原発作業員の防護服は「紙のようなもの」 冬も過酷な作業環境 ジャンパーも着られない理由とは

放射性物質を通さない防護服は、原発作業員の命綱だ。しかし、防護服は「防寒」を想定して作られているわけではないため、冬が来ると、今度は「寒さ」が作業員に襲いかかる。防護服は見た目が「紙」のような、ペラペラのものでしかないのだ。
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Workers dressed in protective suits and masks wait outside a building at J-Village, a soccer training complex now serving as an operation base for those battling Japan's nuclear disaster, in Fukushima, Japan, on Friday, Nov. 11, 2011. Tokyo Electric Power Co. is struggling to contain the worst nuclear disaster in 25 years. Photographer: David Guttenfelder/Pool via Bloomberg via Getty Images
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福島第一原発における今年の夏の熱中症患者は、9人で横ばいだった−−。

東京電力が10月22日に発表した内容によると、福島第一原発のなかで、作業に起因する熱中症の発生は今年度は9人となり、昨年度の7人からほぼ横ばいだった。熱中症の疑い等も含めた合計では18人となり、昨年度24人からは減少したという。

福島第一原発には空調がない。東日本大震災で壊れたままというのが理由だが、たとえ壊れていなかったとしても、ほこりが舞い上がり使えない。空間線量があがってしまうからだ。

加えて、作業員が着る防護服の「気密性」が高いことが、熱中症にかかる人を増やした。

(原発作業員の)防護服はポリエチレン製の不織布で作られており、0.5マイクロメートルより大きいちりやほこりは、ほぼ通さないという。(中略)

湿度の高いところでは、防護服の上から、さらに雨がっぱを羽織ることもあるという。ただ、空気を通しにくいから、熱もこもりやすい。

(朝日新聞デジタル「東電、原発作業員の防護服を公開 気密性高く熱中症数人 - 東日本大震災」より。 2011/5/28 22:31)

放射性物質を通さない防護服は、作業員の命綱だ。しかし、防護服は「防寒」を想定して作られているわけではない。そのため、冬が来ると、今度は「寒さ」が作業員に襲いかかる。防護服は見た目が「紙」のような、ペラペラのものでしかないのだ。

昨年6月まで東電社員として働いていた吉川彰浩さんは、原発作業員の冬の環境について次のように述べている。

夏が終われば、今度は冬の寒さが原発の作業を阻みます。

現在も福島第一の現場の方では、暖房なんてありません。

気温が下がれば、下がるほど作業が困難になります。

通常であればジャンバーをはおる事も出来るでしょうが、そうはいきません。

なぜか着ている服が汚染してしまうからです。

その汚染防止の為に防護服を着ます。

あれは紙製です。使い捨ての服だと思っていただければと思います。

当然、防寒機能もありません。ゆったりと作られてはいますが、その中に厚手のジャンパー等は着る余裕はありません。

通常、ヒートテックといったインナーとスエット、そして作業服でしのぐしかありません。

外仕事をされている方なら、こんな格好で作業する辛さはよく分かると思います。

たまにお年をめした方が、放射線作業を若い人にやらせる分けにはいかないと

ボランティア精神で申し出てくれますが私は、はっきりと反対しています。

体力的にかなり大変な現場だからです。

(吉川彰浩さんブログ「冬の寒さがきます。」より。 2013/11/02)

実際に、作業員の方たちがどのような格好をして福島第一原発の中で働いているかは、下記のロイターの動画を見るとよく分かるだろう。

動画の40秒あたりでは、福島第一原発に向かうターミナルとなる「Jヴィレッジ」に集まってくる作業員の方たちの様子が、1分20秒あたりでは防護服を着る様子が映っている。3分3秒あたりでは、防護服を脱いで放射線量のチェックを受ける様子も見ることが出来る。

福島の冬は寒い。福島第一原発の近くの浪江町の平均気温は11月は9.4度だが、12月は4.8度、さらに1月は2.1度、2月が2.3度と、ぐっと下がる。

あまりの寒さに体は縮まり、まともな動きはできません。

防寒手袋なんてものもなく、綿手袋の上にゴム手袋を2重にすることしかできません。このゴム手袋も少し強く引っ張れば簡単に破けるくらい薄いです。

手がかじかみまともに作業できません。

建設作業等でよく問題になるのは暑さと寒さです。人間の行動を制限してしまうからです。これからの季節、寒さとの戦いになります。当然、福島第一は暖房なんてありません。

空調設備は吹っ飛び、壊れたまま、それに建屋そのものが形をなしていないのですから。

(「吉川彰浩さんのFacebook」より。 2012/11/07 17:35)

見かねた吉川さんは、ヒートテックとホッカイロを、福島第一原発の作業員の方へ届ける活動をはじめた。全国から寄付を集め、そのお金でヒートテックとホッカイロを購入し、福島のJヴィレッジにおいてもらうのだという。

私も経験がある事ですが、冷えて縮みきった体では作業時にけがを起こしそうになる事が度々ありました。満足に体が動かないからです。また思考も遮られてしまいます。

現地の労働環境を変える力は私達にはありません。しかしながら、個人個人の力を合わせることで、実用的な物資を送ることで作業安全に寄与することは出来ます。現地の方が有効利用でき、且つ喜ばれる、そして冬場の作業安全にも寄与できることを考えた活動です。

この支援物資はJビレッジの玄関ホールに置いて貰えることになっています。

作業員の方々に一般の方々の応援が直接伝わるようになっています。

物資だけではなく、気持ちが伝わる活動です。

福島原発で働く作業員の方々が日の目を浴びる機会も減っています。しかし震災後から今も変わらず、世界一危険な原子力発電所で世界有数の問題に取り組まれています。震災後から命がけの作業をされているのにです。

私達のこの仮初の平和も、現地の作業員の方々により支えられています。

今度は私達が彼らを支えなくてはいけないのではないでしょうか。

(Facebook 吉川彰浩さんのノート「皆さまのご支援をお願いいたします。」より。 2013/11/05 01:11)

吉川さんは当面の目標として、ヒートテック上下3,000着(600万円相当)、ホッカイロ30万個(400万相当)を送りたいという。

今回のヒートテックとホッカイロの為の資金集めについて、一つ隠れメッセージがあります。それは「気付かせる」といった物です。

東京電力の敷地内に民間の思いがつまった大量の支援物資が届く

しかもそれが、元現地で働いていた東電社員が集めたものだという事実と一般の方々のご支援という事実が、東京電力側に「やれていない」「恥じなければいけない」と思わせることが出来ます。

企業を動かすのも、人の心を動かすのが必要です。

なぜやらないのか?明確な答えは出てきません。

そこを叩くやり方よりも、模範を示し気づかせるやり方というのもあります。

その方がはるかに効果的です。

(「吉川彰浩さんのFacebookページ」より。 2013/11/03 11:03)

吉川さんは、福島第一原発は、安全に廃炉にするには、その廃炉作業を支える原発作業員への支援が必要だと話す。

一日3000人と言われる人数が入る現場です。一般の方の個人の力では、思いは馳せても現実に支援することが難しいのが実情です。しかし結集すれば出来ることがあります。支えていくには大変多くの方のご支援を必要とします。

(Facebook 吉川彰浩さんのノート「皆さまのご支援をお願いいたします。」より。 2013/11/05 01:11)

東京電力福島第一原発では、タンク内部にシートを置き忘れたり、配電盤の停止ボタンを誤って押すなど、今年9月以降、単純な作業ミスによるトラブルが続いている。これらのヒューマンエラーは、士気の低下によるものではないかという見方もある。

士気の低下を起こす原因の一つには、作業環境の過酷さ(夏場の暑さや冬の寒さ)が、社会にうまく伝わっていないということもあるのではないかと、吉川さんは指摘する。

11月4日、近畿地方で木枯らし1号が吹いた。昨年より6日遅いが、日本に寒さをもたらす冬将軍もまもなく日本に南下を始め、11月後半には、寒気の第一陣がやってくるとみられる。

寒さと闘う原発作業員。その環境を理解することが、原発作業員を支えることになるのではないか。

原発作業員の冬の作業環境についてあなたはどう考えますか?ご意見をお寄せ下さい。

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