民主党ドイツ視察団 団長雑感
自分時間が毎週半分以上あるドイツの労働環境
「働く人への配慮です」――。ドイツでは日曜日や夜遅くの営業は法律で原則禁止されている。その理由を問うと、ドイツの労働組合から、こんな返事が返ってきた。
ドイツでは法律によって、1日10時間以上の労働が禁止され、退社から出社まで休息時間として11時間を空けなければならないと規定されている。規定以上の労働を命じた上司は罰せられ、悪質な場合は、個人で罰金を支払わされるケースもある。
ドイツは、週の労働時間が上限50時間とされており、睡眠時間や通勤時間を除いても、一週間当たり、自分の時間が労働時間より長く確保できる。「自分時間、半分以上社会」と呼べる。
「自分の時間を過ごす権利がある」「家族と楽しく過ごすために働く」――。こんな言葉もドイツで聞いた。
一方、ドイツの女性からは、夜は店が早く閉まるうえ、日曜日も店が開いていないため、買い物に不便、との声もある。
確かに日本ほどサービスが良くない部分も目に付くが、働く側からすれば、ワークライフバランス、つまり、家庭と職場の両立の面から見ても魅力的ではある。
日本は「お・も・て・な・し」の国で、サービスは世界でも優れていると感じるが、一方で日本は米国とともに先進国で労働時間が最も長い国の一つである。"お客様が神様の国"は、長時間労働の国でもあるのだ。
これからも日本は長時間労働を続けて良いのか。
仮に長時間労働の弊害を金額に換算したとすれば、経済的にみても益よりも損失の方が大きいのではないだろうか。効率の低下、過労死、過労による疾病、育児・介護離職増、女性の社会進出を阻むなど多くの弊害が生まれる。家庭での男性の育児や家事の時間が短いほど、子どもが生まれ難いとの国の統計もある。
日本は、長時間労働している割には経済でもドイツに負けている。種々の原因があるものの、稼ぐ力である労働生産性や一人当たりGDPもドイツを下回る。長時間労働を続けていては世界から優秀な人材を獲得できないとの指摘もある。
それにしても日本の長時間労働は未だ目に余る。筆者が30年前のサラリーマン時代、一か月の残業が100時間を超えることもあった。今もこの環境はさほど変わっていない。
日本でも、一周、いや二周以上の遅れではあるが、労働時間の法的規制に踏み切り、ワークライフバランスを確保し、時間内に仕事を終わらせる効率的な働き方を厳しく追求する時期に来ている。