ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題、FBIは訴追見送り「極めて軽率だが違法ではない」

「クリントン氏らは非常に慎重に扱うべき極秘情報の取り扱いを極めて軽率に行っていた証拠がある」
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Democratic presidential candidate Hillary Clinton arrives to address the The National Education Association (NEA) Representative Assembly in Washington, Tuesday, July 5, 2016. (AP Photo/Molly Riley)
ASSOCIATED PRESS

アメリカ連邦捜査局(FBI)のジェームス・コミー長官は7月5日、アメリカ大統領選で民主党の指名候補を確実にしているヒラリー・クリントン前国務長官が公務で私用のメールアドレスやメールサーバを使っていた問題についての捜査報告をまとめ、司法省にクリントン氏を刑事訴追する勧告は行わないと発表した。

「クリントン氏らは非常に慎重に扱うべき極秘情報の取り扱いを極めて軽率に行っていた証拠がある」と、コミー長官は述べた。しかし、司法省に対して「本件の場合、違法とするどの告発も適切ではない」と勧告することになると述べた。

クリントン氏の私用メール問題をめぐっては、2015年3月、国務長官在任中に公務で使用していたメールアドレスが国務省のアカウント「.gov」ではなく、クリントン氏が自宅でサーバを運用していた個人用アカウント「clintonemail.com」を使用していたことが発覚し、セキュリティ上の懸念が指摘されていた。

コミー長官は、クリントン氏が2014年末に国務省に提出したおよそ5万5000ページに及ぶ電子メールをFBIが調査したと話した。もし、メールの内容に機密情報が含まれているようであれば、FBIはその情報の「『所有者』だった可能性のある」あらゆる政府機関に相談し、その情報がやり取りされた当時機密扱いされていたかどうか、あるいは、現在、その情報が機密扱いなのかかどうかを特定した。

FBIは、52件のメールのスレッドのうち、110通のメールが、機密扱いの情報が含まれていたことを発見した。「それらのやり取りのうち、8件は、送信された当時、最高機密だった情報を含んでいた。36件のスレッドは、当時の機密情報を含んでいた。そして、8件は、部外秘の情報を含んでいた。これは、機密情報の分類の中で最も低いレベルのものだ」と、コミー長官は述べた。

彼はまた、「悪意のある関係者たちが、クリントン長官の私用メールアカウントにアクセスできた可能性」はあったと述べた。

コミー長官は、捜査の初期段階では単一のサーバを対象にしていたが、「事態はそれよりももっと複雑だったと判明した」ことに言及した。

「クリントン長官は、国務省での4年間の任期中に複数の異なるサーバと数多くのモバイル機器を使用し、個人ドメインでメールをチェックし、送信していた」と、コミー長官は述べた。

複数のサーバなどから得られた情報をつなぎ合わせることは「骨の折れる仕事で、数千時間の労力が必要だった」。

FBIは国務省の安全保障が「政府の機密情報に対する注意が総じて不十分」だった証拠を見つけたが、それが捜査の焦点ではなかったとしている。

極秘情報の「不注意」な扱いの例を挙げる上で、コミー長官はメールのやり取りを指摘した。それらのやり取りは、送信または受信された時点で、「最高機密/特殊アクセスプログラムレベル」とみなされていた情報を含んでいた。

「クリントン長官の立場にいた、あるいは、彼女と共に責任を持っていた政府職員たちも、機密扱いされていないシステムを使ってメールをやり取りするべきではないと理解しておかなければいけなかった」と、コミー長官は述べた。

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2015年10月22日、下院特別委員会の公聴会でメール問題について質疑を受けたクリントン氏

コミー長官は、FBIが事実に基づいて、刑事訴追を行う根拠となる過去の事例を見つけることはできなかったと話した。FBIは機密情報または大量の資料が意図的かつ故意に間違った取り扱いがされていたことはなかったと判断した。また、国家への背信行為、司法妨害の意図もなかったとしている。

「誤解のないように言うと、これは、同じような状況で私用メールを使用した人物が何の責任を取ることにもならない、というわけではい」と、コミー長官は述べた。「むしろこうした人々は、安全保障上または行政上の処罰を受けることになる。しかし、それは私たちがいま決定することではない」

コミー長官は、FBIにとって重要だったのは事実だけであり、「FBIは完全に政治とは独立し、専門的なやり方で」事実を確認したと述べた。彼は、効果的に、誠実に、そして独立した立場で捜査が行われ、外部からどんな影響も圧力も受けずなかったと話した。

クリントン氏は2日に、ワシントンのFBI本部で捜査官たちと事情聴取を受けていた。今回のFBIの発表で、今後連邦政府による捜査が縮小されていく可能性がある。ロレッタ・リンチ司法長官(ビル・クリントン元大統領と接触したことを批判されている)は1日、「FBIと検察当局の判断を尊重する」と述べている。

共和党の指名候補を確実にしている実業家のドナルド・トランプ氏は5日、この発表は「不正に操作されている」ことと述べた。

このシステムは不正に操作されている。(不倫問題で辞任した)ペトレイアスCIA長官は、もっと些細な理由で辞任に追い込まれた。とてもとても不公平だ! いつものことだが、誤った判断だ。

ヒラリー・クリントン氏は、私用メールサーバーの使用は間違いだったと言っているが、違法行為は一切ないと話している。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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