マイケル・ムーア監督が「華氏119」で告発。フリント水質汚染、前知事がついに起訴へ

鉛やレジオネラ菌の影響で少なくとも12人が死亡。全米揺るがした問題をマイケル・ムーア監督が『華氏119』で告発していた。
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フリントの水質汚染問題に抗議する人々。手にしたカードには「水は人権」と書かれている(2016年2月19日)
Bill Pugliano via Getty Images

黒人が多く住む街・ミシガン州フリント市で、行政の決定によって引き起こされた水道水汚染が、住民に重大な健康被害をもたらしたフリント水質汚染問題。

この問題に関わった前ミシガン州知事のリック・スナイダー氏と、同知事時代の保健局長ニック・ライオン氏、その他2人の元職員が起訴される予定だとAP通信が報じた。

全米を揺るがし、マイケル・ムーア監督がドキュメンタリー映画『華氏119』で取り上げたことでも知られる水質汚染問題。

前知事が起訴される展開に、注目が集まっている。

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フリントの水質汚染問題の下院監視委員会および政府の改革委員会の公聴会に出席したスナイダー前知事(2016年3月17日)
Bill Clark via Getty Images

水道から出たのは、鉛に汚染された水だった

フリントの水質汚染問題が始まったのは2014年。

この年に共和党のスナイダー知事が指名したフリントのシティマネージャーが、コスト削減を目的に水道水の水源をヒューロン湖から近隣のフリント川に変えた。

しかしフリント川の水は、腐食した水道管からの溶け出した高濃度の鉛で汚染されていた。

住民はすぐに水道水の汚臭や変色、さらに脱毛や発疹などの健康被害を訴えたものの、フリントの担当者たちは水質は問題ないと主張。

また2015年に、子どもたちの血液から高濃度の鉛を発見した医師たちがフリント川の使用を中止するように求めた際も、州の担当者が「水は安全だ」と主張し続けていた。

水には鉛だけではなくレジオネラ菌も含まれており、多くの人が肺炎になって少なくとも12人が亡くなったとAP通信は伝える。

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血中の鉛濃度を調べるための採血を受けるジェイコブ・トーマスさんと、彼を支える母親のアレックス・テイラーさん(2016年2月4日)
The Washington Post via Getty Images

これは人種差別問題

フリントは、人口約10万人のほとんどが黒人だ。

そのためフリント水質汚染問題は、利益を追求した政策失敗だけではなく、環境面での人種差別や不平等の象徴としても批判されてきた。

ミシガン州人権委員会は2017年に、フリント水質汚染問題を「制度化された人種差別だ」と強く批判している。

この問題ではこれまで、住民に正しい情報を伝えなかったとしてライオン氏含む8人が起訴された。しかし検察は2019年、捜査をやり直すと発表した

AP通信は、今回の起訴を2人の匿名の関係者からの情報として伝えている。州検事局はすでに、被告弁護士に起訴の予定を伝えたという。

スナイダー氏の弁護士は12日、「刑事訴追は理不尽だ」と強く反発する声明を発表した。弁護士によると、検察は起訴内容を明らかにしていない。 

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支給されたペットボトルをカートに乗せて運ぶヴァージニア・ミシェルさん(左)と義理の娘のティアラ・ウィリアムズさん(2016年2月22日)
Tom Williams via Getty Images

フリント出身のドキュメンタリー監督であるムーア氏は、『華氏119』の中で、スナイダー知事を強く非難していた。

同氏は12日、「これは人種差別的な犯罪であり、彼らは人体への被害がわかった後に、それを隠そうとした。正義が勝ちますように!」とFacebookでコメントしている。