「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」、すなわち、政府の財政健全化の計画が明らかになりました。同時に成長戦略も決定されました。いわゆる「骨太の方針」では、2020年度の財政の黒字化(プライマリーバランス)目標を守っています。
しかし、その前提は、名目3%、実質2%の高い経済成長を見込むものです。それでも、実際には2020年度に9.5兆円の赤字になります。それを、さらなる高成長による税収増などでまかなうという提案です。
日本の実質成長率は1991年からの10年間平均1.2%、2001年からは同じく0.8%、2011年から足元まででは平均0.6%です。潜在成長率は、今、0.3%程度とみられています。実質2%の成長を前提にするのは無謀です。
海外でも甘い成長率を前提にした財政再建策はことごとく失敗しています。したがって、財政再建に成功した国は、前提となる成長率などは政府から独立した第三者機関に、保守的に見積もらせるようにしています。
労働力人口が減り、国民の純貯蓄がゼロになり、民間純投資もマイナスになろうとしている経済で実質2%成長が続くことは期待できません。仮に、アベノミクスが大成功した場合には2%成長が可能かもしれません。それでも9.5兆円は赤字なのです。さらに税収が伸びるような成長は困難です。
しかも、政府は、今は「四半世紀ぶりの良好な環境」なので、この環境を崩さないために、歳出削減の先送りを主張しています。歳出削減は2018年からスタートとのことですが、いかにも遅すぎます。「四半世紀ぶりの良好な環境」でも発生する財政赤字は構造的な赤字です。構造的な財政赤字は経済成長では改善できません。歳出削減と増税の組合せしか解答はないはずです。
たとえば年金です。平均寿命が60歳代の時にスタートした年金の受給者の平均寿命は今、男性81歳、女性86歳です。年金の支給開始年齢は、せめて欧米並みの70歳まで引上げなければ財政破たんは避けられません。私たち政治家は、もはやこのような「不都合な真実」から逃げてはいけません。
もちろん、成長も必要です。そのためには、本当に民間部門が創造力を発揮し、外国からの投資も増えるような規制緩和や人材育成などインフラ整備に知恵が必要です。政府の成長戦略は霞が関の官僚の作文で、旧態依然のターゲテイング・ポリシーです。これでは、「小さな親切、大きなお世話」で終わってしまいます。今こそ、保守的な経済成長を前提に、本当に「骨太な」議論をすべき時です。