「ガキ使」浜田雅功の黒塗りメイク BBCやNYタイムズはどう報じた?

「アメリカンポリス」はどう報じられたのか。日本のメディアのあり方にも疑問を投げかけた。
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日本在住の黒人作家、バイエ・マクニールさんは「ガキの使い!大晦日年越しSP絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」(日本テレビ・2017年12月31日)の画面を撮影し、「#日本でブラックフエイス止めて」とTwitterに投稿した。
BAYE MCNEIL

大晦日に放送されたお笑い番組「絶対に笑ってはいけない」で、ダウンタウンの浜田雅功が米俳優エディー・マーフィに扮して、肌を黒くメイクしたことを受けて、英メディアのBBCや米メディアのニューヨークタイムズなど、海外メディアから「人種差別的」と非難の声が上がっている。

両メディアは、番組だけでなく日本のメディアのあり方にも疑問を投げかけた。番組の内容や、アメリカにおける黒塗りメイクの背景と合わせて、その報道を一部を紹介する。

■エディ・マーフィに扮して肌を黒くメイク

年末恒例となった「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しスペシャル!」の『絶対に笑ってはいけない』シリーズ。2017年のテーマは「アメリカンポリス」で、浜田が肌を黒くメイクして登場。テロップではエディ・マーフィ主演の映画「ビバリーヒルズ・コップ」の説明が流れた。

「黒塗り」姿は35分ほどで、Twitter上では「面白い」「めっちゃ笑える」という反応が相次いだが、「ブラックフェイス」(黒塗りメイク)に反対する声も上がった。

アメリカ出身のアフリカ系アメリカ人で、2004年から日本に暮らす作家・コラムニスト・教師のバイエ・マクニールさんは、ハフポスト日本版に「表面だけを見られて、人間性を否定されているような気分になります」「『彼らは子供で、わかっていないだけ。だから我慢しなきゃ』とも思う」と複雑な心中を明かした。

アメリカでは1800年代以降に、顔を黒く塗った白人が、黒人役を演じる「ミンストレル・ショー」が人気を博した。しかし、「人種差別的だ」とされて廃れ、いまでは「差別だ」という評価が定着している。

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wikipedia.org より

■BBC「『ブラックフェイス』は、きわめて侮辱的な風習」

放送に対して、BBCは4日「人種差別や文化的配慮が足りないとの非難が相次いでいる」と報じた。

BBCは、「顔を黒く塗り黒人を風刺するいわゆる『ブラックフェイス』は、きわめて侮辱的な風習だと広く受け止められている」とした上で、欧米の人種差別の歴史を日本の視聴者が知っていたかどうか、演者や視聴者が差別の歴史的経緯を知らなくても黒塗りは人種差別になるのか、などの議論を紹介した。

「黒人だというのは、オチや小道具じゃないんだ。ジョークが必要?」「お願いだから、#日本でブラックフェイス止めて。カッコ悪いよ」と訴えたマクニールさんの声や、「米国で不適切だからって、世界中でそうだとは限らない」「差別するつもりがないからといって、侮辱的で道徳的にきわめて不快とされている言い訳にはならない」といった声も伝えた。

また、日本のメディアにおける最近の人種差別的な表現もふり返った。

マクニールさんが2015年に、ブラックフェイスのバンド2組を全国放送で流さないよう訴える署名活動を展開し、テレビ局側は放送を中止したことがあったことや、ブラックフェイスだけでなく、過去に白人を露骨にステレオタイプに描き広告を取りやめた全日本空輸(ANA)や東芝のキャンペーンにも触れた。

■NYタイムズ「日本のコメディアンが批判にさらされている」

ニューヨークタイムズも4日、「日本のコメディアンが人気のテレビ番組でブラックフェイスを披露し、批判にさらされている」「多くの人を憤慨させ、日本の主要メディアで、定期的にメイクで外見の演出がされていることを浮き彫りにした」と報じた。

テレビを見ていた外国人の「容認できない、差別主義者」などの声を紹介。マクニールさんのツイートは、「日本のエンターテインメントで、ブラックフェイスを用いることについて議論を開始した」と表現した。

「アメリカとは異なり、日本では黒人に対する差別の歴史がない。顔の黒いメイクの日本人のパフォーマーは、文化の汚名ではない」などお笑いを擁護する声を紹介する一方、歴史家ジョン・G.ラッセルによるジャパンタイムズの記事をふまえ、日本のブラックフェイスの歴史は少なくとも1850年代にさかのぼると指摘した。

また、日本の反応について「差別的と見なされている事例が可視化され、多くのSNSユーザーは驚いていた」とふり返った。

BBCと同様に、2015年に放送されたブラックフェイスのバンドの署名活動に触れ、マクニールさんの「今回の放送局からの回答がない場合は、今後も(同じ問題が)発生するでしょう」との懸念を紹介した。

マクニールさんは、「メディアは、人々が外国人にどう接するかに大きな影響を与えます」「日本のメディアは多様なバックグラウンドを持つ人たちと協力して、不快なコンテンツが防ぐ必要があります」と呼びかけた。

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テレビのお笑いや翌日、視聴者の職場や学校、日常で再生産される。テレビの演出は、多くの人たちの外国人に対する接し方にも影響を与えるだろう。

認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんは「人権に配慮した笑いって、本当につくれないんでしょうか」と投げかける

韓国のテレビ局SBSは2017年、黒塗りメイクのキャラクターをお笑い番組の演出で、批難の声を受けて謝罪した。「ブラックフェイス」について、今後も議論を深める必要がありそうだ。