「政治的な志向性」には遺伝子の影響も:研究結果

われわれの信条や行動に、環境的要因が影響を及ぼしていることは疑いの余地がない。だが、われわれの政治的見解に影響を与えるもう1つの大きな要因があるとする、興味深い研究結果が発表された。

われわれの信条や行動に、環境的要因が影響を及ぼしていることは疑いの余地がない。だが、われわれの政治的見解に影響を与えるもう1つの大きな要因があるとする、興味深い研究結果が発表された。

それは遺伝子だ。

「私たちは、政治的な考え方や行動は環境によって決まると考えがちだ」と、ネブラスカ大学リンカーン校の政治学者で、新しい研究論文の共著者でもあるケヴィン・スミス教授は語る。「しかし、他の多くの研究に加えて今回の研究が示しているのは、(政治的態度が)われわれの生物学的な生理にも、ある程度根ざしているということだ」

スミス教授らは今回の研究のために、682組にのぼる中高年の双生児を調査した(その全員が、「Minnesota Twin Registry」と呼ばれる大規模なデータベースを通じて集められた)。彼らの半分は一卵性双生児、つまり遺伝子がすべて同じであり、もう半分は二卵性双生児、つまり遺伝子の約半分しか共通していない。

研究では双生児たちに対して、同性婚や、学校での祈祷、社会を構築する最善の方法など、さまざまな政治的問題に対する考え方を質問した。

その結果、一卵性双生児の政治観は、二卵性双生児と比べて常に似通っていることが多かった。また、さらに統計的分析を行ったところ、これらの違いは、ある程度遺伝的影響によるものであることがわかったという。

「環境は重要だが、それがすべてではない。私たちのあり方は、生物学的な条件と環境の両方の組み合わせによって決まっている」と、スミス教授は語っている

今回の研究は、2005年に行われた研究を踏まえたものだ。この研究でも、遺伝的影響が政治的イデオロギーに及ぶことを示す、同じような証拠が発見されたが、政治に関連した数個の質問の回答結果しか含まれていない過去の調査データを分析しただけだった。

今回の研究は、政治的な両極化が(とりわけ連邦政府レベルの問題に関して)激しく進んでいる社会状況のなかで行われた。研究者らは、この研究が政治的緊張を和らげる方向で見識をもたらし、そのために取りうる手段を提供できるかもしれないと考えている。

「人々が政治について十分に時間を取って議論しさえすれば、誰もが合意に達するはずだと考える人もいる。けれどもわれわれの研究は、この分野における他の研究と同様、政治的な違いはより根深いものであり、生物学的な影響を受けており、世界に対する認識と対応の仕方全般に影響を与えていることを示している」と、ネブラスカ大学の政治学者で研究の共著者でもあるジョン・ヒビング教授は、米ハフィントン・ポストに対して電子メールで述べた。

生理的傾向が政治思想に影響することを示すほかの例としては、例えば、ネブラスカ大学で2012年に行われた研究がある。この研究では、保守派の人々はリベラル派の人々に比べて、「否定的なイメージ」により注意を向け、より強い反応を示す傾向があるとされた(驚愕反射のテストを行なったところ、保守派のほうがリベラル派よりも「ショックを受ける傾向」が強いと判明した。脅威を感じる状況では保守的な意見が強まる傾向を説明すると見られている)。

「政治的志向」には生物学的な基盤があると認識することで、人々は互いに対してより寛容になり、その結果歩み寄りが促されるようになる可能性がある、とヒビング教授は指摘する。「自分と異なる政治的意見をもつ人を、無知な人だと考えることはたやすい。しかし、(必ずではないとしても)多くの場合、その人は十分な知識を持っているが、生理的傾向が異なっているだけなのだ」

[Macrina Cooper-White(English) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]

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