前回のエントリーから4ヶ月。
生活は落ち着くことなく、慌ただしい日々を過ごしている。
日本ではそろそろ肌寒さが増して来た頃だろうか。
この間に僕の身にはさらに色々な事があった。
仕事は慣れてきたが、責任者としての立場は辛いことも多い。仕事、マネジメントの難しさを日々感じつつ、周りの方に助けられ、なんとか生きながらえている今日この頃。
プライベートでは、遠距離恋愛となっていた彼女と別れるなど、文字通り失う物が何もなくなってしまった。が、総じて前向きに充実して過ごしている。
さて、区切りとして感じたことを前回に続き纏めてみた。今回も僕自身の独断と偏見で書いているのであしからず。
1.アメリカは圧倒的な競争社会だ
想像しやすいことでもあるが、アメリカではあらゆるものが強い競争原理の中で動いている。日本でも当然そうだが、アメリカはその結果があまりに顕著だ。
トランプとヒラリーの闘争などを間近で見て、この4ヶ月で改めて強く感じた。
勝つこと、結果が美徳で価値があるという風潮が多くの場面で見受けられる。
政治競争や企業競争もそうだが、個人の生活レベルにおいても「良い学校に行く、良い職を手に入れる、良いパートナーを見つける」などすべてが強い競争環境にあるように思う。
特に親の教育に対する熱は本当にすごい。子どもの教育は学校や生活環境が大きな影響を与えると思われるが、「子どもの学校は高校までは住んでいるエリアによって決まる」と言っても過言でなく、子どもの教育のために良いエリアに住もうとする人が本当に多い。
「良い学校があるエリアは地価が高い」か「地価が高いエリアは良い学校がある」か、卵と鶏の関係のようであるが、教育のためにはとにかく親は必死だ。
(無論、学校に入ってからも、競争は続く。生徒の成績を親がインターネットで定期的に確認できる仕組みがあったり、課外活動や習い事の送迎など、親が常日頃子どもに関与することは多い。)
アメリカの競争の激しさは、そこには「失敗したら、理想とする人生を手に入れられなくなる」という緊張感があるためでは、と個人的には思う。
チャンスを逃したら極端な話、安定した生活が送れなくなるリスクだってある。日本の様に生活保護などの福祉で助けてくれるセーフティーネットがさほど充実していないため、ホームレスになってしまう可能性すらある。
僕もアメリカに来てからは、自分から取りに行かなければ、という気持ちになった。気持ちが折れても、失敗してもそれでも生きていかなければいけない。
日本では競争に敗れた場合、どこかにその敗れた事実を一つの美談として語る風潮がどことなくある気がする。悲劇のヒロインというか、頑張ったがだめだった、学ぶことは多くあった、みたいな。が、残念ながらアメリカでは敗北はクールだとは思われない模様。
2.草食系男子じゃ生きられない
写真は完全にイメージ(笑)。僕はどちらかというと、というか明らかに草食系男子だった。だが、残念なことにアメリカでは草食系男子であることに全く価値はないと思われる。。
アメリカではナンパが当たり前だ。というよりも、男性から声を掛ける出会いが一般的で、カップルの話を聞くと「出会った場所は空港だった」みたいなのがよくある気がする。パーティとかでも男性からガンガン声を掛ける。みんなアグレッシブすぎだろ!
「あの時、彼が声を掛けてくれたから」みたいにむしろ後日美談にすらなっている印象を受ける。
逆に日本でよくある「友達の紹介で」とかはあまり聞かない。
要するに、受動的なスタイルの恋愛は一般的でなく、狙った子に対して男性から猛烈にアプローチする超積極的なスタイルが中心だ。
どんな人がモテるかということを20-30代アメリカ女子に(わりかし真面目に)聞いてみたが、出てくるワードは「ユーモア」と「知性」と多かった。
加えておそらく、前提として「礼儀や思いやりがあり、スポーツや何かの趣味など話題になるものがあること」が大事だと思う。(というか、これって多分万国共通だ。)
男性の外見に関していうと、「顔がイケメン」とかそういうことよりも「体型を含んだ見た目が大事」だ。
体型という意味だと、残念ながら「細身で華奢な中性男子」みたいなのは間違いなくモテない。
筋肉がついてがっちりしていて、男気がある、例えるなら「ドンキーコング」みたいな人が美女を連れて歩いてる姿をよく見る。
海外に行くとみんなやたら筋トレに目覚めるが、なるほど、僕も週3日でジムに行くようになった。(あくまで健康のため健康のため。。)
3.「組織を変えたい」は日本流?
半年強という大して長くない経験であるが、いくつかの企業と共に仕事する過程、またこちらで出会った多くの人と話をしている過程で、ひとつ気づいたことがある。
あくまで僕が見た限りだが、アメリカ企業では日本の大企業でよくある「職場改善」とか「会社を変えよう」みたいな考えがあまり見られないということだ。これは悪い意味ではない。
日本では組織に新しい風を吹かせよう、改善しようとして、職場で様々な取り組みを持ち掛けてくれる人がいる。
アメリカでは従業員が働く目的、ジョブディスクリプション(仕事の範囲)が細かく定められ、明確になっており、自分の仕事でない範囲は基本的に、というかまったくやらない。(頼んでもやってくれないし、そもそも頼んじゃダメ)
さらに評価が不当だと考えたり、自分が好ましく思わない環境と判断すると、自らの意志で去る。(転職の障壁は日本よりずっと低い)
これは「他者を変えようとしない」考えが前提にあって、根底に「合理主義」があると僕は勝手に考えている。
同調しない人を無理やり変えるというのは、かなりエネルギーがいると思うのだが、無理にそういったことをしていないという感じ。
日本の会社では有難いことに「こうした方がいい」と教育してくれる人(大抵、いい人)が多い。
つまり、「他者への干渉」がある程度のレベルで(時にかなりのレベルで)存在しているが、アメリカ文化は合わない人に無理やりやらせたり、変えようとはあまりしていない気がする。
ずっとシビアで、単に "You got fired (お前はクビだ)"とするだけだ。
非合理的でコストの大きい選択を無意識にとっていないことなのかもしれないが、やはり日本と比べるとその点はドライだ。(もちろん一概には言えないけど)
4.アメリカ人は自分で決断する
アメリカの文化として「自分の人生を自分で決断して生きる」という思いをみんな強く持っていることが分かってきた。
「アメリカ人は決断が早い」などと言われるが、早さ云々以前に「決断を自分でしている」ことがミソだと思う。
キャリアや生き方もそうだが、日常の一つひとつの決断を自分でしっかりとしている。
(写真はトランプ氏の大統領当選後の首都ワシントンDCで見かけたデモを起こした学生である。)
「やりたい事がわからない、、」みたいに、くよくよ悩むなら辞めて次の仕事をやればいいし、職場の上司からパワハラ受けたら訴えればいい、といった感じで、不要な我慢をする文化があまりない様に思う。それは「自分の人生を自分で責任持って選択している」ことに他ならないと思う。
僕は日本にいた頃、自分の意志で決断をしないこともあったが、こちらに来てから公私ともに毎日が決断の連続であると実感している。というのも、自分で思いを持たないとやっていけない国なのだ。
自らで切り開いていかなければならない厳しさはあるが、 自分自身で決断するということは、押し並べて自分の良さ・才能を活かして生きる選択を取るわけで、結果的に良いんじゃないかと思う。
スティーブジョブズのスピーチにも多分あったけれど、合わない仕事でなく、自分が情熱を持ってうまくできることを探し続けるべきだとも思う。多分、人間関係も同じなんじゃないかな。
5.西海岸はややLazyだ
アメリカと言えど、東海岸と西海岸でまるっきり違う。
僕は西海岸のロサンゼルスで働いているが、こちらは年中晴れてて暖かいし、ビーチも綺麗でゆったりとしたところだ。子育てには最高だが、働くにはあまりよい環境でないと言う人もわりといる。
天候は思った以上に人の生活に影響を与えるようで、西海岸の人は総じて楽観的でLazyだと言われることがある。(もちろんすべてに当てはまるわけではないのであしからず)
確かに気候が良いので、サーフィンやゴルフを熱心にやっていたり、プライベートに重きを置く人も多いようだ。
僕も仕事でトラブルが続いたりした時に、晴れた空や海を見ると「まあ、そんなこともあるか」と開き直れる。
対して東海岸のニューヨークなどは圧倒的に雰囲気が違う。街行く人の歩く速度も全然違うし(ニューヨーカーはやはり速い)、ファッションもおしゃれだ。ある種、東京に似た感じがある。
個人的には、ニューヨークの人の方が情熱的であるような気もしている。
さらにシカゴやヒューストンなど全米各都市ではっきりとした都市の特色がある。日本のようにみんな東京に出てくるといった絶対的都市が一つあるわけでなく、いくつかの選択肢がアメリカ内にあるから面白い。
6.チャンスはまじで平等に、そして無限大にある
どんな不恰好でも、チャンスは至るところに転がっている以上、行動し続ければアメリカは勝てる環境にあると思う。
このチャンスが万人にある、というのが世界中からアメリカに人が集まってくる最大の理由だと感じる。(そして多くの人が一度アメリカに来ると長くいたいと考えるようだ)
大学の飛び級も学力があれば可能で(15歳程度でも大学を卒業している人もいる)、学費はめちゃめちゃ高い(4年間で寮の費用など諸々含めると2,000万円くらいかかるところもあると聞く)が、トップスクールのエンジニアなど優秀な学生であれば、新卒やインターン時から年間1,000万円を越す初任給で就職できたりする。日本では考えられないことだ。
本当にあらゆることにおいて年齢はほぼ関係ない。仕事もスポーツも芸術も学力も、実力があればどんどん上に進むことができる。残念ながら、年齢が高いというだけではリスペクトされる理由にはならない。
能力とやる気がある人にとっては最良の環境であるには間違いない。この仕組みが限界を設けさせず、世代を超えて競争させる仕組みになっているのだと思う。
(個人的にはスポーツも仕事もなんでもそうだけど、アメリカがトップリーグのものであれば、若ければ若いほど早くアメリカに来た方が良いのでは、と思う。)
7.脱日本したいならアメリカには来ない方がいい
僕個人の感覚では、アメリカで働くのは相当な覚悟がいるし、一般的に知られている以上に障壁は高い。
物価も高く、生活するのに十分なお金が必要だし、なによりビザの取得が圧倒的に難しい。
現地の大学卒業後などに取得できる1年働くことができるOPT、インターンシップとして短期間(1-1.5年)働くことが出来るJビザ、高度専門職のHビザ、投資家用のEビザなどがあるが、書類を大量に準備する必要があり、費用も結構かかり、さらにスポンサーがいなければ通例取れない。
トランプ政権となり、日本に限らず、アメリカ国外からの受け入れはより厳しくなることが予想されている。
そして前述の通り、競争の激しい国なので、日々相当な努力が求められる。生活は個人次第で充実させることができると思うが、総じて日本以上に生きることに厳しい国だとは思う。
なので、日本が嫌で逃げたいなら、アメリカは適している場所ではないと思う。
(留学するなら良いかもしれないけど、語学留学であれば、卒業後にアメリカで働かないのであれば他の国で学んだ方がいいと思う。)
憧れだけではどうにもならず、タフさが求められる。日本から駐在で来た部長・役員レベルの人でも、うまくいってる人は、英語だったりアメリカ文化に合わせるために相当に努力している。
それでもやる気さえあればマッチする国だとは思う。いずれにしても目的と思いが大事と思われる。
8.「運命を自分で変える」的な精神が必要かもしれない
アメリカで生き抜く人のバイタリティは本当にすごい。高い次元で事を成し遂げ、成功している人を見ると、相当な努力をしているし、フィジカル面も強いが何より精神面が圧倒的に強い。
ちょっとやそっとのことじゃ折れない、へこたれない強い気持ちを持っている。
アメリカに来て7ヶ月、正直仕事は相当辛かった。残念ながら自分がいけてなかったせいでもあるが、どうしようもないやるせないこともいっぱい起きた。
そんな中で学んだことは、本当にもうどうしようもない状況に立った時、それでも活路を見出すことが大事だということだ。どんな状況でも逃げず、諦めないこと。
不運に苛まれても、必ず乗り越える活路はある。それが仮に自分の悪い運命であったとしても、自分の力でなんとかできると信じるのが、アメリカ人のスピリットであるように思う。
あの有名なマイケルジョーダンの言葉を紹介したい。
OUT OF MY WAY. YOUR FATE.I'M GOING THROUGH
(運命よ、そこをどけ。俺が通る。)
なんとも力強い言葉だが、「Do It Yourself(DIY)」という言葉もあるように、「自らの手で解決できる」というマインドがアメリカ人に根付いているように思う。
9.日本のホスピタリティは最高だが、生産性は最低だ
これは在米経験もある、元衆議院議員で現シンガポール国立大学教授の田村耕太郎氏が先日、Facebookで呟いていたことだ。
どういうことかというと、ニューヨークの高級レストランやホテルを訪れると、日本の同クラスのホテルやレストランと比較にならないほどサービスの品質が悪い。しかし価格はより高い。
一見するとおかしな話だが、サービスは悪くても、より多くのお金を回収でき、予約でいっぱいになって売れるということは、日本よりも遥かに生産性が高い、というもの。
それでも人が集まる土地のパワーかもしれないが、「日本は過剰なサービスを提供するから生産性が低い」とも言えるかもしれない。
これはすごく同意である。海外で暮らしていると「これでこんなにお金取るの?日本だったらもっとちゃんとしてて安く、、」と驚くことも多い。でも主として期待することはやってもらっての対価なので、納得せざるを得ない。
そこでふと考えたのだが、日本は明らかにボラれているくらい、安く対価を提供している業種(特にサービス業)が多いんじゃないだろうか・・。
特に日本の飲食店で提供される食べ物のクオリティ・価格、接客は神レベルだ。あんなに美味しい牛丼を350円とかで食べれるとか、どう考えても最強だ。
そして、あえて触れたいのがIT業界。例えば一流大学を卒業した新卒エンジニアがいるとして、初任給はアメリカ(1,000万円とする)と日本(500万円とする)で雲泥の差があると思う。
僕はITのバックグラウンドがあるので多少なり思うことがあるが、能力的には両国のトップ大学のエンジニアを比べてみても、そんなに大きな技術の違いはないはずだ。あるとしたら英語を使えるか、アメリカ式のプロジェクトの回し方・仕事の仕方を理解しているかどうか、くらいだろう。
それでも新卒時だけでこれほど給料に違いが出る。日本のホスピタリティ、能力は素晴らしいが、海外に出て見るとこんな安価でいいのか、と思ってしまう。(完全に余計なお世話だが・・)
10.日本人の思いやりは世界一だ
海外に単身で来ていると、ある種自分が "日本代表"とならざるを得ない場面に何度か遭遇する。これは留学経験者や海外旅行が好きな人は経験があると思う。
何気ない会話をしている場合であったり、プロジェクトを組む際に、自分だけが日本人で、日本の考えややり方はどうなのか、と問われることがある場合だ。
よく言われることだが、その際に「もっと日本のことを知っておくべきであった」という反省であったり、「(英語力云々以前に)教養や文化を身につけておくべきであった」と思うことがある。
相手は一個人として自分を見る以前に、「日本人」としての意見とみなすからだ。
そんな時なぜか恥ずかしいというより、なんとなく申し訳なく感じてしまう。その話し合いにいた相手というより、純粋に他の日本人に対して申し訳なくなる。
自分がその瞬間だけでも日本代表のような状況にあるから、勝手に責任感を感じてしまっているということかもしれない。いろいろと聞いてみたが、意外と海外にいる日本の方で同じように言う人はそれなりにいた。
海外に出ると、これまで意識しなかった日本人としてのアイデンティティを強く意識する。(海外に出て、日本がより好きになったという人が多いのはこのためだと思う。)大きく言ってしまえば、これは帰属意識なのかもしれないし、やはり故郷への愛着とも言えるかもしれない。
そんな中で日本人に対して僕個人も思うし、アメリカを始めとする他国出身の人からよく聞くこと。
礼儀正しいとか、謙虚とか、シャイとか色々聞くけど、やはり「日本人、ここがいいね」と一番言われる点は、「相手への思いやり」だと思う。
仕事も生活も、困っている人がいたらほっておけないとか、自分だけうまくいくのは申し訳ない(人前でうまくいったことを言いづらい)という日本人でありがちな慎ましい風潮は、偏に相手への思いやりがあるからなんじゃないだろうか。
僕自身、これまで本当に多くの人に助けられてばかりの人生であるが、アメリカに来てからも多くの日本の方に助けられた。
辛い時、なぜこんなに自分のことを助けてくれるのか、アメリカでもそんな人たちに出会うことができた。
東日本大震災時の日本全国の団結力、助け合いの姿勢も世界中が感心していたというが、相手に対する思いやりは日本人は世界一だ。多分、これを活かせば日本人は世界で活躍できるはず。
それがこの7ヶ月における個人的「日本再発見」かもしれない。
以上10点。今回も長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。
(Just Simple「28歳、アメリカに7ヶ月駐在して感じる10のこと」より転載)