父命日、加藤元幹事長ご逝去など

彼(ドナルド・トランプ)を知る者が日本には全くと言っていいほど居りません。

石破茂です。

今日9月16日は、昭和56年に73歳で没した父石破二朗の祥月命日です。もうあれから35年も経ったのかと思うと、とても感慨深いものがあります。

当時24歳の私は旧三井銀行(現在の三井住友銀行)に入行して3年目、東京都中央区にあった本町(ほんちょう)支店で個人向け融資を担当しておりました。

その頃は9月15日が敬老の日で休日であったため、鳥取に帰省して県立中央病院に入院していた父を見舞ったのですが、その日は比較的意識もはっきりしていて「仕事はちゃんとやっているのか?」と問われ、「何とかやっている」と答えると「こんなところにいないで、早く帰れ」。これが私と父との最後の会話となりました。

寝台特急で東京駅に降り立った時に危篤を知らされ、羽田からプロペラ機でとんぼ返りをしたのですが、2時間余をかけて鳥取に着いた時には既に息を引き取った後でした。

倅の私が言うのも変かも知れませんが、間違いなく私よりも遥かに立派な人であったと思います。昭和30年、建設省官房長在任中に東京都知事選への出馬を田中角栄先生から打診された時、「東京都知事にはならない。請われれば鳥取県知事になる意志がある。私は鳥取県人である。鳥取に生まれ、育ち、そして死ぬのである。小さくとも鳥取県はわが県である」と答えたと田中先生は弔辞の中で述べておられましたが、まさにそういう人でした。

父は鳥取県知事15年参議院議員7年と、政治家としては通算22年在任で、私は既にそれを超えてしまったのですが、遠く及ばないことを日々認識しています。一生かけても決して越えられない父を持ったことは、ある意味とても幸せなことであると思います。

民進党の新代表となった蓮舫女史について私はあまり詳しく存じませんが、予算委員会での質問を聴く限り相当に頭の回転が速く、キャスター出身らしい切れ味の鋭さを持ち、教条主義的ではない有能な議員だと認識しています。しかし、その国家観や憲法観について語るのを聞いたことはなく、今後どのような主張をするのかよく見ていきたいと思っています。

集団的自衛権行使の限定的な容認(私個人は憲法上も、全面的に行使は容認され、その限定は安全保障基本法によってすべきとの立場ですが)が何故憲法違反なのか、何故立憲主義に反するのか(その立場に立つなら個別的自衛権の行使も否定されなくてはなりません)、これが「他国との戦争に巻き込まれる邪悪な権利」であるとするなら、政権獲得の暁には日本政府として国連総会において集団的自衛権条項の削除を求めるのか、など、明らかにして貰いたい点は多々あります。

二重国籍の問題について、国籍法第16条は日本国籍を取得した場合の他国の国籍離脱を努力義務として定めており、少なくともこれに抵触していることは明らかでしょう。この点について説明責任を果たしているかどうかが問われるのであり、真摯に履行されることを望みます。

小選挙区制下においては、政権交代可能な二大政党の存在が強く求められるのであり、過半数の候補者を擁立しているという点において唯一その可能性がある民進党が今のような混乱・停滞状況であること自体、日本の健全な民主主義の阻害要因と言わねばなりません。

幹事長になられる野田佳彦元総理や前原氏、玉木氏も含めて、現実路線に向けてより一層力を発揮されることを強く期待しています。

誠に畏れ多いことながら、今上陛下の生前ご退位のご意向をどのように受け止め、対処するかは「その地位は国民の総意に基づく」と定める日本国憲法の趣旨から考えても、第一義的に国会議員の責任です。「畏れ多いことである」ということと「国会議員がその責務を果たす責任と覚悟を持つ」というのは全く別の問題で、有識者会議に意見を求めることはあっても決してこれに委ねるべきものではありません。私自身、膨大な文献を何とか読破・理解し、己の考えを明確にしなくてはならないと思っています。

加藤紘一元自民党幹事長がご逝去になりました。私が自民党に復党した時の幹事長であり、共和事件や不発に終わった「加藤の乱」以後の時代になられてから、何度か直接ご指導を頂いたり、選挙区に伺って先生の後援会でお話をさせていただく機会がありました。

農政や外交・安全保障で考えを異にする面も多々ありましたが、もっとお話を伺いたかった方でした。御霊の安らかならんことをお祈りいたします。

週、移動中に読んだ本の中では「ドナルド・トランプ 劇画化するアメリカと世界の悪夢」(佐藤伸行著 文春新書)をかなりの驚きを持って(適切な表現ではないかもしれませんが)読みました。

 彼を知る者が日本には全くと言っていいほど居りませんし、旧知の共和党系アメリカ人にもその実像を知る人は私の聞いた範囲では皆無でした。トランプ候補がこの本に描かれているような人物だとすれば極めて由々しきことですが、むしろ彼を大統領候補にまで押し上げたアメリカ社会の変容にこそ、我々は目を向けなくてはなりません。是非ご一読くださいませ。

週末は彼岸の墓参りで帰郷する17日土曜日に福田俊史鳥取県議の県政報告会で国政報告(17時30分・郡家コミュニティセンター・八頭郡八頭町郡家)、どんどろけの会総会・懇親会(19時・ジャパンズ・鳥取市弥生町)。

18日日曜日は週刊報道LIFE出演(午後9時・BS-TBS・収録)。

19日敬老の日は日本青年会議所栃木ブロック協議会「とちぎフォーラム2016」で講演(15時30分・足利市民会館・足利市)、という日程です。

都心は不順な天候が続いています。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

(2016年9月16日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)