英国・北アイルランドで開かれている主要国首脳会議(G8サミット)。会場がある北アイルランドのエニスキレンでは、参加する各国首脳をイメージしたアイスクリームがお目見えした。さらに、エニスキレン近くのベルクー村では、見た目は営業中なのに、実は空き店舗に巨大なポスターで覆っただけという「フェイクショップ」も登場。本物と見間違う出来に称賛の声が上がる一方、「G8だけのために、地元経済の低迷を隠しているだけ」との冷ややかな声もあり、議論を呼んでいる。
ロイター通信によると、このアイスを発売する店のウナ・リリーさんは、事前にそれぞれの首脳の情報を収集。オバマ米大統領はナッツ好きだと分かったため、チョコレートとナッツの味にしたという。情報が得られなかった場合は、その国の有名な食べ物などを使用したという。
気になるアイスの味は、安倍首相が抹茶味、アメリカのオバマ大統領はチョコレートとナッツの味、ロシアのプーチン大統領はウォッカとコーヒーリキュール味、フランスのオランド大統領はマカロン味、イタリアのレッタ首相はティラミス味だという。
各国首脳や報道陣を受け入れるため、サミット会場のあるフェルマナ自治区では、街の美化に100万ポンドを用意し整備を進めてきた。ビルのペンキを塗り直すなどの化粧直しが行われてきたという。
フェルマナ自治区では、空き店舗となっているレストランや商店のドアや窓に大きな写真を貼り付け、まるで営業しているかのように見せる「フェイクショップ」が150店以上出現したと地元紙などが報じている。
BBCなどによると、ベルーク村にある肉屋も営業中に変身した店の一つ=写真。空いたドアの先の店内には新鮮な肉が並んでいるように見えるが、実際には1年以上前に廃業した店だ。テレグラフによると、このほかにも、元薬局がオフィス用品店になったり、空き家がコーヒーショップになったりしているという。ロイター通信によると、こうした変身は約150カ所で行われたという。
この「フェイクショップ」対しては、地元を襲う不況を隠し、一時的によく見せているだけだ、との批判の声も上がっている。
テレグラフの取材に応じた地元議員は「義母の訪問を前に慌てて家を片付けたようなもの。G8のために、経済低迷を取り繕うその場しのぎの対応だ。ほとんどの人は金の無駄だと思っている」と批判した。また、無職の男性(62)は「不況という深刻な傷を取り繕う美容整形手術のようなもの。事業への出費を控える代わりに、銀行に気を配っているだけだ」とロイター通信の取材に答えている。
一方、「(フェイクショップは)良くできていて、街の景観がよくなった。いいお金の使われ方だ」と歓迎する市民の声もある。
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