米連邦準備理事会(FRB)は18日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表した声明で、月額850億ドルの資産買い入れを当面継続する方針を表明した。過去数カ月間の借り入れコスト上昇によって景気が圧迫される可能性があるとの懸念を示した。
買い入れ資産の内訳は従来どおり米国債が450億ドル、モーゲージ担保証券(MBS)が400億ドル。
市場では今回、資産買い入れ額の縮小が決定されるとみられていただけに、予想外の結果となった。
FRBは、財政引き締めや住宅ローン金利の上昇による景気への影響を理由に、株価や債券相場にほぼ完全に織り込まれていた資産買い入れの縮小を見送った。
声明では、過去数カ月間に見られた金融状況のひっ迫が続いた場合、経済や労働市場の改善ペースが鈍化する可能性があるとしている。
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長はFOMC後の記者会見で、買い入れ規模縮小について「あらかじめ決められた日程はない。このことは強調しておきたい」とし、「経済指標によりわれわれの基本見通しが確認され、われわれがその見通しに対する確信を深めれば、年内に措置を講じる可能性もある」と述べた。
発表を受けて米国株式相場は上昇し、S&P総合500種
チャプデレイン・フォーリン・エクスチェンジのマネジングディレクター、ダグラス・ボスウィック氏は「経済は安定化しているが、成長はしていない」と指摘し、「FRBは常に、経済指標が緩和縮小時期の決め手になると述べてきたが、過去数カ月に発表された指標は好ましくなかった」との見方を示した。
米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のモハメド・エラリアン共同最高投資責任者(CIO)は、「FRBは経済が全般的に停滞していることを引き続き、かなり懸念しており、時期尚早な引き締めによるリスクより、緩和策を過度に長く維持することのリスクをとることを選んだ」と述べた。
今回のFOMCで緩和縮小を見送りを決定した理由として、FRBは財政引き締めと住宅ローン金利の上昇を指摘。声明は「経済と労働市場の見通しに対する下方リスクは昨秋以降、全体として後退したと考える」としながらも、「過去数カ月に金融状況の引き締まりが見受けられ、継続すれば経済および雇用市場の改善ペースを減速させる可能性がある」とした。
一方、連邦政府による増税や歳出削減の中でも経済が引き続き前進しているとの認識を示し、「連邦政府の緊縮財政の影響を踏まえると、1年前に資産買い入れを開始した以降の経済活動、雇用市場の改善は、広範な経済のすう勢が力強さを増していることと整合すると考える」と表明。
その上で「資産買い入れペースを調整する前に、この進展が持続するとのさらなる証拠を見極めることを決定した」とし、当局者が現在も買い入れ縮小時期の検討を続けていることが浮き彫りになった。
バーナンキ議長は6月のFOMC後の記者会見で、年内に資産買い入れの規模縮小に着手し、2014年半ばには買い入れを停止することが適切となるとの考えを表明。買い入れを停止するころには、失業率は7%程度に低下しているとの見方を示した。
この日の記者会見では、失業率7%との水準は、政策担当者が買い入れ停止の時期を模索するにあたり目標とする「特別の意味を持つ数字」ではないとの立場を示し、「年内に(緩和縮小に)着手することもできる。ただ着手したとしても、その後の措置は、経済の継続的な進展次第となる」とし、緩和縮小に関して「あらかじめ決められた日程はないが、6月に示した基本的な枠組みは維持している」と述べた。
カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は、低金利政策によるバブル形成のリスクを懸念して今回も反対票を投じた。
同時に公表された最新の経済見通しでは、2013年の成長率予想(中間予想値)が2.0─2.3%と、6月時点の2.3─2.6%から引き下げられた。14年については6月の予想が3.0─3.5%だったのに対し、今回は2.9─3.1%と、さらに大幅な下方修正となった。
フェデラルファンド(FF)金利の最初の引き上げに適切な時期は政策担当者17人中12人が2015年との見方を示した。ただ、FRBが利上げを検討する目安としている6.5%の基準に失業率が達する時期は2014年と予想されている。
この日のFOMC声明では、少なくとも失業率が6.5%を上回る水準にとどまるとともに、向こう1─2年のインフレ見通しが2.5%を超えず、長期インフレ期待が引き続き十分抑制されている限り、FF金利を異例の低水準に維持する方針をあらためて表明した。[ワシントン 18日 ロイター] -