編集部注:Sam Blancoは応用行動分析学者としてニューヨーク大学で3~14歳の生徒を教えている。過去10年間、彼女は自閉症スペクトラム障害等の発育遅延を持つ生徒に関わっている。
昨年、自閉症に関連する大きな話題が2つニュースになった。ひとつは自閉症の子供はテレビゲーム「中毒」になりやすいか。もうひとつは成人自閉症患者の悲惨な就業率だ。
この、一見無関係な2つのニュースは、共通の文脈で見る必要がある。
なぜなら、自閉症の子供はテレビゲームとIT技術に「動機づけられる」あるいは「堪能である」可能性が高い、と言い換えると何が起きるか?
私たちはこの議論を見直し、どうやってテクノロジーへの興味を跳躍のバネに使えるかを考える必要がある。
ゲームは、あらゆる職業に必要な幅広いスキルについて個人を訓練することができる。コミュニケーション能力の改善から、指示に従い、新しい、技術的な、スキルを学ぶことまで。
しかも、多くの自閉症の子供たちは、テクノロジーに動機づけられて いながら、それを有意義に使っていない。
Kidtellectが開発したTiggly Counts は、そんな子供たちが目的を持ってプレイするための出発点を提供する。そこには初歩の数学スキル構築に役立つ数え遊びが3つのアプリとして入っている。この3D数え遊びは、子供たちのタブレットへの接し方を根本的に変える。
例えば、私の生徒の一人はいつもiPadで遊びたがるが、いざ使わせると目的もなく画面をタップするたけだった。私は彼にTigglyのプレイのし方を教え、ママと2人で物を分ける簡単な遊びをさせた。こうして彼の大好きな行動を少し修正しただけで、母親と新しい形の対話が始まり彼のレベルに適した数学ゲームに参加することができた。
私は多くの自閉症の生徒たちに、Launchpad Toys のToontasticという自分のマンガを作れるアプリを紹介している。
子供たちは、物語の組み立て方、はっきりしゃべること、交代で話すことを学び、会話のスキルを身につける。生徒の一人は書くのが大嫌いだったが、自分の書いた物語がアニメーションになって妹と一緒に動くのを大喜びで見る。彼は言語スキルを学ぶだけでなく、アプリを使うたびに、妹と有意義なふれあいを持つようになった。
またこの会社は、あらゆる年齢グループ、能力レベルの先生から集めたレッスンプランを共有することによって、Toontasticの最適な使い方を広めようとしている。レッスンプランは重要であり、それは自閉症の子供たちがテクノロジーに長けていても、多くの場合その先生や親たちはそうでないからだ。このガイダンスを与えることで、教師が自分の生徒にテクノロジーの有効な使い方を教える手助けになる。
Motion MathのPizza は、全く異なるタイプのスキルを学ぶアプリで、生徒たちはピザレストランを開店し、ビジネス上の判断を下し、資源を管理する。プログラムにはすばらしい報酬システムも組み込まれている。
ある生徒は、グラフで自分がいくら稼いだかを見て、店のためにもっと品物を買えるように目標を決めるのが大好きだ。そしてスキル上達は必ず楽しいゲームの文脈の中で起きる。
しかしおそらく最も重要なのは、アプリが子供に対して、非言語的な社会的手がかりの認識を要求することだ。他人の感情を認識することは自閉症の人たちにとって困難な課題だ。ピザをすぐに届けなければ、客はすぐに苛立ち、次に怒り、ついには店を出て行き、店は売上げを逃がす。
実世界の社会的手がかりと体験を導入したことは、このアプリで最も効果的な側面の一つだ。
私が使っているアプリの多くは、自閉症児やスキル開発向け専用に作られたものではないが、重要な職業スキルの育成に役立つ。われわれは科学技術教育について常に語られていること、もっと具体的には、すべての子供たちはプログラミングを教えられるべきであるという考えに注目する必要がある。
自閉症の子供たちは、無意識のうちに、そうした議論から外されてしまうことが多い。われわれは自閉症児の多くがテクノロジーに動機づけられ、また長けていることを発見した。次のステップは、子供たちへのIT教育の議論に彼らを含め、長期的に彼らを労働力とする準備を整えることだ。
これを良くやっているアプリがいくつかある。Hopscotch Technologiesは、私が自閉症児と一緒に使ったアプリを2つ作っている。Daisy the Dinosaurは、極く基本レベルのプログラミングを教えるアプリで、Hopscotchの方がやや複雑だ。私はどちらかのアプリを子供たちに使わせて、コードを1ステップ追加することと恐竜のDaisyが動くことの関係を理解していく彼らの顔を見るのが大好きだ。その簡単なつながりが、アプリを探究してDaisyに違うことをやらせようとするモチベーションを高める。
このアプリはプログラミングだけでなく、問題解決、算数、シークエンシング等を、多くの自閉症児が通常体験する機会のないやり方で紹介する。
この分野にはこれらのアプリを越えるイノベーションの余地はまだ大いにあると私は考えている。そしてタブレットやスマートフォンの使い方がさらに広がることを願っている。一つ大きな可能性を感じているのが、Spaceteamという私が家族や友達とプレイしたアプリだ。
これは協力型ゲームで、プレーヤーはそれぞれ自分の端末でプレーし、チームとして自分たちの宇宙船を飛ばすために、指示を共有し、他のプレーヤーかからの指示に従い、すばやい反応速度を維持する。私は教育ゲームがこの方式を採用することを大いに期待しており、自閉症児がコミュニケーションスキルを習得するうえで特に効果的だと思う。
IT業界では実に多くのすばらしいことが起きており、今や自閉症を持つ人々をそこに迎える時期が来ている。レッスンプランを提供し、アプリを自閉症児にテストプレイさせ、アクセシビリティーと修正機能を取り入れることによって、見過ごされることの多いこのグループの人たち全体にチャンスが生まれる。議論を転換することは、自閉症の子供たちに社会スキルや将来の就職への道をひらくだけではない。そこには新しいレベルの自立を促し、そこから家族、コミュニティ、そして社会全体へと波及効果を及ぼす可能性がある。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)