7月11日に開催されたEURO2020(サッカーヨーロッパ選手権)の決勝戦では、PK戦の末にイタリアがイングランドに勝利して53年ぶりの優勝を手にした。
PK戦にまでもつれ込む熱戦だったが、この試合でPKを外したイングランドの3人の選手たちに、ソーシャルメディアで人種差別的なコメントが投稿された。
そのためイングランドサッカー協会(FA)が「差別を非難する」という声明を発表。
国やソーシャルメディア企業に対しても、差別や誹謗中傷に毅然とした態度を取るよう求めた。
「人種差別に愕然とする思いです」
オンライン上での誹謗中傷のターゲットになったのは、イングランドチームで最後にPKに立った、マーカス・ラッシュフォード、ジェイドン・サンチョ、ブカヨ・サカの3選手だ。
試合は1-1の接戦で延長戦でも決着がつかずにPK戦になった。そしてこのPK戦でラッシュフォード選手、サンチョ選手、サカ選手のキックをイタリアのゴールキーパー、ジャンルイジ・ドンナルンマ選手が阻み、イングランドは2-3でイタリアにで破れた。
3選手にとっては、大きなプレッシャーを感じる中でのPKだったはずだ。それにも関わらず、アトランティックによると、試合後にInstagramなどの3人のソーシャルアカウントには、人種差別的なコメントやサルの絵文字が投稿された。
この行為に対し、FAは試合後に次のような声明を発表した。
「FAはすべての差別を非難します。ソーシャルメディアで私たちのイングランドの選手たちに向けられた人種差別に愕然とする思いです」
「このような不快な行為は歓迎されません。そのことを我々ははっきりと示します。我々は影響を受けた選手たちを全力でサポートすると同時に、責任がある人に、可能な限り重い処罰を課すよう求めていきます」
同協会は政府やソーシャルメディアにも、差別を無くすための取り組みをするようにも求めている。
「差別を根絶するため、我々はできる限りの努力を続けます。しかし政府に対しても、暴言に対する責任を問うための適切な法律を早急に導入するよう求めていきます。またソーシャルメディア企業は、暴言を投稿するユーザーのプラットフォームの使用禁止や、訴訟のための証拠集めなど、嫌悪すべき暴言をプラットフォーム上から廃絶する努力をして、責任と行動を取る必要があります」
イングランド代表チームもこの声明をTwitterでシェアし、「今夜の試合の後に、何人かの選手に対してオンラインで差別的な暴言が浴びせられたことを非常に不愉快に感じています。我々は選手を支持します」と選手をサポートする姿勢を示した。
問題になるオンライン上の差別や誹謗中傷
アスリートに対するオンライン上での人種差別発言や誹謗中傷は、大きな問題になっている。
ラッシュフォード選手には、所属するマンチェスター・ユナイテッドが5月にヨーロッパリーグ決勝でビジャレアルに敗戦した時にも、オンライン上で差別的な暴言が投稿された。
こういった状況が続く中、ソーシャルメディア企業に対して対策を求める声が高まっており、イギリスのサッカー選手やサッカークラブ、ラグビーユニオンなどは4月に、4日間にわたるSNSボイコットを実施した。
また選手だけではなく、対戦チームのファンに対する誹謗中傷なども起きていて、EURO2020ではイングランドと対戦したドイツチームのファンと思われる子どもを馬鹿にする様な辛らつなコメントが投稿された。
この時には、イングランドチームのサポーターが「イギリス人すべてがひどい人間じゃないと伝えたい」という思いからクラウドファンディングを立ち上げ、ターゲットになった子どもをサポートした。