地球が生みだす高熱の液体が住宅地区に流れ込むと、一体何が起きるだろうか? ハワイ島の田舎の村パホアは、まさに今この影響を受けようとしている。
以下は、現在パホア村の脅威となっている、ゆっくりと動く溶岩流について、知っておくべき全てのことをまとめたものである。
■ 場所はパホア村、村は危機に瀕している
ハワイ島のキラウエア火山のイーストリフトゾーンに位置するこの閑静な村には、約800人が暮らしている。この地域の住人たちは、主に太陽光および水力発電で生活をしている。
溶岩流はパホア村の歴史の一部だ。「約350年前、パホアの北側が溶岩流に飲み込まれ、約400年前には現在のパホアのほとんどが溶岩流で覆われました」と、ハワイ大学の地質学の教授のマイケル・ガルシアは地元ニュース局のKITVに述べた。
以下の画像は2014年のパホア村の様子である:
■ 住民たちは不安定な溶岩の中で暮らしている
パホアの住民や店の経営者たちは、荷造りをすべきか、あるいは事態が沈静化するのを待つべきか議論している。彼らが愛する村は完全に消えてしまうかもしれない。しかし、人々は何も手を打てない。1990年と1991年に噴火した時の溶岩流は、近隣のカラパナ村を完全に破壊し、教会や店、100件の家や美しい黒砂浜を壊滅させた。
「パホア村の不安はかなり高まっています」と、地元のサーフショップの店員のジェシカ・ミラーは動画ニュースサイト「ビッグ・アイランド・ビデオ・ニュース」に述べた。「人々は落ち込み、どうすればいいのかわからなくなっています」。
1990年、溶岩流で焼け落ちるカラパナの民家
■ 敷地境界線を越えた溶岩
ハワイ州市民防衛局長官のダリル・オリベイラ氏は、溶岩が家に近づいたら家の所有者に対し、この壊滅的な状況で「家をあきらめてもらう」ように働きかけることになると述べた。「彼らが経験することになる絶望や、いらだちを、想像することしかできません」。
敷地境界線を越えた溶岩流
■ 溶岩は既に墓地も襲った
溶岩流は森や牧草地、道路などを焼き払った後、パホア墓地の一部にも襲いかかった。ぞっとする光景だ。
この地に眠り埋葬されている家族への心からのアロハと尊敬の念を込め、パホアの墓地を写した写真は、 #プナの溶岩流 が流れ込んだ2014年10月26日に撮影されたものです。いつものことながら、私の思いと祈りは、この下の全ての人たちと共にあります。 #マーラマ・ポノ (写真提供: アメリカ地質調査所)
■ 進みゆく溶岩の様子をとらえた映像
10月28日の時点で、最も速く進んでいる場所の溶岩はおおよそ45ヤード(約42メートル)に広がり、1時間に16ヤード(約15メートル)の速さで進んでいる。溶岩流が進む方向にある家の住民には避難勧告が出されたが、多くの住人は既に自主的に避難している。
■ 6月27日から13マイル(約21キロ)も進んだ溶岩
現在の溶岩流は「パホイホイ溶岩」と呼ばれる。これは、なめらかで渦を巻き、断続的な動きを見せる溶岩という意味だ。心臓のような形をした溶岩を映画でもし見たことがあれば (例えば「ダンテズ・ピーク」などが思い浮かぶが)、ハワイの溶岩流が急に迫りくるような速さで動くものではないとわかるはずだ。ハワイの溶岩流の最速記録は、(1950年のマウナ・ロア山の噴火以降では)時速6メートルにすぎない。
とはいえ、キラウエア火山は世界で最も活発な火山で、1983年以降継続的に噴火を繰り返している。
■ 溶岩の予測は極めて困難で、制御は不能
溶岩流は地形のわずかな変化や、溶岩生成の変化、また、溶岩とリフトゾーン(大型の楯状火山の山腹に特徴的に見られる細長い割れ目地形)の割れ目などの影響を受ける。現在の溶岩流がいつ終わるか、あるいはどこまで続くのかなどは、誰にもわからない。「(キラウエア火山に) 似たような噴火が何千年も前に起きました」と、ハワイ大学で地質学を研究するマイケル・ガルシア教授はKITVに対して述べた。その噴火は60年も続いた。
プナの溶岩流
■ ハワイ州市民防衛局は支援を求める
■ 多くのハワイ住民にとって、溶岩は「女神の仕業」
多くのハワイ島住民は、溶岩流はハワイの火山の女神ペレの仕業だと信じている。彼らは、溶岩は尊敬され、歓迎されなくてはならないと信じている。まるで、溶岩が女神ペレ自身であるかのように。溶岩流をそらそうとすることは、ペレの邪魔をすることになり、文化的に無神経な行為だとして、怒りをあらわにする住民もいる。
「ペレに敬意を払い、尊敬の念を表すために、私たちは適切な文化儀礼を研究しました。私たちは、そこから湧き立つ女神の力を感じました。写真付きの記録文書を作成するためにこの地を訪れる必要がありました。これこそが我々の現代版ペトログリフ、つまり我々の文化を記録する方法なのです」 - エヒトゥ・キーリング
■ 州市民防衛局は予防策をとっている
ハワイ電力会社は溶岩の熱から電柱を守るための壁をつくる実験を行った。電柱は断熱材や、コンクリート管、金網フェンスなどで覆われている。今のところ、この対策は機能しているようだ。
溶岩流情報更新: 電柱保護設計の初期段階の結果は良好でしたが、長期的な対策はまだ決定されていません。アパア通り沿いの電柱は現在も動かずに残っており、溶岩流による電力供給の停止や停電などは起きていません。溶岩流の高熱から、我々のインフラをどう守るのかということに、人々は関心を寄せています。電柱保護の最終的な設計案は、配電供給部門の社員、ハワイ大学ヒロ校の専門家、アメリカ地質調査所のハワイ火山観測所の地質学者の協力で行われます。我々のパートナーは、溶岩を理解する手助けとなる人たちで、彼らは、事後インパクト評価でも引き続き我々を支援していただく予定です。
■ 分かりやすい避難計画が策定されていることを確認する
緊急対策本部は、溶岩流が主要道路や幹線道路に流れ込んだ場合を想定して、村中に新たな道路の建設を進めている。もし溶岩流が州道130号線に流れ込むと、この地区は島の残りの部分からは孤立することになる。
溶岩は他の小さな道をすでにふさいでいる。
■ 学校は無期限閉鎖に
26日の夜、州教育省は溶岩流の進路に入る可能性があるとして、ケオネポコ小学校を無期限に閉鎖すると発表した。他の複数の学校は、事務業務を手伝い、最も影響を受けている学校の移転作業の準備を行うために、休校となる予定だ。
■ 命知らずの野次馬が溶岩流を追いかけている
賢明でもなければ尊敬されるようなことでもないが、溶岩流をひと目見ようと、危険を冒して多くの人がパホア村に向かっている。危険な溶岩流観光ツアーを企画した会社もある。溶岩流の上空は、好奇心に駆られたヘリコプターツアーやメディアが原因で、閉鎖されている。
■ 結局、溶岩は人を魅了するものである (もちろん、安全な距離をとっての話だが)
■ しかし、それでも、観光客にはペレを別の女神の家で見るほうがおそらくいいだろう
キラウエア火山のパワーや勢いを見られる場所は、他にも数多くある。ハレマウマウもその一つだ。ハワイの伝説によると、そのクレーターには女神ペレが住むのだという。クレーターの底にあり、よく噴火を起こす溶岩湖で、そこは女神にふさわしい家であるように思える。ハワイ島の南側の海岸では、ときおり赤く熱した溶岩が海に流れ込む様子が見られる。
■ あらゆる災禍に巻き込まれながらも、パホア村は力強く残り続ける
この地域に住むアリ・ハウアニオさんは、1991年の溶岩流でカラパナの自宅を失った。そして彼は今、別の家がペレによって飲み込まれてしまう恐れがある状況下にいる。しかしながら、彼は、ハワイ・ニュース・ナウの取材時に、パホアの住民的態度を例証したのだ。「本当は、それは単なる物質的な話なのです。私は裸でこの世界に生まれてきたわけで、裸でこの世を去ることになるのです。私はこの家を持っていくことはできませんが、思い出は持っていくことはできます。そしてその思い出こそが最も貴重なもので、とっておけるものなのです」。
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この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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