日本にいる在留外国人数に関する法務省報道を受けて

日本における在留外国人割合の1.8%は「驚異的に少ない」と国際的には見られています。

日本の法務省入国管理局は先週3月17日(金)に「平成28年末現在における在留外国人数について(確定値)」を発表しました。

それによると、日本に中長期に在留または永住している外国人(外国籍を有する人)の数は238万2822人に上り、前年末に比べて15万633人の増加で、過去最高となったそうです。

同時に発表された統計資料を見て気が付いた点をいくつか述べてみたいと思います。

まず、総務省統計局によると平成29年1月1日現在の日本の総人口(概算値)は1億2686万人でした。

従って、昨年末時点での在留外国人が日本の総人口に占める割合はおおよそ1.8%と推定できます。この数字を他のOECD諸国と比べると面白いことが分かります。

少し古いデータですが2014年末時点で、OECD諸国に中長期に滞在している外国籍を有する人(いわゆる移民)が総人口に占める割合は、全OECD諸国平均で8.1%でした(最高はルクセンブルクの47.1%)。

世界における移民の数は増え続けていて、一般的にはOECD諸国などの先進国を目指す移民が多いため、2016年末時点では8.1%よりも高いことが予想されます。

そのような国際的な標準や、日本の経済規模そして急速に進み続ける少子高齢化に照らし合わせると、日本における在留外国人割合の1.8%は「驚異的に少ない」と国際的には見られています。

もちろん日本は島国ですし、北米諸国や豪州、ニュージーランドのようないわゆる「移民国家」でもありません。

他国との単純比較はできませんし、総人口に占める移民の割合が低いこと自体に一概に「良し悪し」の価値判断を加えることも不適切でしょう。

ただ日本にとっては「過去最高レベルの外国人の数」でも国際標準から見ると非常に少ないという統計上の事実は、頭の片隅に置いておいて損はないかもしれません。

次に、在留外国人の在留資格を見てみると、多い方から順に、永住者(約73万人)、特別永住者(約34万人)、留学(約28万人)、技能実習(約23万人)、定住者(約17万人)となっていて、特に留学については前年比12.4%の増加、技能実習については前年比18.7%の増加となっています。

留学生については「留学生30万人計画」という日本側の公的政策に則った増加ですし、技能実習は、少子高齢化や労働需給のミスマッチにより日本人の労働力が著しく不足している分野(農業、水産業、建設業、介護・看護等)に外国人の労働力が絶対不可欠である、といった日本側の切実な事情に基づく受け入れです。

要するに、永住や定住また日本人の配偶者などといった個人的な「身分」や事情に基づいて外国人の中長期在留者が増えているのではなく、日本側の事情―国益―に基づいて、日本政府が政策として能動的・積極的に外国人を受け入れているということが分かります。

その一方で気になることもあります。同時に発表された「在留資格別在留外国人数の推移」という表を見て見ると、「教授」や「研究」といった在留資格で日本に滞在している人の数が減っているのです。

彼らは正に日本政府が「高度人材」として日本に永住・定住してもらいたいと思っている人材です。

もし減った分が、永住や(平成27年に新設された)「高度専門職」または帰化という形で日本に残ってくれているのであれば問題ありませんが、単に他国に移住してしまったのであれば、日本の「高度人材受入政策」がうまくいっていないことの証左でしょう。

法務省発表の統計資料からだけでは実態は分かりませんが、注視していく必要がある傾向かもしれません。