無料WiFiは必要なのか

来日した外国人観光客が無料WiFiを求めているという話がある。元情報は、観光庁が定期的に実施している『訪日外国人消費動向調査』のようだが、年次報告書や回答集計結果には触れられていない。
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furtaev via Getty Images

来日した外国人観光客が無料WiFiを求めているという話がある。元情報は、観光庁が定期的に実施している『訪日外国人消費動向調査』のようだが、年次報告書回答集計結果には触れられていない。一方で、四半期報告では確かに言及され、この扱いから、マイナーな調査項目であると推察できる。

さて、四半期報告を見ると、2014年1-3月期では、「日本滞在中、何に関する情報があると便利だと思いましたか。」という質問に対して、「無料WiFi」を選択した回答者が47.0%いたとなっている。注意してほしいのは、「無料WiFiが必要ですか」という質問に「はい」と答えたわけではないということである。どうして、外国人観光客が無料WiFiを求めているという話にすり替わってしまったのだろう。

「日本滞在中、何に関する情報があると便利だと思いましたか。」という質問の、他の選択肢は宿泊施設・交通手段・飲食店・観光施設・現地ツアー・イベント・土産物・買物場所・祈祷室・ATM・両替所・宅配便である。入場無料の観光施設や、無料で持ち帰られる土産物はない。回答者の立場では、宿泊施設の情報を知ろうと思ったら無料WiFiがあれば便利だ。交通手段や飲食店といった情報を求めた回答者も、無料WiFiがあれば便利と思ったことは間違いない。WiFiだけが最初から「無料WiFi」と書かれ、「無料WiFi」は回答率が高いと報告するのはおかしい。そのうえ、観光庁の資料には、観光案内所からの意見として、「外国人からの無料公衆無線LAN環境へのニーズは非常に高い」と書かれている。こうして、「無料WiFiに関する情報」が「無料WiFiそのもの」にすり替えられた。

一方で、四半期報告には、「日本滞在中に得た旅行情報源で役に立ったものではインターネット(スマートフォン)(46.5%)の選択率が高く、次いでインターネット(パソコン)(35.5%)」と書かれている。WiFiが、それも無料WiFiがないので困ったという外国人観光客の比率がそんなに高いとは思えない。

観光庁が「最近の訪日外国人の動向を分析しました」と報道発表したのは、2014年6月30日である。時期をほぼ同じくして、朝日新聞は6月23日夕刊で「日本観光「ネット不便」 WiFi整備、海外に比べ遅れ 路上で使えず、手続き煩雑」と報じた。観光庁の世論誘導に朝日新聞が乗せられたのではないか。

朝日新聞の記事には、セキュリティ対策のために無料WiFiの利用者登録が煩雑になっているが、それが原因となって途中であきらめる外国人もいると書かれている。しかし、素性を問わずに接続を認めれば、ハッカーに利用されるかもしれない。空港などでは今でも無料WiFiが利用できるが、この場合には防犯カメラがセキュリティを担保しているのだ。街頭無料WiFiでも、空港と同様のセキュリティ対策が取れるだろうか。記事には、識者の意見として、「短時間だけつなぐ屋外のWiFiは手続きを簡略化してはどうか。」とある。短時間の接続ではセキュリティ問題が生じないと考えているとしたら、お人よし過ぎる。

スマートフォンの国内利用者は、移動通信事業者が提供するWiFiに無料、あるいは安価に接続できるようになっている。トラヒックの一部がWiFiに移るのは、移動通信事業者にとって都合がよいからだ。母国のスマートフォンを国際ローミングで利用する外国人観光客も、同じように、移動通信事業者のWiFiが利用できるようにすれば、無料WiFi問題は解決できる。