鹿児島県のトカラ列島にある無人島「臥蛇島(がじゃじま)」が、にわかに話題になっている。産経新聞が9月16日、陸上自衛隊が本格的な離島奪還作戦のための訓練場を整備する検討を開始し、候補地として臥蛇島が浮上していると報じたからだ。
■臥蛇島とは?
斎藤潤さんの「吐噶喇列島~絶海の島々の豊かな暮らし~」 (光文社新書) などによると、臥蛇島は標高497mの御岳を最高峰とする古い火山島。周囲は約9キロほどと小さく、鹿児島市から200キロ程度の位置にある。横から見ると、蛇が臥せた形に見えることが島名の由来だという。
かつてはカツオ漁で栄え、戦前の1940年には133人の人口がいたが、敗戦後には人口が激減。若者減少によって過疎化が進み、1970年7月28日に最後の4世帯16人が離島して無人化したという。
その一番大きな理由は、人口が減りすぎて、船からの荷物の積み下ろし作業が不可能になったためだった。臥蛇島の周囲は数十~100メートル以上もある断崖に囲まれていて集落はその上にあった。そのため、大規模な港湾の整備は難しく、人力の「はしけ」作業に頼るしかなかった。
高度経済成長による若者の都会への流出や過疎化などの象徴的な出来事として全国的な注目を集めた。その後は50年近く無人島のままとなっている。
■無人島として放置することに懸念の声も
産経新聞によると、十島村では臥蛇島を無人島として放置すれば外国人の不法上陸や逃亡犯の潜入が懸念されるとして自衛隊の常駐を求める動きがあり、防衛省は隊員用施設の建設と管理隊員の常駐を検討している。
防衛省は、2018年末に改定する防衛力整備の基本指針「防衛計画の大綱」に合わせて策定する2019年度から5年間の「中期防衛力整備計画」に、訓練施設の整備方針を盛り込みたい考えだという。