2016年11月、WWFジャパンとImpact HUB Tokyoは共同で、持続可能な水産業をめざす起業家を支援する「OCEANチャレンジプログラム」を開始しました。これは、さまざまな問題によって悪化している海の自然環境を、ビジネスの起業を通じて保全することを目指した、新しい取り組みです。2017年1月には、プログラムへの参加者が確定。今後は4月の事業計画発表会に向け、参加者にご参加いただくワークショップ等が開催されます。
水産業の未来を変える 起業家の募集
周囲を海に囲まれた島国である日本は、魚や貝、エビやカニなどの水産物を、世界で最も多く輸入・消費している国の一つです。
海の生物である水産物は、その生産量を越えない水準で消費する限り、いつまでも利用し続けることができます。
しかし、いま世界の海では、その資源減少が深刻化しています。
その原因は水産物の「獲りすぎ」による過剰な利用を始め、沿岸地域での開発や、海水温の上昇や汚染による海洋環境の悪化といった海の環境問題です。
この問題を解決し、海の環境やその恵みである水産資源を守る「持続可能」な水産業を広げてゆくことは、地域の経済や暮らしにとっても重要なことです。
WWFではその手段として持続可能な水産物を認証するMSC(海洋管理協議会)やASC(養殖管理協議会)の認証制度を普及させると共に、国際会議での提言や、各国政府や自治体、また水産物を扱う企業などに対する働きかけを行なってきました。
そして今回新たに、個人の起業家に注目した取り組みがスタートしました。
2016年11月、WWFジャパンが、起業家育成プログラムを運営するImpact HUB Tokyoと共同で開始した「OCEANチャレンジプログラム」です。
持続可能な水産業の促進を目指す起業家を支援する、この取り組みのその主な狙いは、環境保全をビジネスの一部に組み込むことで、その取り組みが「社会貢献活動」に留まらず、経済活動と一体になり発展・拡大できるよう応援することです。
また日本各地の「一個人」が主体的に行動することで、多様な地域で多くの人を巻き込み、取り組みの輪が広がっていくことも、意識した活動になっています。
開始の発表後、WWFジャパンとImpact HUB Tokyoでは、個人起業家ならではのユニークな切り口で、今までにない新たな海洋保全につながる提案の可能性を探るため、事業規模の大小や分野を問わず、広く参加者と事業アイデアを募ってきました。
参加者が決定
2017年1月、選考を経て、出身地や経歴、起業に興味を持ったキッカケも異なる、5名の参加者が決定しました。
「港町に生まれ育ち、漁獲量減を現実として感じてきた」、「食糧問題を知り、力になりたいと思った」、「地元の産業を元気にしたい」など、その想いはさまざま。
共通しているのは、「海の環境を守りたい」、「水産業を持続可能にしたい」という志と、それを自ら事業化し、現実的に発展させていきたいという意気込みです。
各参加者がアイデアとして温めながら今後実現を目指すのは、環境負荷の少ない水産物の生産方法の確立や、持続可能な方法で生産された製品の普及、また漁獲量減少による経営難に悩む生産者の収入増加や、海洋保全による資源回復の両立など。
しかし、海を守るために行動を起こしたとしても、気持ちだけではビジネスは成り立たたず、良い形で続けてゆくこともできません。
同時に、これらの取り組みを実現させるために、アイデアを確かな事業として立ち上げ、経営を維持するだけの利益を得るビジネスの仕組みも作る必要があります。
そこで、本プログラムでは今後、WWFから海洋保全や水産資源の管理について、またImpact HUB Tokyoからは事業設計や起業の手順、経営戦略などについての知見を提供するワークショップを開催し、取り組みの後押しとしてゆきます。
持続可能な水産業の実現へ向けて
プログラムの参加者は、2017年1月27日~4月16日までの約3か月間の内で、3フェーズ、計7日間にわたり、このワークショップへの参加を経て、最終日の4月16日に、事業計画案の発表を行います。
また、期間中はワークショップ開催日以外でも、参加者は各自の事業計画で想定する顧客層や関係取引先などへのインタビューや、意見交換を予定。
実際に漁業やビジネスの現場が抱えている課題や、消費者のニーズを明確にすることで、より環境的・社会的なインパクトの大きい計画の策定を目指します。
WWFジャパンとImpact HUB Tokyoは本プログラムを通じて、事業規模の大小や分野に関わらず、より多くの人々が、海洋環境や水産資源利用を取り巻く課題に関心を持ち、主体的に「持続可能な水産業」を促進していく動きが加速することを期待しています。
詳細は、プログラム公式ウェブサイト