日欧経済連携協定(EPA)の交渉が大枠合意に達し、ファッション業界でも今後の動きに注目が集まっています。
協定発効は2年後、関税撤廃は10年後と、実現はだいぶ先の話ではあるものの、一部で「エルメスも安く買える?」といった声が上がるなど、欧州ブランドが集まるラグジュアリーリテール業界ではEPAのもたらす影響について様々な憶測が出ています。
しかし、10年先を見越してみると関税撤廃したからといって好景気になるのか?
考えてみるとそう単純なことではなさそうです。
この10年前も、目まぐるしく変化してきたファッション業界
ラグジュアリーブランド市場に詳しいエーバルーンコンサルティングの池松氏に見解を聞いてみると、
「EPAが消費者の購買意欲を掻き立てる追い風になるとはいえ、10年前から見ても大きく変化したファッション業界で永久的に好景気が続くとは言えない。今ではすっかり落ち着いてしまった"爆買い"のようにまたたくまに終わってしまう可能性もある」とのこと。
確かに、数年前は"なかなか就職できない憧れの企業"として有名だった外資系ラグジュアリーブランドが、今では人材不足と言われています。
そんな中、昔と変わらない条件で募集している企業は苦戦が続き、反対に、時代に合わせて求人のハードルを下げ求職者の間口を広げる企業は内定者を多く出すなど、企業の取り組みの差も少しずつ見え始めています。
新たなチャレンジを続けるラグジュアリーブランドが顧客を獲得する時代
また、「グッチの成功例のように、リ・ブランディングによって若い顧客を獲得し安定させていくことがどのブランドにも必要」と池松氏は語ります。
実際に人材業界でもCRMやクライアントテリングといった顧客対応ができる人材が重宝されている背景もあるようで、これは実際にFashion HRの求人動向を見ていても同じです。
10年前はどちらかといえば身近な存在ではなく憧れの存在だったラグジュアリーブランドが、LINEやInstagramといったSNSツールを活用しているのも顧客づくりに向けたチャレンジの一つ。
こうしたツールを積極的に取り入れているブランドとそうでないブランドでは、売り上げにも大きく差が出ています。
こんな風に過去との違いを比べてみると、10数年前まではブランドが顧客一人ひとりとSNSで繋がるなんて誰も想像もしてなかったのだから、この先の10年は今以上に誰も想像していないような新たなチャレンジが各ブランドに必要となってくるのは当然です。
人材不足という厳しい背景はあるものの、いつも新しい手法で私たちを楽しませてくれるラグジュアリーブランド。今後はどんな新しいチャレンジをしていくのでしょうか、今から楽しみです!