以前、官民交流人事が偽装天下りに使われていることについて触れた。
平成11年にできた官民交流人事に関する法律の第一条には、こう書いてある。
行政運営における重要な役割を担うことが期待される職員について・・・・民間企業の業務を経験させることを通じて、効率的かつ機動的な業務遂行の手法を体得させ、民間企業の実情に関する理解を深めさせることにより、行政の課題に柔軟かつ的確に対応するために必要な知識及び能力を有する人材の育成を図る。
にもかかわらず、この官民交流をおかしなことに使っている役所がある。
例えば経産省。
48歳の課長補佐を約5年間、広島銀行に派遣し、戻ってきて課長職を1年やったところで54歳で退職。どこが人材育成なのか。
大臣官房付の51歳を日本ゼオンに約2年間派遣し、戻って来ると同時に研究休職で京都大学へ。1年半後に54歳でそこから戻ると同時に退職し、1か月後に日本ゼオンへ就職。
51歳の職員を日本電産に2年間派遣し、戻ってきて研修所長を5か月やって退職、53歳。3か月後に日本電産に就職。
50歳の職員をリコーに2年間派遣。52歳で戻り、2年後に54歳で退職、民間企業へ。
52歳でマツダに派遣され、3年半後に経産省に戻り、同日に独立行政法人に出向。55歳。
50歳で明電舎に約2年派遣、戻ってきて2日後に独立行政法人に出向、52歳。
いずれのケースも、法律の目的で定めている人材育成にあたっていない。
そもそもこの制度は、若手官僚に民間の経験をさせるもので、退職間近な官僚の偽装天下り先にするためではない。
まだある。
国土交通省。
独立行政法人への出向から大臣官房に戻った翌日から首都圏新都市鉄道に3年間派遣、54歳で戻ってきて、2年後に退職。
独立行政法人への出向から戻ってきた翌日にJR西日本テクシアに3年間派遣、戻ってきた翌日、独立行政法人に出向、8か月後に57歳で退職。
45歳でスズキに派遣、3年後に戻ってきて半年後に49歳で退職し、スズキに就職。
53歳で三井住友海上火災に顧問として派遣、約2年後に戻り、1年後に退職。
53歳で神戸港埠頭に派遣、2年後に戻り同日に独立行政法人に出向。55歳。
52歳で三井造船に派遣、3年後に戻り、同日に独立行政法人に出向。
独立行政法人への出向から52歳で戻り、同日付で日本通運に2年間派遣され、戻った次の日に独立行政法人に出向。
53歳で成田高速鉄道アクセスに2年近く派遣、戻ってきて翌日出向。
51歳で日鉄住金物流に2年弱派遣、戻って翌日、独立行政法人に出向。
まだまだある。
総務省などは、40歳後半で民間に派遣した者3人全員が戻ってきてすぐに辞めて選挙に出馬。
そして最大の問題は、人事院がこの明らかに法律違反の民間への派遣を全て把握し、見て見ぬふりをしていたこと。
自民党の行革本部より内閣人事局と人事院に対して、官民交流に派遣できる年齢に明確な上限を設けることなど、厳密なルールの策定と、これまでこうしたイカサマ官民交流に加担した人事担当者の責任の明確化を求めた。
(2015年04月15日「河野太郎公式ブログ 偽装官民交流」より転載)