日本政策学校では、教育改革実践家/杉並区立和田中学校・元校長/元リクルート社フェローの藤原和博氏に、「人生を豊かにする教育」というテーマで講義をしていただきました。
以下はそのサマリとなります。
◇はじめに
20世紀の成長社会から成熟社会へと時代が動いたのにともない、新しい時代に対応する能力を養う教育が必要となった。
すなわち、従来の正解主義の教育ではなく、自分で考えて納得し、周りを納得させる能力を養う教育が要求される。文部科学省も、大学入試など新しい時代に対応する教育へと改革する方針である。選挙権年齢が引き下げられ、高校生も投票できるようになったのにともない、政治について学ばせる必要があるが、これについても、具体的に考えさせることが大切である。今後、ベテランの教員の層が退職する一方で、子どもたちが多様化してきている現状より、ビデオを使った個別教育などの対応策を考えるべきである。
◇成長社会から成熟社会へ
わが国は、20世紀の成長社会を経て、1998年頃より成熟社会を迎えた。
成長社会は、みんな一緒という認識であったのに対し、成熟社会は個を重んじる社会である。また、産業においても、大量生産より個別生産へと入れ替えが生じているのである。
◇新しい時代に要求される教育
このように、時代が変わると要求される能力が変わるので、新しい時代に対応する能力を養う教育が必要となる。
すなわち、従来の一斉授業より、個別習熟度別授業への入れ替えが要求される。一斉授業には正解があり、それを速く正確に見つけるという情報処理力を養う教育であったが、後者の授業には正解がなく、自分で納得し、かつ、周りを納得させる(納得解)の教育であり、情報編集力を養う教育である。
現在の文部科学省において、入試改革とアクティブ・ラーニングの2つが、キーワードとなっている。
先ず、大学入試はこれまでの記憶中心の学力試験から、考える試験へと改革する方針である。
もう一つは、高校、大学でアクティブ・ラーニングという、自分のこととして主体的に考える授業形態を採ることである。
これによって、前者の教育から後者の教育へと、向きを大きく変えられるはずである。
◇政治をどのように、アクティブ・ラーニングするのか
選挙権年齢が引き下げられ、高校生も投票できるようになるが、子どもたちに政治を身近に感じさせるには、自分の頭で政治・政策を考えさせることが重要である。すなわち、自分たちが投票した後、この社会はどうなるのかを考えさせることである。もちろん、これには正解というものがない。子どもにとって、もっとも身近で具体的な領域より、学ばせるべきである。
◇現在の教育界の問題と対応策
現在、教員の約3割が50代である。わが国は50年ほど前より、家庭、地域社会双方の教育が低下していて、学校が学習指導のみならず、生活指導も一手に担ってきている。そのノウハウをもつ、ベテランの教員の層が、あと10年以内に退職する。また、従来は一斉授業で7割の子どもを理解させることができたが、子どもたちが多様化している現在では、このやり方は通用しなくなっている。
かかる現状の下、どのように改善していくべきか。
例えば、現役のベテランの先生にビデオカメラに向かって授業してもらい、それを教材に使うことが考えられる。
これによって、子どもは自分に合ったスピードに変換したり、わからないところをくり返し聞いたりすることができ、教師はついてこられない子どもだけをフォローすることに専念できるのである。
(2015年10月17日に開催された、政策議論講義「人生を豊かにする教育」より)
講師:藤原 和博(ふじはら かずひろ)氏
※ご本人に了承いただいた画像を掲載しております。
教育改革実践家
杉並区立和田中学校・元校長
元リクルート社フェロー
1955年 東京生まれ。
1978年 東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。
1993年よりヨーロッパ駐在。
1996年 同社フェローとなる。
2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として、杉並区立和田中学校校長を務める。
2008年~11年 橋下大阪府知事の特別顧問。
2014年より武雄市、2015年より奈良市の教育政策アドバイザーになる。
超人気講師として、講演は累積1000回を超える。