メディアで働く女性記者たちがネットワーク結成。前財務次官のセクハラ問題をきっかけに

「私たちが声なき声の当事者でもあった。ありとあらゆる人権侵害をなくすときだと考えている」
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会見する林美子さん(右)と松元千枝さん=厚生労働省
MASAKO KINKOZAN/HUFFPOST JAPAN

福田淳一・前財務次官のセクシュアルハラスメント問題をきっかけに、テレビ、新聞、ネットメディアなどで働く女性ジャーナリストたちがネットワークを作った。

「メディアで働く女性ネットワーク」が5月15日、厚生労働省で会見を開いた。代表世話人の林美子さんによると、参加者は15日時点で86人。設立の理由について、林さんは以下のように述べた。

「財務次官の問題は、現場で働く女性記者たちに大きな衝撃を与えました。多くの女性記者は、取材の中でセクハラを受けてきた。勇気を持ってテレビ朝日の記者が告白したが、でもセクハラを本当になくそうという動きにつながらない。それに危機感を持って、新聞、テレビ、出版といった分野の違いを超えて集まった仲間と5月1日、メディアで働く女性ネットワークを設立した」

「女性記者は記者全体の2割。新聞社の一部では、新入社員の4~5割が女性になったがまだまだ。政治家も1〜2割しかいない。ジェンダーギャップ指数では114位という恥ずかしい結果。法制度は男女平等だが、性差別的な権力構造が根強い。このような社会でジャーナリズムに携わる女性は、尊厳が守られない。これでは男性優位の社会を変え、女性への差別や人権侵害をなくすことは望めない」

「残念ながら、取材先や所属する組織内でセクハラはまだ存在している。これまで、ジャーナリズムに携わる女性たちが、取材先の関係が壊れるのを恐れて声を上げてこられなかった。私たちが声なき声の当事者でもあった。今回の女性記者の告発に勇気づけられるとともに、ありとあらゆる人権侵害をなくすときだと考えている」

「ここにジャーナリズムに携わる女性の職能集団として、ネットワークを立ち上げた。メディアで働く女性がそれぞれの能力を最大限に発揮して、政治や経済、文化でなどあらゆる分野で活発に報じていくことで、多様な視点を社会に提供し、女性だけでなく誰もが生きやすい社会を作ることにつながる。メディアを変えることで、社会を変えていく。発信するメディア、働き方の違い、所属組織の違いを乗り越え、社会をよりよくするために働きかけていく」

ネットワークは15日、テレビ朝日、麻生太郎財務相、安倍首相、野田聖子女性活躍相にそれぞれ要請書、要望書を提出した。

麻生財務相には、セクハラの被害者に真摯に謝罪し、被害者に度重なる発言の撤回と謝罪を求めるとともに、福田前次官以外のセクハラ行動の調査継続を求めた。また、女性記者の排除を防ぐ具体策も求めている。

安倍首相に対しては、麻生財務相に謝罪や、発言の撤回・謝罪を行うよう求めるとともに、今回の事件について、自身の見解の表明を求めている。

野田女性活躍相には、財務省の調査の適切性について内閣府による調査▽セクハラをなくすための法整備――などを求めた。