2月3日の節分の日に食べられる恵方巻き。
近年では変わり種も販売され、スーパーやコンビニなど各小売店の販売が加熱する中、売れ残った恵方巻きの大量廃棄が問題視されている。
1月11日には、農林水産省が小売業者の団体に対し、「恵方巻きのシーズンを控えた小売業への呼びかけ」として、「需要に見合った販売」を行うよう通知を出すに至った。
恵方巻きはもちろんのこと、「食品の大量廃棄」を現実的に解決するにはどうすれば良いのだろうか。
当事者である小売業者、テクノロジーの導入、新たに日本に根付きつつあるフードシェア、立場の異なる3者、それぞれの意見を聞いた。
①電子タグによる「個品管理」が鍵を握る
大手コンビニチェーンとして、当事者でもあるローソン。広報担当者に取材した。
現在進行形では、AIを活用した半自動発注システムを全店に導入しており、今まで勘で行われていた発注作業をデータ分析によって最適化しようとしている。
将来的な解決策としては、経済産業省とセブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズといったコンビニが目指す「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」が鍵を握るのではないかという。
今まで、商品1種類に1つ割り振られていたバーコードとは異なり、個別の商品ひとつひとつに通信接続ができる電子タグをつけようとしているのだ。このような「個品管理」により、消費期限に応じて自動的に価格を変更するなどの施策が考えられるという。
「『消費期限に近い物を買ったほうが安い』など、消費者にとってメリットがあるようにしたい」と担当者は語る。
導入に向けて越えなければならないハードルはあるが、既に実証実験も行われており、2025年に向けて動き始めている。
②「本当の需要」を、モバイルの事前注文などで可視化する
スマートフォンによる事前注文・事前決済サービスや、レジなどの店舗システムのデジタル化支援サービスを手がける株式会社Showcase Gigの新田剛史さんは「"実需"を把握するべき」と話す。
恵方巻きの販売は、近年イベントのようになっているが、「本当に需要があるか」という実需を、冷静に確認する必要があるというのだ。
実需を確認する方法のひとつとして、新田さんは「モバイルによる事前注文」を提案する。
現在の購入フローは「オフラインが中心になっている」と語る。
消費者はお店に行ってから、実際に物を見て何を買うかを決める。各店舗も、消費者の行動に合わせて、ポップ広告などオフラインの施策が中心になっている。
この行動をスマホなどのモバイル端末から店頭に来る前に「事前注文」に変えることで、お店に来る前に「何がどれほど売れるか」という実需がわかり、無駄がなくなるという訳だ。
また、恵方巻きなど一部の商品は既に事前注文が行われているが、電話やFAX、紙ベースが多く、全てをデータ化できていないのではないか、と指摘する。店頭での購入を完全に無くすことはできなくとも、「事前予約をデジタル化し、データを取得・分析すれば、実際のニーズも予測しやすくなるだろう」と話した。
③「消費者側の意識」を変えることが、最も重要
「根本的解決を追求すれば、教育に行き着くと思う」。
そう話すのは、フードシェアリング事業「TABETE」を運営する、株式会社コークッキングの取締役COO篠田沙織さんだ。TABETEは、閉店間際など、廃棄されそうな食事のある飲食店と、食事を求めている消費者とを繋ぐフードシェアリングサービスだ。
篠田さんは、フードロスを抜本的に改善するには、消費者側の意識が最も重要だという。
常に品揃えの良い状態を求めたり、形や色が少しでもおかしい野菜や果物は店頭に出ないなどの現状に対して、少々過剰ではないかと指摘。このような意識を改革しなければ、抜本的な解決には繋がらないと話した。
「根本的に意識を変えるには、教育の問題になると思う」としながらも、「我々は身近なところから啓蒙したいという思いでフードシェアリング事業に取り組んでいる」と事業への思いを語った。