グーグルマップの受賞禁止で期せずして注目を浴びたグッドデザイン賞のビジネスモデル
日本デザイン振興会が2013年度グッドデザイン賞の大賞(内閣総理大臣賞)として選定した「グーグルマップ」について、政府が表彰に同意しないという「事件」が発生した。ネットなどではその理由をめぐって様々な噂が流れている。また賞を受賞する作品は毎年1000以上もあり、受賞したことを示すGマークの利用は有償になっているという、同振興会のビジネスモデルも思わぬ形で明らかになった。
日本デザイン振興会は、毎年、優れたデザインの製品やサービスに対して表彰を行う「グッドデザイン賞」を実施している。ちなみに2012年の大賞受賞作品はNHKのテレビ番組の「デザインあ」、2011年はホンダのカーナビを使った通行情報マップであった。
今年の大勝は、同賞の審査委員と一般投票の結果、グーグルの「グーグルマップ」が選定された。しかしその報告を受けた経済産業省は首相官邸と協議した上で、表彰に同意しないことを決定した。
審査委員会で選ばれた製品が大賞を受賞しないケースは前例がなく、同振興会は特別賞「グローバルデザイン2013(日本デザイン振興会会長賞)」を急遽新設しグーグルに授与した。
政府が表彰に同意しなかった理由は明らかではないが、2位にエントリーされていたJAXA(宇宙航空研究開発機構)の固体燃料ロケット「イプシロン」に受賞させたかったというものや、グーグルマップには竹島や尖閣諸島が日本領土と記載されていないことを問題視したなど、様々な噂が流れている。中にはグーグルはドライな会社なので、Gマークの利用料を払ってくれないからではないのか?という半分冗談ともつかない声も上がっている。
というのも、同振興会は、グッドデザイン賞を授与した製品に対して、受賞の証であるGマークの利用を有償で許可することで基本的な収益を得ているからだ。
同振興会の活動は、もともと経済産業省の前身である通商産業省がデザイン課(当時)を設置し、デザインに関する政策をスタートさせた1950年代に遡る。当初は日本貿易振興会(JETRO)の一部であったが、1969年に日本産業デザイン振興会として独立し、現在に至っている。
同振興会は年間8億円程度の予算で運営されているが、その歳入の多くは「Gマーク」の利用料収入だ。Gマークとはグッドデザイン賞の受賞者が使用できるロゴで、これを使用した受賞者は年間20万円から100万円程度の利用料を同振興会に支払う。グッドデザイン賞には様々な部門があり各部門から複数の受賞者が出るため、なんと毎年1000件以上の受賞者が存在している。皮肉な見方をすれば、グッドデザイン賞という、いわば経済産業省のお墨付きを得るために、利用料を支払うようなシステムでもある。
今頃になってグーグルマップが大賞受賞というのはセンスとしてどうなのか?という声もあるが、いずれにせよ政府は同振興会に賞の選定を任せていたわけであり、明確な理由もなく表彰を拒否するというのは、賞の意義を軽んじることになってしまうだろう。また、毎年1000件以上も賞を授与しているということになると、そもそも何のためにこの賞を設置しているのかという疑問にもつながりかねない。
また領土の表記が問題なのであれば、むしろそれは堂々と見解を表明すべきものであり、理由をはっきりさせないことは別な問題を生み出す可能性もある。
同振興会はもともと、デザインを通じて工業製品やサービスのブランド価値を高めることを目的として設立されたはずだ。だがこの一件で、グッドデザイン賞に関するブランド価値は大きく下がってしまったかもしれない。
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