「バイトテロ」で相次ぐTwitter炎上 どうやって食い止める?

アルバイトによる不適切な画像投稿で起こるTwitter炎上事件。炎上はなぜ起こるのか。どう防ぐのか。

アルバイトの従業員が勤務中に悪ふざけした写真がTwitterに投稿され、拡散、ネット上で非難が相次ぎ企業が謝罪――「バイトテロ」と呼ばれるネット炎上事件が相次いでいるが、ついにこれが引き金となって破産する企業が現れた。東京都でそば屋を経営する「泰尚」が10月9日、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。朝日新聞デジタルが伝えた。

同支店は「業績はもともと厳しかったようだが、ツイッター投稿が倒産の引き金になった可能性はある」と分析している。

泰尚は1984年創業。一時は町田市にも2店舗を構え、2011年5月期の売上高は約1億2千万円あったが、創業者が昨年亡くなり、経営が悪化していたという。

(朝日新聞デジタル「悪ふざけ画像投稿で閉店、多摩のそば店が破産手続き - 社会」より 2013/10/18)

これまでも同様の事件で、チェーン店の店舗が閉店に追い込まれたことはあったが、個人経営の店舗が破産に追い込まれた事例はおそらく初めて。

Open Image Modal

バイトによる悪ふざけの事件は、ローソン、バーガーキング、ほっともっと、ミニストップ、ブロンコビリーなどで立て続けに起きており、社会問題化している。ひとたび騒ぎになって閉店などの措置になれば、大学生に多額の損害賠償が請求される可能性もある。

また、従業員でなく、客側が店舗で不適切な行為を撮影・投稿する例も増えており、こうなるともはや「企業側の教育」だけではどうにもならない状態となっている。

悪ふざけ投稿、なぜ起こる?

こうした、「悪ふざけの投稿」は、どうして起こるのか。

まずスマートフォンとソーシャルメディアの普及により、いつでもどこでも写真を投稿し、インターネット上にアップロードできるようになったことが背景にある。ソーシャルメディアの特性が利用者や若年層に十分に理解されないまま、環境だけが先に進んでいる面もある。

「世の中に公開されている実感がなく、仲間内だけの悪ふざけだと思っているのでは」という意見は根強い。ジャーナリストで、メディアアクティビストの津田大介さんもTwitterで以下のように語っている。

また背景に、インターネットとソーシャルメディアによって、「ヤンキー文化」や「異なる階層」が可視化されていることを挙げる論客も目立つ。

「ヤンキー性は見た目ではなくオンラインで行動や言動でアピールできるようになった」、「それに伴い、隠れていたヤンキー精神を持った子達が表面化してきた」ということになる。

こういったアピールはTwitterの使い方とかITリテラシーを高めることで解決できるという人が居るけれど、それは中々難しい。

(Yahoo!ニュース「ネットの普及によるヤンキーのカジュアル化 -- バイト炎上事件における考察(1)(中田 博昭)」より 2013/09/04)

彼らには「インターネット」という概念がよくわからない。よく言われることだが、たとえばTwitterならTwitterという「個別のアプリケーションがある」というのが彼らの感覚である(LINEは使ってないんでよくわからん)。実際にはそれは、インターネットの仕組みの内部で動いているサービスなのだが、ここでSNSと「うちら」の結託が起こる。SNS=うちらとなるわけだ。なんとなくは「インターネット全体」という外部があることは知っていても、それが「うちら」に積極的に介入してくることは考えない。もしそれが容喙してきた場合、彼らの理屈に従えば「うちらなにも悪いことしてないのになに勝手に干渉してくんの」ということになる。ましてネットの場合、リアルとは違い「外部」は完全に可視範囲の外にある。おそらく彼らにしてみれば不意打ちの感覚が強いだろう。

(24時間残念営業「「うちら」の世界」より 2013/08/06)

一方、学歴など階層ではなく、「投稿する→拡散される→閲覧者から企業にクレームが行く→企業が謝罪する→メディアが報道する→模倣する人が現れる」というサイクルに着目する意見もある

炎上による社会的制裁は過剰か?

しかし、より大きな問題はどのようにして止めるかだ。ネットリテラシーを早いうちから教育すること、そして問題のある行為をインターネット上に晒せば、相応の社会的制裁を受ける、ということが周知されること、という「当たり前」の結論にならざるを得ない。

ソーシャルメディアに詳しい、アジャイルメディア・ネットワーク代表取締役の徳力基彦さんはこう書いている。

今回、飲食店スタッフのバカな行為が、ネットを通じて発信されると、その店が閉店に追い込まれたりスタッフが職を失ったりすることがあるという事実が明確になったわけで、バカな行為を行うこと自体がある意味飲酒運転と同じ、周りを巻き込む危険行為と認定されたことになります。

そういう意味では、シンプルにこういう行為への罰則が厳しくなり、社会的な視線が厳しくなり、それがバカな行為をしている人たちに社会常識として局有されるしか、根本的な問題解決にはならないんだろうなぁと思ったりします。

(tokuriki.com「[徳力]コンビニや飲食店の冷蔵庫バカ写真炎上騒動が連鎖し続ける背景にある8つの要因」より 2013/08/09)

しかし一方で、過剰とも言える社会的制裁に疑問の声もある。

10月には、大学教員が応援しているプロ野球チームと対戦している相手チームについて「地獄に落ちろ」などとツイートし、炎上。大学側が謝罪するという事態も起こった。アルバイト学生でなくとも、社会的地位の高い人物がこうした発言をした場合でも大きな騒ぎとなることは変わらない。

こうした状況について、クマムシ研究者の堀川大樹さんは警鐘を鳴らす。

寛容さを放棄し、すべてに対して監視の目を向け制裁を加えるやり方では、この国の社会はますます息苦しいものとなる。今回の件のように、すぐに叩いたりクレームをつける人々は、自らの行いが社会をますます生きづらいものにしている自覚があるのだろうか。結局、クレームをつけることは、廻り廻って自分のところに返ってくる。自分で自分の首をしめているのだ。

(「クレーマーとまとめサイトにより社会が毀損される | 堀川大樹」より 2013/10/19)

だが、非難する側の根拠も、法や道徳で否定しがたく、この構造自体を変えていく難しさも、同時に存在している。

インターネットとソーシャルメディアによって、自由な情報発信ができるようになった一方、万人が万人を監視しできるようになった今、どのように付き合っていくべきでしょうか。社会として、どう取り組むべきでしょうか。みなさんの声をお聞かせください。

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています