元ドラッグの売人、コロンビア大学を卒業する

かつてドラッグを売っていたこの男性は、今やアイビーリーグのひとつ、コロンビア大学の卒業生だ。
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この男性はかつてはドラッグび売人だったが、今や「アイビーリーグ」(アメリカの名門8大学の総称)のひとつ、コロンビア大学の卒業生だ。

ニューヨーク市のハーレム出身のデイヴィッド・ノーマンさん(67)。彼はこれまで人生の大半を、ドラッグの密売や薬物依存で、刑務所に入っては出るの繰り返しに費やした。そして1995年、彼は殺人罪で投獄された。

しかし、それから20年以上ドラッグを断ってきたデイヴィッドさんは、長い道のりを経て、とうとうコロンビア大学を卒業。哲学の学士位を取得した。2016年卒業生の中で、デイヴィッドさんは最年長だった。

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デイヴィッドさんは今回の卒業を振り返り、その時の気持ちをハフポストUS版に話した。「とてもいい気分でした。ステージを歩いているときは、安堵の気持ちとかこれまでの努力がないまぜになって、長年の大きな目標を成し遂げたという達成感がありましたね」

GPA(成績評価値)3.4という成績で卒業したノーマンさんは、応援してくれた友人や家族、同僚に囲まれ、誇らしくキャップとガウンを纏った。この卒業式は非常に楽しいイベントだったが、デイヴィッドさんが自分の人生を変え、ここまでやってくるには大変な努力があったのだ。

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大切な友人や家族に囲まれるデイヴィッドさん。

雑誌「ザ・ニューヨーカー」によると、デイヴィッドさんは10歳ころから酒を飲み始め、14歳の時にはより依存性の高いドラッグに手を出すようになった。その頃から周りにいた友人の多くがドラッグの密売に関わるようになり、彼も同じように密売を始めた。デイヴィッドさんにとって、ヘロインのような依存性の高いドラッグを使うことは、ストレスを解消する手段になったという。

「ドラッグ販売はとても過酷なビジネスです。警察やチンピラ、自分からドラッグを強奪しようとする人間、自分を利用しようとするあらゆる人間に警戒しなくてはいけません」とデイヴィッドさんは語る。「ドラッグなしでそうしたビジネスができる人間も中にはいますが、私のような人間は、ドラッグで自信を高めなければならなかったのです」

その当時、デイヴィッドさんは高校に1日だけ通い、その後職業訓練学校に行ったが、あまり長く続かなかったという。

デイヴィッドさんはこれまで、何度も警察の厄介になってきた。初めて刑務所に入ったのは60年代後半のことだった。その数年後、ストリートファイトで人を刺殺し、殺人罪で6年間服役することになった。

デイヴィッドさんはボストンのラジオ局WBURに対して、この事件に関して言い訳はできないが、過ちを犯した自分のような人間にとって、人生をポジティブに変えるために努力することが重要だと語った。

「この社会をより良いものにしようとするのなら、私たち自身が変わる必要があることを認めなければなりません」「それまでどのような道を歩んできたかにかかわらず、未来を見据えて今の自分の状況を改善しようと努力するのは、良いことだと思います」と、デイヴィッドさんはインタビューで語った

そしてそれこそ、まさしくデイヴィッドさんが歩んできた人生そのものだった。

デイヴィッドさんは刑務所で、犯罪率を減少させるための復帰支援プログラムを受けた。このプログラムで、彼はカウンセラーを志願し、その後シニアカウンセラーのポストに就くこととなった。

「この仕事をやって、私の人生に対する見方が変わりました。自分は社会の役に立てる何かを持っていると気付いたのです」。デイヴィッドさんはコロンビア大学が発表した彼の声明の中でこう述べている。「私は自分の時間を、今よりも"大きな"自分になるための努力に捧げると決断しました」。

刑務所から出所すると、デイヴィッドさんは規律のある生活を送り、自分の未来をポジティブにする助けとなるプログラムを探した。そしてマウントバーノン病院でカウンセラーの指導教員とアウトリーチ・ワーカー(福祉や保健などの援助を行う人)の仕事が見つかり、その後、コロンビア大学で地域の保健プログラムについての講演を行う機会があった。

デイヴィッドさんの知性と才能は、同僚や友人も認めるところだった。そしてデイヴィッドさんはコロンビア大学のカリキュラム「スクール・オブ・ジェネラル・スタディーズ」に出願することを決めた。これは、高校を卒業後すぐに大学に進学せず、学歴に1年以上ブランクが空いてしまった学生のためのカリキュラムだ。

読書や哲学にはずっと興味を持っていたデイヴィッドさんだったが、大学のカリキュラムは厳しいものだった。しかしそれでも、デイヴィッドさんの学問への情熱が失われることはなかった。デイヴィッドさんは努力してテストでA+の成績を取ったことを誇らしく話してくれた。

学位を手にしたデイヴィッドさんは、リバーサイド・チャーチで刑務所に服役していた人のためのプログラム、「カミング・ホーム・プログラム」のメンター(指導者、助言者)となった。またデイヴィッドさんは、自らの体験に基づいた生き方を説く本の執筆も考えている。彼はこれまでの人生で過ちを犯したことは自覚しているが、そこから這い上がろうとする過程から大切なことを学べたと話した。

「自分が犯した過ちが、必ずしも償えるとは限りません。しかしそれでも、世界をより良く変えようと試みることはできます。それは、自分自身を改善するということによって可能になります。最高の自分になれる可能性がある限り、努力しなければいけません」。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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