フランス南部のニースなどで、イスラム教徒の女性のために全身を覆い隠す水着「ブルキニ」を公共のビーチで着用することが禁止され、フランスのみならず世界で議論を巻き起こしている。
ニースで7月14日の祝日「バスティーユ・デイ」に発生したテロ事件以降、ブルキニ禁止令は激しい議論を巻き起こした。賛成派は、ブルキニ姿だとすぐにイスラム教徒だとわかるから、彼女たちが嫌がらせを受けることを防ぐために禁止するのだと主張している。一方で反対派は、女性が自由に服装を選ぶ権利を奪うものだと非難する。
ニースでは、青いスカーフで頭を覆って長袖の服を着ていた女性が警官に取り囲まれ、脱ぐように強制されたとみられる画像がツイッター上に投稿された。ニース市当局は「警官の正当な職務遂行だ」と反論している。
今日の疑問:「公共の場で女性の服を脱がせるのに、何人の武装警官が必要なのか?」
ブルキニ禁止令に違反した場合、罰金を課されることもある。そんな中、企業経営者のラシド・ネカズ氏は違反切符を切られた女性に代わって罰金を払うことを申し出た。ネカズ氏は、「合法的に人権を擁護しているだけだ」と話す。
フランスでアルジェリア人の両親の元に生まれたネカズ氏は24日、ハフポストUS版の取材に「ニースなど26カ所のビーチでブルキニ禁止令が適用されて以来、すでに5人の女性の罰金を肩代わりした」と、語った。
公共の場でブルキニ着用を禁止するのは「あらゆる意味で民主主義と世界人権宣言に反しています」と、ネカズ氏は話した。「嘆かわしいことです」
ネカズ氏は、罰金の支払いを肩代わりするのは「法を尊重しつつ、無力化させる」ためだという。
「過熱する状況を沈静化させたいのです」と、ネカズ氏は話した。「罰金は払うしかありません。しかし彼女たちは苦しんでいます。そしてフランスの『ヴィヴ・ル・アンサンブル(調和して共に生きる)』の精神も苦しめられるのです」
彼はブルキニを禁止した自治体の長たちに、違反切符を切られた女性の代わりに自分が罰金を支払えるように、罰金は全て彼に直接請求するように要求した。
「罰金を追徴している全ての地方警察署と国家警察に連絡しましたが、誰も私に面会しませんでした」と、ネカズ氏は話した。
フランス、マルセイユの海岸でブルキニを着用する女性
フランス政府は禁止令を支持する姿勢を示しており、イスラム教の女性を守るために制定されたと主張している。マニュエル・バルス首相は、ブルキニが「女性の奴隷化」を助長するものだとまで述べた。
しかしネカズ氏は、政府がこの件を政治問題化し、国民世論を分裂させ次期大統領選で票を伸ばそうとしていると感じている。
「フランス大統領選まであと8カ月です。右派も左派も、イスラム教問題を選挙の主要な争点にしています。フランス国民の中で、論争を起こしたいのですよ」
「つい最近まで、誰もブルキニのことを問題にしてなかったと、彼は述べた。ほとんどの人はブルキニの存在自体すら知らなかったでしょう」
「全身が隠れるような服装をする人に罰則を課すかどうかという問題に、フランス人が関心を抱いているのは明らかです。でもブルキニを着たところで、顔が完全に隠れるわけじゃないでしょう」と、ネカズ氏は語った。
また、ネカズ氏は、法規制がイスラム教をターゲットにしていることを懸念している。
「イスラム教の女性とイスラム社会へのフランス警察の対応には問題があります。その狙いは、イスラム教の全面的禁止だと思います」
ニカブ(顔を部分的に隠す衣装)を着用したため課された120ユーロの罰金証を掲げるヒンド・アーマスさん(右)、ネカズ氏(左)は彼女が受け取った2通目の罰金証を手にしている
ネカズ氏がこういう見解を持つに至ったきっかけは、フランスのような国々がブルカやニカブを含む、顔を隠すようなベールを女性が公共の場で着用するのを禁止する決定を出した2010年にさかのぼる。
ネカズ氏は、ベールを着用した女性に課される罰金を肩代わりする目的で、100万ユーロの基金を設けた。これまでのところ、フランス、スイス、ベルギーで1165件の罰金を肩代わりし、合計20万ドルを超える罰金を支払った。ベルギーはその後、ブルカやニカブを着用するイスラム教の女性に罰金を課す制度を廃止した。
「念のために言っておきますが、自分は敬虔なイスラム教徒ではありません」。ネカズ氏本人は、ブルカやニカブの着用には賛成していない。「私は単に人権を守ろうとしているだけです」
ネカズ氏は、「フランスのイスラム教女性に対する法律論争を止めさせるために、国連の潘基文事務総長が介入するよう要請している」と語った。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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