政評価は、1990年代後半より始まり、当初は、効率性の判定が多くを占めていた。今後は、経済性・有効性・効率性へのバランスがとれた評価システム、そして予算編成・施策立案に実践的に使える評価システムが必要である。
◇政策づくりの前提である行政評価
Ⅰ 行政評価についての情報
Ⅰ‐a 投入予算
Ⅰ‐b 投入人件費
Ⅰ‐c 活動量(重要)
Ⅰ‐d 活動成果=活動したことで、3~5年後にどんな成果が得られたか(重要)
Ⅱ 行政の仕組み
Ⅱ‐a 政策目標
Ⅱ‐b 施策
Ⅱ‐c 事業
◇行政評価の内容
Ⅰ 行政評価の考え方
Ⅰ‐a インプット=投入するコスト
Ⅰ‐b アウトプット=施策により生まれるサービス等
Ⅰ‐c アウトカム=社会にどんな影響を与えたか(議論の中心)
Ⅰ‐d ベンチマーク=他市との比較(どこと比較するかが重要、少し上のところと比較するのがよい)
Ⅰ‐e 市民の満足度(重要であるが、関係する者としない者では、満足の差が生じる)
Ⅰ‐f 市民の重要度
Ⅱ 行政評価のポイント
Ⅱ‐a 経済性
Ⅱ‐b 有効性=社会に貢献しているか(アメリカでは有効性のない政策は、中止している)
Ⅱ‐c 効率性
◇日本における行政評価
地方自治体の行政評価は、1990年代後半より三重県庁で始まり、国の行政評価は、2000年代より始まった。
地方自治体では、事務事業を中心とした効率性の判定に大きなウェイトが占めてきた。そのため、政策の有効性という政策の質の議論が軽んぜられていた傾向が見られる。
(グループで考える)
「なぜ自治体は、行政評価のデータをうまく使えないのか」
↓
・小さい自治体では、必要性を感じていない
・小さい自治体は、チェックする人材がいない
・効率的評価が必要(評価の項目は妥当か否か)
・従来のやり方は変えにくい、などの意見が出た
◇市民の行政評価への参加
効率性を中心に考えていく
・単位あたりのコストは上がったのか、下がったのか。
・その理由を考える
・それに対して、どのような対応策を考えられるか。
アウトカムの達成はできているのか
・そのプログラムは、目標の達成ができているか。
・その理由を考える
・アウトカムの指数は妥当であるのか
この施策を今後どうしたいのか(強める、現状維持、弱める、中止する)について、結論を出す。
絶えず、さらなる改革を考えていく必要がある。
(ワークショップ)
西東京市の平成25年度の事務事業データより
a コミュニティ放送局への放送業務委託事業について
b 商工会の事業に対する補助金交付の事業について
c 高齢者に対する電話の貸与について
・各種指標は成果を得るうえで妥当か(重要)
・単位当たりのコストの変動について、理由があるか
・全体として推進すべきか、徹底すべきか、改良すべきか
行政評価するときは、代替策を考えることが大切である。
◇まとめ
・行政評価とは、行政活動のカルテである
・おさえておくべきこと
1 インプット、アウトプット、アウトカム(行政評価の考え方)
2 経済性、有効性、効率性(行政評価のポイント)
3 ミッション、プログラム、プロジェクト(行政のしくみ)
・単なる思いは、政策にならない
・上のポイントを確認して、分野ごとの特質をつかんで、具体的な政策づくりに取り組んでほしい。
【細川甚孝氏のプロフィール】
細川甚孝(ほそかわ しげのり)
政策支援合同会社 代表
1971年 秋田県生まれ
都留文科大学文学部社会学科卒業
上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程満期退学
早稲田大学大隈記念大学院公共経営研究科修了
農林水産省系列のシンクタンクをはじめ、様々なコンサルティング、シンクタンクでリサーチャー及びコンサルタントとして、地域活性化、行政評価、総合計画などの策定支援業務に従事。
2012年 独立
現在 早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員(兼任)、行政経営フォーラム会員