賞味期限の近くなった食品などを格安で販売し、売り上げの一部を環境保護や途上国支援などに寄付する社会貢献型のショッピングサイト「KURADASHI.jp」が2月27日、開設された。目標は企業の食品廃棄を減らすこと。「社会貢献」を打ち出すことで、業界特有の事情に縛られて期限前の廃棄を余儀なくされる食品企業が商品提供をしやすくし、消費者にも寄付を促す狙いがある。
賞味期限の近づいたインスタント食品や清涼飲料、テレビショッピングで販売を終了した美容器具、化粧品など、27日現在で約100社から商品提供を受け、ケース単位で最大約90%割引販売する。たとえばコラーゲン飲料(30本入り)は定価4860円が1080円、カップ麺(24個)は定価4666円が2400円になる。
売り上げの3〜10%は災害支援や環境保護、途上国への食糧支援などの団体(27日現在で9団体)に寄付される。コラーゲン飲料の場合、販売価格1080円のうち50円が寄付になる。サイトでの累積利用金額に応じ、「植樹ならヒノキ○本分」「ワクチンなら○人分」といった「社会貢献度」もわかるようになっている。
関藤竜也さん
サイトを立ち上げた企業「グラウクス」(東京)代表取締役の関藤竜也さん(43)に聞いた。
−−どうしてこのサイトを作ろうと思い立ったのですか。
大手総合商社で世界の物流の生産管理に携わってきました。アパレル、鉄鋼、食品…余剰在庫は受注生産ではない商品の宿命ですので、世界的に膨大な余剰在庫や廃棄が生じます。それで地球は持つのかと疑問を感じました。大阪出身で、阪神大震災のときに被災地の支援に出向いて、惨状を目の当たりにしたことも影響しているのかもしれません。コンサルティング業に転身してからは、食品メーカーから「廃棄をどうにか減らせないか」という相談をよくいただいていました。
今はネットやソーシャルメディアが発達しました。消費者も東日本大震災以降、社会貢献に参加したいという意欲が強まっています。みんなが参加することで、世界が抱える課題を少しでも解決することもできるのではないか。そう考えたのがこのサイトを立ち上げたきっかけです。
−−賞味期限が近い商品とはいえ、最大9割引という価格は安すぎませんか。
十分、現実的です。背景には日本の食品製造業界が抱える特有の業界事情があります。
それは「3分の1ルール」と言われる「暗黙の了解」です。仮に賞味期限が6カ月の商品なら、スーパーやコンビニなど本来の小売店に「正規ルート」として卸されるのは、期限の3分の1となる製造後2カ月まで。賞味期限だけでなく、季節商品や限定販売など、様々な「期限」があります。残りはディスカウント店や「わけあり品」を販売するECサイトなどに、原価に近い価格で卸されます。
一方で「わけあり品」の流通量が増えると、正規の価格で買う消費者が減るから、商品のブランドイメージや市況を守りたいメーカーにとって好ましくない。こうして正規ルート以外への流通は限定的となり、少なくない量が廃棄されます。廃棄にかかるコストや、廃棄物や二酸化炭素の発生など環境への負荷も相当なものですが、「お金をかけて、地球を汚してでもやらざるをえない」わけです。
そこにフォーカスし、業界全体で食品ロスを削減することで「廃棄にかかるコスト」「廃棄物」「二酸化炭素の排出量」の削減につながり、結果、企業のCSRやESG(環境や社会課題の解決に配慮した企業ガバナンス)の取り組み、ブランドイメージを守ることにつながります。
これは食品業界だけの問題ではなく、製品を製造するメーカー全体の問題だと思いますので、「KURADASHI.jp」はあらゆるメーカーからどのような商品が提供されても掲載しやすいサイト構成にしています。
−−「まるか食品」の「ペヤングソース焼きそば」がソーシャルメディアで虫の混入を指摘されて生産中止を決めるなど、企業は食品の管理に神経質になっているように感じます。企業の協力は順調に進みますか。
非常に神経質になっています。賞味期限が近い商品は、社内販売や社員の家族向けなど、対象を限定したセールに回ることもありますが、ソーシャルメディアの発達で情報の拡散が止められなくなり、限界を抱えています。企業の担当者からは「だからこそ、社会的な活動にしていかないといけない」という声をよく聞きます。業界が安全にできる仕組みをつくることが急務なのです。
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