「福岡移住計画ラジオ」DJの市來孝人です。福岡・天神にスタジオを構えるラジオ局「COMI×TEN」から、福岡で面白い活動をする方をお招きし「福岡の生の声」をお届けしています。ゲストで登場していただいた方の中から、「マチノコト」とも相性の良い活動をご紹介していこうと思います。
先日、福岡アジア都市研究所の上席主任研究員・情報戦略室長 久保隆行さんにご登場頂きました。公益財団法人福岡アジア都市研究所は、福岡を拠点に、各界各層の協力と連携のもとに都市政策を研究し、アジアの視点をも取り入れながら将来の都市戦略を提言する研究機関です。
今年、平成26年度総合研究「福岡の国際競争力に関する研究〜IRBC参加非首都6都市の比較分析〜」報告書をリリースしました。番組で久保さんにお話頂いたコメントを交えながら、研究内容をご紹介いたします。
「第3極」の都市とは何か
これは、首都・経済首都でなくメガシティでもない5つの都市(シアトル・バンクーバー・メルボルン・ミュンヘン・バルセロナ)を「第3極」の都市と名付け、福岡もそれらの都市と類似性を持っており、それらの都市の持つ国際競争力に近づくためにはどのようにしていくべきかを研究し、その結果をとりまとめたものです。
研究によると、福岡は「生活の質」においては他都市と同等の評価を有するものの、「都市の成長」においてはまだまだ成長の余地があるようです。この研究に関心を持った方は、全文ダウンロード可のこちらから是非チェックしてみてください。
「第3極」都市の選定過程
近年、国際競争力を有する都市が「グローバル都市」として定義され、それらの順位を示す都市ランキングが数多く発表されています(「Global Power City Index」「Global Cities Competitiveness Index」「Global Cities Survey」「Global Cities Index」など)。
当研究によると、これらで概ね上位にランクインされる都市はざっと100ほど。これらの都市のなかで、首都や経済首都ではなく、メガシティでもない都市は16。さらに「MONOCLE」や「MERCER」などの住みやすい都市ランキングで上位に評価された都市となると、福岡も含め数都市に絞られます(A)。
また2008年、シアトルを本部として、都市の規模や経済特性などにおいて、類似性を有する世界の10都市で構成された「国際地域ベンチマーク協議会」が発足。この協議会に加盟している都市の中で首都ではない都市(B)。この(A)(B)を重ね合わせていくと、シアトル、バンクーバー、メルボルン、ミュンヘン、バルセロナといった「第3極」の都市が浮かび上がってくるということです。
久保さん「東京と世界の都市を比較する時は、(規模をふまえ)先進国の首都との比較が多いです。ただ、福岡はまた違う。「首都や経済首都ではないのに評価が高く、かつコンパクトシティと言われている都市」との比較がより近いのです」
生活の満足度は世界の「第3極」都市に引けをとらない
久保さんは、福岡は「生活の質」という面ではこれら「第3極」の都市に引けをとらないと語ります。
久保さん「これら「第3極」の都市と比べても福岡は特にコンパクトです。自然環境という面では、バルセロナはコンパクトかつ海や山に囲まれていますが、海や山の割合をぐるっと中心部から円を引いてみてみると、福岡も同等位の海や山が近くにあります。
また、小学校がどんな場所に配置されているか。小学校があるところはつまりコミュニティがあるということです。小学校のある場所をマークしてみると(下記画像参照)、結構他の都市は郊外に広がっていることも多いですが、福岡はとてもコンパクトに収まっているんですね。福岡はコンパクトで、Co2の排出量も少ないですから、環境にフレンドリーな都市と言えます」
「第3極」都市と比較しての現状の課題
「生活の質」という評価軸では他の5都市に引けをとらない一方、「都市の成長」という面では福岡だけがまだまだ低いよう。
久保さん「外国人の居住者数や、海外とのコネクションという面において、他の都市と比べると福岡は劣っています。福岡は日本国内だけで見たらとてもダイバーシティが高いのですが、海外の国際競争力のある都市から見たらまだまだです。観光資源や国際イベントの集客力を高めつつ、ホテルなどのおもてなしの施設を整備することによって、海外からの人の出入りはもっと伸ばせる可能性があります。」
福岡の将来予測
この研究では、現状の評価と合わせて、今後の展望についても記載されています。天神地区の再開発・福岡空港の滑走路増設・展示場の拡張などといった今後予想される動きや、現在の人口増加率を踏まえると、何年頃に福岡は国際競争力のある都市に肩を並べることが出来るのでしょうか?
久保さん「20××年と書いている通り、もちろん私たちも読み切れない部分ではあります。個人的な意見としては都市の変革には少なくとも20〜30年くらい、すなわち社会の主役が世代交代するくらいはかかるのではと思っています。
2035年頃までは福岡の人口は伸びるという予測が出来ますし、現在のペースの成長を持続させることができれば2040年頃にベンチマークしている都市群と肩を並べる可能性はあります。(他の「第3極」都市と比べ)課題があるということは伸びしろがあるということですから、ポジティブな予測が出来る街ですね。」
世界の類似都市に学ぶ
福岡を、東京・ニューヨーク・ロンドンなどのメガシティと比較するのではなく、規模や環境が近い「第3極」の都市と比較した点もこの研究の面白いところ。
日本の他の都市でも「世界の中で規模や環境が近い都市を見つけ、ベンチマークする」という視点を持ってみると、何か発見があるのではないでしょうか。
『「第3極」の都市』(公益財団法人 福岡アジア都市研究所)
(2015年6月25日の「マチノコト」より転載)