来年度予算の概算要求が出そろった。
総額で102兆4000億円になる。
これを最終的には99兆6000億円まで切り詰めていかなければならない。
内閣府が新たに出した中長期の財政試算では、2015年度の名目成長率が2.7%から2.9%へ、2016年度の名目成長率は2.9%になっている。
2016年度は、これまで経済成長ケースでは3.3%、ベースラインケースでは1.6%と二通りに分かれていたが、来年度の見通しということで今回の試算では2.9%に一本化された。
2017年度以降は経済再生ケースで名目3.6%、ベースラインケースでは名目1.4%が2023年まで続くことになっている。
今回の試算では、現実の税収増を織り込んで、2020年度では1.4兆円の税収増を新たに試算に加えている。
さらに歳出面では、前回の試算で物価上昇率分で伸びるとした一般歳出のうち、人件費を過去のトレンドに引き直すなどして、2020年度で1.8兆円の歳出減を盛り込んでいる。
この歳入増と歳出減で、2020年度のプライマリーバランス赤字を前回試算の9.4兆円から6.2兆円まで小さくなるとしている。
この新しい中長期試算では来年度のプライマリーバランス対象経費は73.6兆円としている。
今年のプライマリーバランス対象経費が72.9兆円なので、来年度予算で歳出を増やすための枠は全部で7000億円。
しかし社会保障費の増加が5000億円と見込まれているので、実際に社会保障以外の予算増に反映できるのは2000億円しかない。
もちろん新国立競技場を建設するならば、毎年の国負担分が、毎年の歳出に組み込まれてくる。総額いくらになるんだっけ。
73.6兆円に国債費26兆円を加えると、一般会計の総歳出は99.6兆円になり、国債費がそのうち26%と4分の1を超える。
そして2020年度のプライマリーバランスの黒字化は必達しなければならないが、この試算では、それでも財政収支の対GDP比は、2018年以降、悪化する。
つまり2015年の名目長期金利は0.9%だが、経済再生ケースでは2018年には2.7%、2020年には3.9%、2023年には4.5%へと上昇していくと推計されている。
今回の中長期試算の最大の問題点は、公債等残高対GDP比率が前回と同じく2023年までしか示されていないことだ。
前回の試算後、自民党の行革推進本部で機械的に試算してみると経済再生ケースでも2024年からこの比率が悪化していく。
前回の試算後に、行革本部では、2023年までの数値しか示さないのは極めて恣意的で、問題が多いと指摘したが、今回も都合が悪い数値を隠している。
やはり、独立した推計機関の設置が必要だし、それも急いでやらなければならない。参議院で進められている議論をぜひ、急いで詰めていただきたい。
(2015年9月2日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)