グルーブ感あふれる演奏で、国内外で高い評価を受けている和太鼓バンド「GOCOO」が5月末、フィリピン・セブ島の盆踊り大会に出演する。世界的なジャズの祭典の一つ、「モントルージャズフェスティバル」(スイス)でも演奏したことがあるバンドが、「貧困層の子どもたちに、日本が世界に誇る和太鼓の演奏を聞かせたい」という女性の思いに応えた。ライブ演奏のほか、地元の子ども向けにワークショップも計画しているが、和太鼓などの輸送には多額の費用がかかるため、クラウドファンディングのA-portで支援を募っている。
GOCOOは1997年に結成された和太鼓バンド。リーダーの淺野香さんを中心に、常識や伝統にこだわることなく、独自のサウンドをつくりあげてきた。これまでの20年の間に、延べ38カ国で225回のライブを開催。映画「マトリックス」のサウンド・トラック(2003年)に日本から唯一参加したほか、昨年は「サカナクション」や「ゆず」のライブにも出演するなど、国内外で精力的に活動を続けている。今年の夏もヨーロッパ5カ国を巡るツアーの開催が決まっている。
淺野さんが太鼓を始めたのは約25年前。知り合いに誘われ、数人で体験しに行ったのがきっかけだった。当時は鍼灸師で、和太鼓には全く興味がなかったが、「『打ってみろ』と言われて打った瞬間、太鼓を打つ感覚を『知っている』と感じた。すぐに『太鼓を打って生きて行こう』と決めた」。
「伝統的な打ち方と自分の打ち方はだいぶ違う」と淺野さん。伝統を学ぶよりも、自分の体の中にある感覚と向き合いながら音を作り上げてきたのだという。「太鼓はダンスミュージックやトランスミュージックの原点。大昔はみんな太鼓で踊っていたはずで、国や言葉は違っても共通しているものがある。その中で、日本が使ってきた和太鼓を使ってこそ出る音がある」と話す。
今回の盆踊り大会出演は、セブ島で貧困層への教育支援をしている「DAREDEMO HERO」の内山順子さんの呼びかけに応じた。「セブはリゾート地として有名だが、実際は貧富の差が激しく、その日食べるものもない子供たちがたくさんいる」と内山さん。子どもたちと接する中で、日本文化への強い憧れを持っていることを感じ、以前ライブを聴いたことがあるGOCOOの和太鼓を聴かせたいと思ったという。当日、子どもたちの入場料は無料。淺野さんは「演奏や子どもたちと一緒に太鼓をたたくことを通して、何か生きる力として渡せるものがあれば、うれしい」と話している。
内山さんはGOCOOの出演を実現するために地元で助成金を申請。4月に無事認められたが、楽器の運搬と関税にかかる費用が対象外になっており、その不足分についてクラウドファンディングで支援を募っている。プロジェクトのページはこちら。