日本時間11日に終了したG7では、表立っての円安批判はなかったと報じられていたが、各国は内心どう思っていたのか。
G7とは先進7カ国の財務相、中央銀行総裁が集まり、経済・金融情勢や世界の金融政策について意見交換をする会合のこと。参加国は、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダで、年に数会開かれている。
今回の議論も経済成長と財政再建を議論の中心に据え、財政危機や、銀行セクターの抜本改革の必要性などを議論した。
日本での注目点は、日本の各種の金融政策が円安誘導と取られないかというもの。4年ぶりに円が対ドルで100円を突破し円安となった日本に対する、各国の反応が注目されたが、表立った円安批判は出ず、閉幕後の記者会見で麻生財務相は「円安批判はなかった」と述べた。
黒田東彦日銀総裁も、日本は通貨安政策ではなく、デフレからの脱却が目的の経済政策であると改めて説明したとロイターが報じている。
◎黒田東彦日銀総裁
日銀の量的・質的緩和は物価安定のために実施していることだ。日銀としては為替レートをターゲットにしているわけではない。為替レートは基本的には市場で決まっていく。
為替の水準や動きについてはコメントすることはない。
(ロイター 2013年 05月 11日 09:05)
また、時事通信によると議長国のイギリスのオズボーン財務相も、日本の政策にも理解を示したようだ。
今回のG7は、直前に1ドル=101円台にまで進んだ急速な円安を各国が注視する中で開かれた。オズボーン財務相は、通貨安競争回避をうたった2月のG7共同声明を再確認したと表明。その上で「日本は長年のデフレなど他のG7諸国と違った状況にある」と語り、脱デフレを目的とする日銀の金融緩和に一定の理解を示した。
(時事通信 2013/05/11-23:44)
日本の景気回復が、世界の景気回復の一端を担うとも言われており、表立っての円安批判はない。しかし、各国の円安への警戒感はじわじわ強まっている。ショイブレ独財務相は、「日本と集中した討議を行った」とし、ロイターは「政策担当者から、日本が輸出主導型の回復を促しており、円安が他地域の成長を阻害する可能性があるとの懸念の声が出ていた。」とも報じている。
また、同じくロイターは、ルー米財務長官の発言として、米国が各国の為替政策について「Keep an eye(目を光らせる)」という言葉を強調し、米国原題では「US sends Japan currency warning(アメリカは日本の為替政策に警告を送った)」という記事を掲載した。日本で読むことができる翻訳記事では、一部の部分をロイターなどが報じている。
ルー長官は「日本は長い間、成長面の問題があり、われわれも日本に対処するように働き掛けてきた。それゆえ、日本が国際合意の範囲内にとどまるのであれば成長は大事な優先課題だと私は考える」と述べた。その上で「私はただ基本原則に立ち戻っているだけで、それについては我々は注視していることを明らかにしている」と説明した。
(ロイター 2013/05/10 23:35)
G7の会合前には、米国高官の話として、日本の最近の措置がどの程度内需を支援しているか注視していると報じられていた。今回のG7では、円安に関しては容認された形であるが、今後、日本の経済成長が見込めないならば、金融緩和による財政悪化や、円安政策による各国の経済に及ぼす影響が、非難の対象になるだろう。