オスロ・フィヨルドには、フレイヤを見ようとする大勢の観光客が集まっており、水産総局は「人間の安全が保障できないために、安楽死させた」と説明している。
この体重約600キロと見られている巨大なメスのセイウチが、オスロで確認されたのは7月半ば。AFPによると、これまでイギリスやオランダ、デンマークやスウェーデンなど、複数の国で目撃されてきた。
このセイウチは、北欧神話の女神にちなんでフレイヤと名付けられ、メディアやSNSで人気を集めた一方で、ボートによじ登ってダメージを与えるなどの問題も起きていた。
フレイヤがオスロに現れて以来、水産総局は監視を続けて、距離を保つよう人々に強く求めてきた。
しかしこの勧告は聞き入れられず、同局は8月11日には多くの人々がフレイヤの間近に集まる様子を捉えた写真を公開。安楽死の可能性も示唆していた。
水産総局のフランク・バッケ=ジェンセン長官は、8月14日に発表した声明で「人々の安全に対する危険が続いている、と総合的に判断し、安楽死を決定した」と述べている。
「この1週間、現地で観察した結果、セイウチから距離を保つようにという勧告が無視されていることは明らかでした。そのため、水産総局は人々に危険を及ぼす可能性が高いと判断しました。動物の福祉は保たれませんでした」
バッケ=ジェンセン氏は、フレイヤの移動も検討したものの「複雑さから、実行可能ではないと判断した」ともコメントしている。
「今回の決定を、悲しむ人たちがいるでしょう。そのことに同情しますが、これが正しい決定だと確信しています。我々は動物の福祉を重視していますが、人間の命と安全を優先すべきです」
一方、ノルウェー南東部大学で生物学を教えるRune Aae氏は、安楽死を「あまりにも性急な結論だ」とFacebookで批判。
「これまでの経験から、もう少しすれば、フレイヤがオスロ・フィヨルドを去ったであろうことはわかっています。殺すことは完全に不必要だったと思います」
「ノルウェーは、北海の周りで2年間生きていたフレイヤを殺した国になってしまった。なんて残念で悲しいことだ!」とつづっている。
WWF(世界自然保護基金)によると、セイウチは北極圏から亜北極圏に生息する大型の海生哺乳類だ。地球温暖化が原因で、2016年に絶滅危機種のリストに「VU:危急種」に指定されている。