銀座から「松坂屋」の名前が消える GINZAブランド再構築なるか

東京・銀座のど真ん中に来年開業する新商業施設である「GINZA SIX(ギンザ シックス)」。実はもともと百貨店「松坂屋」があった場所である。

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写真:2017年4月20日にオープンする「GINZA SIX」

それが東京・銀座のど真ん中に来年開業する新商業施設の名前だ。

実はもともと百貨店「松坂屋」があった場所。東銀座に本社があった自動車会社に勤めていた筆者はよく昼休みにランチをしたり買い物に行ったりした思い出の場所だ。「松坂屋」といえば銀座地区最初の老舗百貨店だが、その名前が消えるというのはかなり大きな出来事ではないのか?

これに関して大丸松坂屋百貨店を傘下に持つ持ち株会社、J.フロント リテイリング株式会社の山本良一社長は、「松坂屋跡地の再開発にあたり、百貨店をやらない、という決断を致しました。時代と共に変革を遂げてきた銀座の地において必要なのは、今の百貨店を進化させるのではなく、誰もが見たこともない、新しい商業施設を作ることだと、確信しております。」と述べたが、歴史のあるブランドを棄て去るという決断に賛否両論はあろう。

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写真:J.フロントリテイリングの山本良一社長©Japan In-detph 編集部

山本社長は、「経営の視点で言えば、これまでの50年間で築きあげてきた成功体験やビジネスモデルが通用しない局面が増えてくる。私たちが新たな成長を実現するためには、過去の延長線上ではない、非連続的な成長へ経営の舵をきる、道なき道を歩んでいかなければならない覚悟をしている。」とも言っており、背景に従来型百貨店ビジネスモデルに対する強い危機感があることは間違いない。

いずれにしろ銀座地区で松坂屋は三越、松屋の後塵を拝していたこともあり、この際思い切って新ブランドで勝負を賭けたということだろう。

「GINZA SIX」では、銀座エリア最大級の商業施設面積47,000㎡(約4,200坪)に241店舗が出店し、銀座中央通りに面して6つのラグジュアリーブランドが旗艦店を構える。「Life At Its Best 最高に満たされた暮らし」をコンセプトに据え、新たな価値「New Luxury」を発信していくという。

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写真:「GINZA SIX」の内観

脱百貨店を標榜する「GINZA SIX」が他の百貨店と一線を画し、新たな客層を開拓できるかは未知数だ。ここで筆者が着目するのは森ビルの本プロジェクトへの参画だ。

森ビルはデベロッパーとして、六本木地区における情報・文化の発信に長年取り組んできた。同地区は、先週末行われた「六本木アートナイト」などに代表されるように、六本木ヒルズが東京ミッドタウンや新国立美術館など他の施設と合同でイベントを開催することで、若者からお年寄りまで幅広い年齢層を呼び込むことに成功している。

翻って銀座地区はどうか?伝統という名のしがらみにとらわれて、従来からの顧客層を失うことを恐れ、若者を呼び込む努力をしてきたといえるだろうか?少なくとも、10代、20代にとっては縁遠い街のままだ。

筆者は森ビル辻慎吾社長に、アート・文化の発信力の弱い銀座において、GINZA SIXが他の商業施設や他の地区とどうコラボレーションしていくのか聞いてみた。

「今、都市の中で文化、芸術というものを、どのように街の中に入れていくのか、ということは非常に重要なテーマになってきているし、これからますます重要になってくる。GINZA SIXの中では、吹き抜けの空間のところに草間彌生さんのアートを大きく展開をしている。また、チームラボの映像などを展示するなど、文化や情報発信に力を入れていきたい。」(辻社長)

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写真:森ビルの辻慎吾社長©Japan In-depth編集部

また、辻氏は銀座の中で他の施設運営者とのコラボレーションの可能性もある、との考えを明らかにした。GINZA SIXの地下には観世流の「観世能楽堂」もできるといい、文化交流に目配せしているのは分かるのだが、銀座全体のアート・文化の発信力向上は一つの商業施設単独でどうにかなるものでもあるまい。

やはり、銀座全体における取組み、いや、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)地区や、それこそ虎ノ門地区、六本木地区、原宿地区などとの面展開が不可欠であろう。また、2020年オリンピック・パラリンピックが開催される臨海地区との連携も不可欠だ。

銀座地区には実は伝統的な美術館や博物館がない。ニューヨークにはメトロポリタン美術館やMOMAが、パリにはルーブルやオルセー美術館がある。都市のマグネット機能にはやはり文化・アートの力が必要だ。ラグジュアリー一辺倒では新しい客層を呼び込むことは出来ない。

GINZAブランドが新しく生まれ変われるかどうか、デベロッパーが一枚かんでいるこのプロジェクトが試金石となろう。