昨年5月フランスでスーパーマーケットの賞味期限切れ食品の廃棄が法的に禁止されたが、今月5日から実施されることになった。廃棄されるはずだった食品はフードバンク(品質に問題がない食品を生活困窮者などに配給するシステム)などの援助機関に回され、必要とする人々に配られる。これによって、毎年数百万人に無料の食事を提供できるようになるという。
また、延べ床面積400平方メートルを超える店舗には、売れ残り食品の受け入れを行っている慈善団体との契約を2016年7月までに結ぶことが義務付けられ、これを行わなければ、最高7万5000ユーロ(約975万円)の罰金が科されることになった。人の食用に適さなくなった売れ残り食品については、家畜の餌や堆肥として転用しなければならない。こうした法律は世界初となる。
フランスでは、毎年約2200万トンの食料が廃棄されており、そのうち本来食べられるのに廃棄されている「食品ロス」は約710万トン。67%が一般家庭、15%がレストラン、11%が小売店で廃棄される。
この法律は署名サイトChange.org上のキャンペーンを受けて制定されたもので、約21万人分の署名が集まった。これに尽力した活動家達は、こうした措置がEUレベルで取られるように、同じ署名活動を欧州全土で立ち上げようとしている。
EUでは2020年までに食料廃棄量を半減
こうした動きはフランスだけではなく、EU全体で高まっている。EU内では年間総計9000万トン、1人平均180キロ廃棄している一方で、1600万人が定期的にフードバンクを利用している。2012年には欧州議会によって2025年までに食料廃棄量を半減するよう、EU各国に要請する決議が採択された。プロジェクト実行母体として「フュージョンズ」(FUSIONS "Food Use for Social Innovation by Optimising Waste Prevention Strategies")を設置、加盟各国の支部で食品関連団体、政府、NPO、研究機関などと連携し、モニタリングや具体的措置の策定を進めている。
日本は世界有数の食料廃棄国
国際連合食糧農業機関(FAO)の2011年の調査によると、全世界では、消費向けに生産された食料の3分の1にあたる年間約13億トンが廃棄されている。特に先進国において消費段階で発生する廃棄率が高く、その廃棄量(2億2200万トン)は、サハラ以南アフリカの食料純総生産量(2億3000万トン)に匹敵する。
一方、日本では年間約1700万トンの食料が廃棄されており、そのうち「食品ロス」は年間約500万〜800万トンにものぼる(平成22年度農林水産省調べ)。この年間約500万〜800万トンという量は、世界全体の食料援助量の約2倍で、日本のコメ収穫量約850万トン(2012年度)とほぼ同じである。また、一般家庭で廃棄される量(食品ロス)は200万〜400万トンで、約半数を占める。
日本は米国、フランスに次ぐ世界有数の食料廃棄国である(調査機関によって多少前後するが農林水産省の調べによると)。こうした現状に対し、日本でもフードバンクや形の悪い食材を安く提供する取り組みも行われているが、フードバンクの知名度は低く(2009年のアンケート調査だと7割以上が「知らなかった」)、今後さらなる政府による啓蒙や今回のような法律制定、個人の取り組みが期待される。
(2016年2月7日「Platnews」より転載)