Googleは6月17〜18日、「働き方のこれから」をテーマに「Atmosphere Tokyo 2015」を開催した。18日に行われた「柔軟で効率の良い"未来の働き方"のヒント」セッションでは、主催する「未来への働き方コンソーシアム」が、パートナー企業と働き方改革を進めた取り組みについて発表。業務の見える化によってワークライフバランスの意識が高まった事例や、コスト意識を高めた結果、長時間労働の一因であった会議の効率化が進んだケースなどを紹介した。以下にレポートする。
■日本の女性をとりまく現状
まず、経済産業省の経済産業政策局経済社会政策室長の福地真美氏が、日本における女性がおかれている現状を説明。年代別の就業率をもとに、子育て期の30代女性が職場を離れる「M字カーブ」を描いている国は、アジアの日本と韓国のみで、ほとんどの欧米諸国は30代でも離職しない「台形」のグラフになっていると説明。日本には、働きたくても働けない人が303万人いるという統計を紹介し、「この人たちが働ける社会を作ることが大きな課題」だと語った。
経済産業省の福地真美氏
働いている女性の現状についても紹介。日本の「女性の管理職比率」は役員は2%にとどまっており、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」も142カ国中104位(2014年)となるなど、先進国の中では最低レベルであることをふまえ、「日本の女性活躍は、進んでいるとはいえないが、この政策を進めていくことで、経済にも良いインパクトを与える。また個人の幸せにもつながるポテンシャルがある」など話した。
■女性が職場を去る要因は、長時間労働と柔軟性のない働き方
Googleのサーチ&ブランド・マーケティング統括部長、「Women Will」プロジェクトリードの平山景子氏が、パートナー企業と働き方改革を進めた取り組みを発表した。Googleではアジア・パシフィック地域で、テクノロジーを活用した柔軟な働きかたによって女性の社会進出を支援するプロジェクト「Women Will」を進めている。
平山氏は、多くの女性が職場を去る大きな要因は、長時間労働と柔軟性のないハードな働き方だとして、Googleでは「ハードな働き方」から「スマートな働き方」に変えることを提案。いつでもどこでも働ける、共同作業ができるような柔軟な働き方が実現できれば、「仕事を続けられそう」といった声がアンケートで寄せられていることを紹介した。
Googleの平山景子氏
■会議時間が半減、在宅勤務にトライ……3社の「働き方改革」
続いて、パートナー企業である広島県庁、KDDI、日産自動車などと行った「働き方改革」を紹介した。
広島県庁は、日本で初めて育休を取得した県知事・湯崎英彦氏のリーダーシップのもと、働き方の見直しに取り組んだ。定期的な異動などにより長時間労働が恒常化していたことや、誰が何で忙しいのかがわからないといった課題を抱えていたため、全員のスケジュールを共有化。入力ルールも設定し、プライベートも入力したことでライフスタイルを尊重する意識も芽生えたという。
■KDDIは、定例会議の時間が半分に
3年連続で「なでしこ銘柄」に選ばれているKDDIは、慣習化した長時間会議を中心とした長時間労働が課題となっていた。これが女性の管理職を増やす上で大きな課題になっていると考え、会議の運用ルールの設定、時間に対するコスト意識を持つ、社内会議システムの活用といった取り組みを実施。1人あたりの10分単価を計算したことで会議コストも明らかになり、3時間かけていた週次定例会議の時間が半減したという。
■日産自動車は、全員が在宅勤務にトライ
女性活躍推進を経営戦略に掲げる日産自動車は、男女問わず社員の在宅勤務を推奨しているが定着していない課題があった。中間管理職が生産性の低下やマネジメントの複雑化を懸念していたため、まずは全員が一度、在宅勤務トライアルを実施。結果、在宅勤務への意識が変わった社員が66%となり、「(育児や介護など)特別な事情がない人でも利用できる」「ワークライフバンスの向上に有効」といった声があったという。
3社の事例を踏まえて、平山氏は以下の条件によって多様な働き方が可能になるという。
1)柔軟な働き方を可能にする制度
2)多様な働き方を受け入れる文化
3)時間と場所にとらわれない働き方を可能にするテクノロジー
最後に、「働き方改革」は、女性や子育て世代のものではなく全ての働く人のためと位置付けることが重要だとして、長時間働く人が成果を出しているという思い込みを止め、トップダウンとボトムアップの双方向から進めることが大事だと語った。
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー