ワールドカップ開幕直前のモスクワで、イギリスのゲイ活動家が一時拘束

「チェチェンでゲイが拷問されている」としてプーチン大統領に抗議をしていた
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サッカーのワールドカップロシア大会が始まった6月14日、モスクワ中心部にある「赤の広場」で性的少数者の人権を単独で訴えていたイギリスのゲイの男性が、警察官に一時拘束される事態があった。

ロシアでは性的少数者が公の場で集会やデモ活動などをすることは厳しく制限されており、2014年にソチで開かれた冬季オリンピックのときも、欧米諸国が抗議の意思を示すため、政府要人の派遣を見送った経緯がある。今回の拘束によって、人権問題をめぐるロシアと欧米諸国の対立が再燃する可能性がある。

拘束されたのは、ロンドン在住でオーストラリア出身のピーター・タッチェルさん(66)。自身ゲイであり、性的少数者のほか、様々な社会的弱者の人権を守るための活動に取り組む。反政権派の人々を弾圧したとされるムガベ・元ジンバブエ大統領を自ら「拘束」しようとするなど、「行動派」の活動家だ。

ロシアも度々訪れ、この国の性的少数者らを支援。これまでも捜査当局に拘束されたこともある。

タッチェルさんはこの日、赤の広場で、「プーチンはゲイの人たちを拷問にかけるチェチェンの動きに反対できない」と書かれた板を手に持ち、抗議の意思を表明した。チェチェンはロシア南部の地域で、2017年に100人以上のゲイたちが当局から不当に拘束され、少なくとも3人が死亡した疑惑が持たれている。

タッチェルさんは間もなく、駆けつけた警察官数人に取り囲まれ、「強制排除」。拘束され、パトカーで警察署に連れて行かれた。だが、モスクワにあるイギリス大使館の職員らの助けで、タッチェルさんは拘束を解かれた。

一連の経緯について、タッチェルさんの公式アカウントがTwitterに投稿。警察官らから事情を聴かれている様子や、記者たちが取り囲んでいる様子などを写真や動画で発信した。

ピーターはモスクワの警察当局に拘束され、トゥベルスカヤ(赤の広場近く)の警察署に連れて行かれた。

速報。ピーター・タッチェルは拘束を解かれました。私は総領事館に伝えました。職員によると、タッチェルは釈放され、丁重に扱われたとのこと。善意に感謝。ロシアとチェチェンのLGBTの窮状を忘れないようにしましょう。

キタイ・ゴーラト(モスクワ中心部)にある警察署から解放されました。ワールドカップ期間中、クレムリン(大統領府)付近でのあらゆる抗議活動を禁じた法律違反のため、6月26日に裁判所に出向くことになります。ロシアとチェチェンのLGBTの人たちと連帯することができてうれしいです。

ロシアでは性的少数者に対する差別や偏見が根強い。性的少数者が自らの人権を訴える集会や「レインボーマーチ」の開催が認められず、強行すれば「無許可デモ」として警察当局から強制的に排除されてきた。

2013年には「同性愛宣伝禁止法」も成立し、公の場で未成年者に対し、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーなどを宣伝する行為が禁止された。

性的少数者に対する差別を助長する恐れがあると欧米諸国は反発し、翌2014年にあったソチオリンピックでは各国の政府だけでなく選手たちからも批判の声が上がった。

2013年に、自身が進行役を務めるテレビ番組中にゲイであると告白したジャーナリストのアントン・クラソフスキーさん(42)は、ロシアではいまだに性的少数者たちが厳しい差別にさらされていることをハフポストイギリス版のインタビューに答えている。

クラソフスキーさんの告白は、欧米では勇気を持った行為と賞賛された一方、ロシアでは番組を降板させられるなど、差別的な扱いを受けた。