筋肉の力を骨に伝えて動きの要となる腱(けん)が発達するためには適度な運動や物理的刺激が必要であることを、東京医科歯科大学と東京慈恵会医科大学の共同研究グループが遺伝子レベルで解明した。アキレス腱などの腱は、血流が少ないために再生力が非常に弱く、断裂すると治療が難しい。成果はこのほど米科学誌に掲載され、腱やじん帯の修復、再生医療への応用が期待される。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の浅原弘嗣(あさはら ひろし)教授は既に、筋肉など体の部位を作る際の司令塔の役割をする「Mohawk」という遺伝子が、腱の発達に重要な働きをすることを突き止め、論文を発表している。同教授らは、マウスの実験で適度な運動がMohawk遺伝子の発現を促し、コラーゲン線維も増えることを確かめた。この遺伝子を欠いたマウスは運動させてもコラーゲン線維は増加しなかった。
研究グループはまた、腱の細胞で運動や物理的な刺激を感知してMohawk遺伝子をコントロールする別の遺伝子も発見し、腱が運動や物理的な刺激により発達、成熟する一連のメカニズムを明らかにした。
腱は筋肉と骨を、靭帯(じんたい)は骨と骨を、それぞれ結合する組織。大部分がコラーゲンにより構成される。腱やじん帯が断裂すると手術が必要なケースが多く、術後も長期間行動制限される。今回の研究成果は、適度な運動や物理的刺激が腱断裂後の修復治療や断裂予防に重要であることを遺伝子レベルで立証したことになる。
関連リンク
・東京医科歯科大学プレスリリース「運動に応答する腱の遺伝子メカニズムの解明」
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(2016年2月26日 「サイエンスポータル」より転載)