渡辺直美やイモト、女芸人が次々に女優として起用されるのはなぜ?

演技力を認められたコメディエンヌたち、増えています。
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TAIPEI, TAIWAN - OCTOBER 18: Japanese actress, comedian, and fashion designer Naomi Watanabe attends Owndays activity on October 18, 2016 in Taipei, Taiwan of China. (Photo by VCG/VCG via Getty Images)
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渡辺直美、ブルゾン、イモト…女芸人の女優起用多発の裏側は?

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 人気の女性芸人・渡辺直美が、7月スタートの連続ドラマ『カンナさーん!』(毎週火曜 後10時~ TBS系)で、ゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演をすることが発表された。昨今を見ると、現在放送中の『人は見かけが100%』(フジテレビ系)には、現在ブレイク中のブルゾンちえみが、また人気連ドラ『家売るオンナ』(日本テレビ系)のスペシャル版(5月26日放送)には、イモトアヤコが前作から連投を果たしている。ここに来て女芸人が“女優”として起用されることが頻繁に見受けられるが、その裏側には何があるのだろうか?

■ 泉ピン子をはじめ、演技力も認められたコメディエンヌたち

 芸人がドラマや映画に出演するのはもはや当たり前になっている。今や世界的俳優ともなっているビートたけしや、『男女7人夏物語』(86年)などで一世を風靡した明石家さんま。最近に目を向けても、嵐・松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』(16年)に出演したラーメンズ・片桐仁のほか、浜田雅功や板尾創路、田中直樹、宮迫博之、原田泰造、塚地武雅、児嶋一哉、徳井義実と挙げればキリがない。

 さらに昨今は女芸人の女優起用も増えており、朝ドラ『あさが来た』(16年)の友近をはじめ、『梅ちゃん先生』(12年)の白鳥久美子、馬場園梓、青木さやか、山崎静代、近藤春菜、オカリナなどもドラマに出演し、“様々な意味で”ネットを騒がせている。

 この流れの元祖的存在として、まず名前が挙がるのが泉ピン子だろう。泉は三門マリ子という芸名で活躍していた歌謡漫談家で、現在は名女優として不動の地位を確立。ほか『第18回ファンタジア国際映画賞最優秀女優賞』を受賞した大島美幸、映画『フラガール』(06年)でアカデミー賞新人俳優賞に選ばれた山崎静代、名脚本家・中園ミホに絶賛された近藤春菜、舞台や映画でも活躍している鳥居みゆきも演技の評価は高い。

■ イモトアヤコから見る、女芸人が女優として成功する理由

 女芸人が女優として成功するには何が必要なのか。これについて、現場主義のメディア研究家・衣輪晋一氏は、「まずは演技力、それと視聴者や現場から愛されているかどうか。あとはドラマになじめるかどうか…芸人特有の“前に出る”ポテンシャルを抑える自制心も重要」と三要素を挙げた。

 「イモトさんは分かりやすい例。彼女は青木さやかさんに憧れて芸能界入りした方で、女性からも嫌われず、幅広い年代に愛されています。また『家売る~』では、ドラマへのなじみ具合に視聴者からも絶賛の声が。制作側で言えば泉ピン子さんも、体を張った芸人活動をする彼女を気にされていたそう。『99年の愛~JAPANESE AMERICANS』(TBS系)で、泉さんの若い頃を演じられたのも、泉さんの鶴の一声があったからだとか。三谷幸喜さんの舞台で共演した竹内結子さん、草刈正雄さんなど、仕事で関わった多くの人から愛されているのもポイントでしょう」(衣輪氏)

 ほか挙げられるのは、普段のキャラとのギャップ。女優・イモトの“脱・太眉”をはじめ、ブルゾンは、濃いメイクからナチュラルメイクに変えて視聴者に新鮮な一面を見せた。コントでキャラになりきる力が演技力に繋がることもある(友近など)。

 また『カンナさーん!』は、渡辺の今回の役柄がデザイナーであり、インスタ女王としてファッションブランドをディレクションしている彼女と設定がかぶっている。そして原作コミックのキャラのルックスは渡辺にそっくり。渡辺も「私のことを書いているのかな!?」と驚くほどそっくりであったと話しており、ここにも期待はかかる。

■ 女芸人を“飛び道具”的に女優として起用、話題性も重要な要素の一つ

 「もちろん、渡辺さんら女芸人の女優起用を、すべての視聴者が好意的に見ているわけではありません。ドラマや映画というジャンルにおいて、女芸人が“門外漢”のイメージは視聴者に根強くあります。またトピックスとしての話題性に頼らざるをえないドラマ制作現場の内情も、今の視聴者には透けて見えている。ですが、良くも悪くも話題になることによって、視聴者はその作品の存在を知れる。プロデューサーに話を伺っても『作っても目に触れなければ意味がない。ドラマ制作と広報は等価に考える』と話す方が少なからずおり、この戦略は視聴率低迷の昨今、当たり前の企業努力なのです」(衣輪氏)

 同氏はタモリが『笑っていいとも!』で名を馳せる以前、NHKドラマ『詐欺師』(80年)に俳優として出演し、ベッドシーンで話題になったことを挙げ、「テレビドラマは“テレビショー”。“ショー”なので、そもそもが、話題性のある人やものを視聴者に送り届けるジャンル。原点に立ち返って考えるなら、話題の女芸人を飛び道具的に女優として出演させるのも、特に奇をてらった流れではない。要は面白ければ何も問題がない」と自説を語る。

 渡辺直美はこの新たなチャレンジでテレビ界に爪痕を残すことができるのか。多様性と話題性、さらに“面白さ”も兼ね備えたテレビドラマが今後、もっと生まれてくることに期待したい。

(文:中野ナガ)

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