国の予算を1990年度と2013年度で比較してみると下記のようになります。
予算四分類 1990 2013
社会保障費 11.6 29.1 兆円
地方交付税 15.3 16.4
その他支出 25.1 24.9
国債の利払 14.3 22.2
社会保障関係予算が大きく伸びているのが一目瞭然です。
社会保障関係費のうち、8.9兆円を占めているのが医療費で、2012年度よりも2750億円も増えています。
医療の財源は税金だけで賄っているのではありません。
保険料や窓口負担を加えた国民医療費は、2011年度に38.6兆円に上っています。
厚労省によれば2025年には国民医療費は60兆円に達すると見込んでいます。
このままでは、消費税を上げても社会保障でどんどん食いつぶされてしまいます。この伸びをいかに抑えるかが非常に重要になっています。
この夏の自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトチームの活動も、社会保障費をターゲットの一つにしています。
例えば国民医療費の中で医薬品が占める割合は約8.5兆円。
ここから入院時の薬剤費、院内処方、歯科関係の薬剤費を引いた調剤医療費、つまり院外処方が6.6兆円、そこから薬剤師の技術料を差し引くと薬剤費は4.9兆円。
この中で、後発医薬品、つまりジェネリック医薬品があるものを全てジェネリックに置き換えると、大雑把に1.6兆円の削減が可能になるというのが厚労省のおおまかな予測です。
ジェネリック医薬品の定義は、後発薬でも先発薬と効能に差がないものですから、ジェネリックの導入が進めば、比較的簡単に医療費の削減ができるはずです。
広島県呉市は、呉市国保の事業として、2008年からジェネリック医薬品の切り替えを進めてきました。
被保険者のレセプトをチェックして、ジェネリックに置き換えると削減される医療費の順番に被保険者を並べ、毎月上位3000人に、切り替えを促す通知を出してきました。
通知開始後2年間で70%以上の人がジェネリックに切り替え、現在では80%以上がジェネリックに切り替えています。
2012年度の1年間にジェネリック医薬品に切り替えることによって、個人負担が9万円以上減った人もいました。
呉市の国保は、年間120万円の郵便料で、1億3470万円の医療費を削減することに成功しました。
現在、全国では、数量ベースでジェネリックへの切り替えは23%にとどまっています。
沖縄のように30%を超える切り替え率のところもあれば、徳島や秋田、東京のように2割を切っているところもあります。
現在は、処方箋に先発薬が記載されていても、後発薬があればそれを処方することになっていますが、医師が変更不可という欄にチェックを入れると切り替えができません。
現状では変更不可という欄にチェックを入れるだけですが、ムダボチームでは、ただチェックを入れるのではなく、きちんと変更不可の理由を記載してもらうようにルールを変更すべきだと考えています。
それによって医師が感じているジェネリック医薬品の問題点も収集することができるようになります。
今後の増税を最小限にするためにも、医療費の伸びを抑えていく必要があります。
ジェネリックへの置き換えは、医療の質に影響を与えずに医療費削減につながります。しっかり取り組むべきものです。
(2014年7月10日「ごまめの歯ぎしり」より転載)