ここしばらく、「ゲーマーゲート」のニュースを毎日のように目にする。
個人情報の暴露、殺害予告、広告主への圧力...。
ネット上で立て続けに発生する〝事件〟。しかも話が入り組んでいてわかりにくい。
一体、何が起きていて、どこまで広がるのか?
●個人情報を晒す
23日に起きたのは、ゲーム好きで知られる女優のフェリシア・デイさんのケースだ。
デイさんは2007年からウェブで続く、ゲーマーをテーマにしたコメディードラマ「ザ・ギルド」の製作、主演も手がけ、ツイッターでは230万人のフォロワーを持つ。
デイさんは自身のブログで、一連の「ゲーマーゲート」の騒動が、「恐怖を生み、人々をゲームから遠ざけてしまう」と指摘した。
すると、ものの数分で、そのコメント欄にデイさんの住所とメールアドレスが書き込まれたのだという(現在は削除されているようだ)。
●殺害予告
その前週、14日にはユタ州立大学で予定されていたアニータ・シャーキージアンさんの講演が中止になった。
シャーキージアンさんは、フェミニズムの視点からゲームなどのポップカルチャー批評を行ってきた。特に、男性中心のゲーム産業やゲームカルチャーが、女性差別的だと指摘してきた。
講演中止の理由は脅迫メールだったという。講演を行えば、大学構内で銃を乱射する、とのメールが大学に届いたのだと。
しかもユタ州法では、銃器の持ち込みを警官が規制することはできないのだという。
この脅迫メールは匿名で、「ゲーマーゲート」の関係ははっきりしない。
ただ、シャーキージアンさんは、複数の殺害予告を目にしており、そのうちの一つは「ゲーマーゲート」とのつながりを明らかにしていた、とツイッターで述べている。
女性ゲーム開発者のブリアナ・ウーさんは、さらにその前の週の10日に、「ゲーマーゲート」をからかうようなツイートをした。
すると翌日からウーさんのツイッターアカウントは殺害予告であふれ、自宅から避難せざるをえなくなった、という。
●発端
発端は今年の8月。
女性ゲーム開発者のゾーイ・クインさんの元交際相手による、ブログ投稿だ。
クインさんがゲームニュースサイトのライターと交際し、自作のゲームへの高評価が掲載された、という内容だったという。
ゲームサイト側の説明によると、交際は事実だが、そのライターはクインさんのゲームの批評にはタッチしていなかったようだ。
だが、そのブログ投稿は瞬く間にネットに広がった。
クインさんのブログは乗っ取られ、自宅の住所などの個人情報がネットに晒されたという。クインさんは安全のため、自宅から避難することにしたようだ。
「ゲーマーゲート」というハッシュタグは、その数日後、俳優のアダム・ボールドウィンさんが使って注目を集め、自然発生的にネットの〝ムーブメント〟になっていったという。
現状のゲームをめぐるジャーナリズムは不公正だ、との主張を掲げているようだ。
だが、ゲーム開発者や批評家など、女性たちに向けられた一連の攻撃は、性差別の観点からメディアの注目を集める。
当初は、ネット集団「アノニマス」との関わりも指摘される匿名掲示板「4chan」などを議論の場に使っていたようだ(今は閉め出された報道されている)。
また、ワシントン・ポストは、〝アノニマスのリーダー〟と称する人物が、「ゲーマーゲート」に対抗し、女性たちへの嫌がらせ行為をやめさせる「オペレーション・ゲーマーゲート」を立ち上げた、とも報じている。
●広告主
「ゲーマーゲート」の騒動は、広告主にも及んでいる。
インテルやアドビといった広告主が、「ゲーマーゲート」絡みでトラブルとなったニュースサイトから、広告を引き上げたことが明らかになった。
広告主がリストアップされ、大量の抗議メールが送りつけられたようだ。
だが広告引き上げが「ゲーマーゲートに加担した」との批判を浴び、インテルは謝罪声明を出す事態になった。
業界団体のエンターテインメントソフトウェア協会(ESA)も乗りだし、「個人に対する攻撃や脅迫は、ゲームコミュニティとしても、社会としても、断じて認められない」との声明を15日に出した。
国際ゲーム開発者協会(IGDA)も8月末に、「ゲームコミュニティ全体がこのような忌まわしい行為に対し、ともに立ち向かうよう呼びかける」との声明を出している。
●FBIが動く
「ゲーマーゲート」は若いゲーマーが中心との見立てもあり、過激な行動は一部の暴走、とする〝ゲーマーゲート支持者〟の声も紹介されている。
だが、ニューズウィークが「ゲーマーゲート」関連のツイートを分析したところ、女性開発者たちへの否定的なツイートが、多くの割合を占めていた、という。
すでにシャーキージアンさんのケースについて、米連邦捜査局(FBI)が乗り出している、との記事もある。
[追記]
ピューリサーチセンターは22日、「ネット上のハラスメント(嫌がらせ)」についての調査結果を公表している。
それによると、成人のネットユーザーの73%が、ネット上で誰かがハラスメントを受けているのを目にしたことがあり、40%がハラスメントを経験したことがある、という。
ハラスメントの目撃内容のうち、25%が身体的な脅迫を受けていた、としている。
(2014年10月26日「新聞紙学的」より転載)