補正予算不可避の声、「中期財政計画」との綱引きに
2013年度の補正予算は「絶対、不可避だ」(首相周辺筋)──。政府・与党内では、2014年4月に予定される消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減を緩和する目的で、追加財政出動は既定路線との見方が広がりつつある。
消費税上げをにらんだ歳出圧力はその後も続く可能性があり、9月のG20首脳会合(サンクトペテルブルグ・サミット)を控え、政府がとりまとめる「中期財政計画」との綱引きとなりそうだ。
8月上旬にまとめる「中期財政計画」ではまず、2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の名目GDP比赤字を10年度比半減する目標達成に向けた道筋を示す。ただ、20年度の黒字化達成までの道筋をどこまで示せるかは不透明だ。15年10月に消費税を10%に引き上げた後の歳入改革の方針が定まっていないためだ。
「中期財政計画」の対象期間について甘利明経済再生・経済財政相は2014年度から2016年度までの3年間とする考えを示している。14年度と15年度については、政策経費を13年度当初(70.4兆円)並みとすることをひとつのメルクマールに議論をスタートさせているが、歳入改革の方向性が定まらない16年度については「15年度までとは全く質の異なる示し方になる」(政府筋)としている。
さらに16年度以降については、「中期財政計画」と同時に示される「中長期試算」で要対応額をどの程度圧縮させるかが焦点となる。
財政健全化目標達成に向けた懸念は、2度の消費税引き上げに伴う景気下押し圧力に対して、財政出動の声が高まりかねないことだ。14年4月の引き上げ前の補正予算編成は当然視する声が挙がる。補正予算の財源には1兆円を下らないとみられる2012年度税収の上振れなどを充て、財政健全化への影響は最小にとどめたい考え。それでも、次の15年10月の10%への引き上げに向けた経済財政運営は薄氷を踏む状況となる。消費税10%の最終判断は、14年10─12月期GDP(15年2月公表)をもとに、15年4月に行われる。8%への引き上げを消化し10%への引き上げが実現可能な経済状況を維持できるか。14年度の経済運営は正念場だという。景気回復軌道の維持が最優先課題ではあるが、14年度も補正予算を編成する事態になれば、財政健全化目標達成はかなり「危険水域」に入り込む。
18日に閉幕した主要8カ国(G8)首脳会議の首脳宣言は、日本の財政運営に対して「信頼できる中期財政計画が必要だ」と名指しで注文を付けた。9月のG20首脳会合までに、日本は「信頼に足る中期財政計画」の策定が求められている。[東京 21日 ロイター]
(吉川裕子;編集 石田仁志)