「同性愛は違法」ミャンマーでLGBTはアイデンティティーを隠して生きる

「LGBTでいることは危険だと感じる」とある同性愛者は話す。
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ミャンマーで、「ナッ」と呼ばれる精霊と交信する「ナッカドー」(霊媒師)はトランスジェンダーの女性か、女装した男性が務める。しかしミャンマーでは同性愛は違法だ。

2013年、ミャンマー第二の都市マンダレー中心部で、女性のトランスジェンダーたちが複数の警察官に逮捕された。彼女たちは公衆の面前で衣服を脱ぐように強要され、その後、最寄りの警察署へ連行されて「繰り返し殴る、蹴るの暴行を受けた」とテレグラフ紙が伝えている。

「その後、女性たちは裸のままで、まるでファッションショーのモデルのように歩かされ、写真を撮られ、蛙のように跳びはねさせされ、警察官の靴を磨かされ、性生活に関する屈辱的な質問に答えさせられた」という。

この件について、警察の広報は警察官らは公務中であり、トランスジェンダーたちが集まるのを防ごうとしたと発表している。

ミャンマーのLGBT団体「カラーズ・レインボー」のフラ・マイアット・トゥン氏は、「国家が差別を後押ししていることが、同性愛を法律で禁じるミャンマーのLGBTコミュニティにとって深刻な問題だ」と話す。

ミャンマーでは2015年の初め、マンダレーの国境警備大臣ミィン・チュー氏が「同性愛者やトランスジェンダーに関して、差別的で扇動的、かつ誤った発言をした」と人権団体から非難を浴びた。

チュー氏は8月の議会討論で、政府は同性愛者を「繰り返し警察署に拘留させているが、彼らを教育する努力を怠っている」と発言していた

マレーシアと同様に、旧イギリス領のミャンマーには同性同士の性交渉などを禁じる刑法第377条がある。違反すると、懲役10年から終身刑までの刑に処される(人権活動家のアウン・サン・スー・チー氏は過去に刑法第377条の廃止を求めたことがある)。

1962年から2011年まで軍事政権の支配下にあったミャンマーは、民主改革が起きるまで国際社会からのけ者扱いされていた。民主改革後は政治的な自由が広がり、諸外国との関係改善が進んでいる。

LGBTコミュニティも改革後「広く知られるようになった」が、未だに敬意をもって扱われてはいないとトゥン氏は語る。

「LGBTの人たちは、自分がLGBTであることをオープンにしようとしません。性的な自由を求めて闘う、ふしだらな集団だとみられるからです」

ミャンマーではLGBTは虐待や差別の対象となることが多い。人権保護団体「シビルライツ・ディフェンダーズ」によれば、同性愛を禁じる法律が原因で、「LGBTの人々は迫害を恐れ、不自由な生活を強いられている」という。

LGBTコミュニティが抱えるもう一つの大きな問題は、LGBTの活動家がいないため、この問題に対する社会の認識が足りないことだとトゥン氏は述べている。

フィオという名の28歳の同性愛者の男性は、LGBTがミャンマーでどのように無視されているかを、2013年にミャンマー・タイムズ紙で次のように説明している。

「子供の頃、私たちは同性愛について知りませんでした」。そう話す彼が、唯一LGBTコミュニティに触れたのは「周りでひどい扱いを受けているLGBTの人々を見たとき」だったという。

「そのため、LGBTでいることは危険だと感じました」とフィオは語っている。「時々、独りで泣くことがあります」

また、同性愛に対する敵意が、ミャンマーでのHIV(エイズ)との闘いの妨げとなっている状況を、2014年にガーディアン紙が伝えている。世界保健機構によればミャンマーのHIV感染率はアジア最高レベルだ。

しかし、LGBTが悪だとみなされているため、同性愛者たちは自分の存在を社会から消してしまう。そのことが「彼らとの接触をほとんど不可能にしている」と国際連合エイズ合同計画(UNAIDS)の国家代表イーモン・マーフィー氏が報道機関に語っている。

ミャンマーの国家エイズプログラムによれば、ミャンマーにいる推定24万人の男性同性愛者のうち、HIV予防のサービスを受けているのは30%未満だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、2014年以降ミャンマーでの政治改革の勢いは衰えている。2015年には、「基本的人権と民主主義の進歩が逆戻りするかもしれない」と同団体は述べている。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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