フィアットから発表された「124スパイダー エラボラツォーネ アバルト」をニューヨーク国際オートショーで実際に見て、基本的にこのコンバーチブルは、ベースとなったマツダ「MX-5ミアータ」(日本名:ロードスター)でいえば、スポーツ性能を引き上げた「MX-5 クラブ」トリムのフィアット・バージョンのような物であることが分かってきた。
アバルトの名は、"小さなエンジンで大きなパフォーマンスを発揮する"と同義なのであるが、それは欧州仕様の「アバルト 124スパイダー」のことであり、米国市場にもアバルトの名に相応しいエンジンの出力を向上させたモデルが必要だと思った。
フェンダーにサソリのバッジが付くにもかかわらず、このモデルの最高出力は160hp、最大トルクは25.4kgmと、米国仕様のスタンダードな「124スパイダー」と同等だ。比較してみると、欧州仕様のアバルトは1.4リッター直列4気筒マルチエア・ターボ・エンジンが170hpを発揮する。どちらの地域でもトランスミッションは6速マニュアルか6速オートマチックから選べ、機械式リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを介して後輪を駆動する。
もちろん、エンジン以外の点ではエラボラツォーネ アバルトも運動性能を高めるためのチューンが施されている。ビルシュタイン製ダンパーを採用した固めのサスペンションを装備し、スポーツ・モードのボタンを押せばドライバーの求めに応じてレスポンスが向上する。4ピストンのブレンボ製モノブロック・キャリパーはオプションとなるが、欧州仕様アバルトに見られる黒いボンネットのようなレトロな雰囲気は、米国仕様でも健在だ。
残念なことに、伝説的なパフォーマンスを思わせるアバルトの名前は、このエラボラツォーネ アバルトについていえばプラスよりもむしろマイナスの作用を及ぼしている。マツダのMX-5では、リミテッド・スリップ・ディファレンシャル、ビルシュタイン製ダンパー、ブレンボ製ブレーキなど、ほとんど同じアップグレードを施されたモデルが通常のラインアップとして設定されている。だから受け入れられるのだ。
マツダはこれにレーシング・マニファクチュアのブランド名を付けたりしていない。対照的に、この124スパイダーはサソリのバッジが付いたことで、真のアバルトとして受け入れ難い気持ちを抱かせてしまう。ちなみに欧州仕様のアバルト 124スパイダーはボンネットにもアバルトのエンブレムが装着されているが、米国仕様のノーズに付くエンブレムはフィアットのままである。
By Chris Bruce
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
(2016年3月28日 Autoblog日本版「【NYオートショー2016】フィアットの「124スパイダー エラボラツォーネ アバルト」をオートショー会場で確認!」より転載)
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